11月上旬、東京ミッドタウンにて「パナソニック デザイン展」が開催されました。2018年に創業100周年を迎えるパナソニックが、商品デザインを通じて、そのデザインの歴史や現在、未来に向けた提案などを紹介するものです。「GOOD DESIGN AWARD 2017」展にて展示中の作品とともに、パナソニックのデザインを過去・現在・未来から俯瞰できる場となりました。

パナソニック デザイン展

「手触り感のあるデザイン」を知ってもらうために

展示に先駆けて開催されたセミナーでは、デザイン戦略室 中野二三康室長、アライアンス社デザインセンター 臼井重雄所長、エコソリューションズ社デザインセンター 藤本一彦 所長、コネクティッドソリューションズ社デザインセンター 時岡英互部長が登壇。展示の目的や内容、各デザインセンターの活動などを説明しました。

デザイン戦略室
中野二三康室長

開催の目的を「パナソニックデザインの魅力を改めて知ってもらうこと」と説明する中野氏。そのきっかけは、アプライアンス社デザインセンターと京都の伝統工芸後継者によるクリエイティブユニット、「GO ON」によるKyoto KADEN Lab.の展示が、2017年のミラノサローネで「Best Storytelling賞」を受賞したことだったそう。

パナソニックは家電メーカーとして、体験価値やストーリー、もの・こと・人との関わりを重視したデザインを長年行ってきました。現代の「Hands-on Innovation」時代にいたるまで培ってきた「ユーザーとつくる生活者目線や現場感」の強みに、新たにUI(ユーザーインタフェース)やUX(ユーザー体験)を含めた「手触り感のあるデザイン」として暮らしや社会にどう活かすべきなのか。

その問いに向き合う各デザインセンターの活動を、「Electronics Meets Crafts-人の記憶や五感に響く未来の家電」、「Weaving The Light-光を編む」、「Next Humanity-2030年の人間らしいくらし」にまとめ、基礎となった「パナソニックデザインの名品たち」とともに展示しました。

臼井氏は「プロトタイプデザインの活動は過去からありましたが、社外には公開されていませんでした。新しい時代に向けデザインのプロセスも発信していくべきと3つのセンターが共同しました。アーティスティックなUXやUIを含めた作品の展示を通じ、デザインが元気なメーカーであることがアピールできれば」と語りました。

新しい時代のデザイン、可能性を考える展示

現地ではコンテナに作品を展示。シンプルだがテクノロジーと工芸の美しさ、そして未来への可能性が詰まった空間

- Electronics Meets Crafts - 記憶や五感に響く未来の家電

家電などを扱うアプライアンス社デザインセンターと、京都の伝統工芸後継者によるクリエイティブユニット「GO ON」のコラボレーションによるプロトタイプ展示。パナソニックの技術と伝統工芸が融合し、家電に新たな価値と豊かさを生むデザインを提案しました。

「銀釉」(朝日焼)

お茶を飲む行動を五感で感じさせる道具一式。大きな器には内底に銀を塗ることで、渦電流でお湯を沸かせます。朝日焼の「銀彩」の美しさ、IHの技術が融合。ろくろ技や刷毛目や釉薬など絵付けの面白さ、お湯を救う動作はもとより、湯気や器の表情など五感で楽しめます。

「響筒」(開化堂)

茶筒を模したbluetoothスピーカー。開けるとスイッチが入り、閉めるとゆっくり閉まって音が消えます。音を手の振動でも感じることができるほか、真鍮の経年変化によって価値が高まります。創業140年の老舗茶筒店のクラフトとエレクトロニクスが融合し、豊かな暮らしと次世代に渡せる家電を生みました。

「網香炉」(金網つじ)

伝統的な香を焚く楽しみを、個人の好みで気軽に楽しめるようにした香炉。両手で持つと光が付いているとお香が燃え、薫る仕組みです。通常は利用しないという、強度が高くて溶接てできないというチタンにチャレンジしている。

「銀砂の酒器」(中川木工芸)

ステンレスベアリングで冷たさを保つクーラー。冷えた砂や雪にワインボトルを指す心地よさを想定し、お酒の場に豊かさを与えたいと考えたそうです。20枚のピースを削って組み合わせた木桶の内側に冷却装置をつけ、ステンレスと組み合わせることで五感に響く家電になっています。

写真左下の「竹コロ」、写真上の「月灯」(公長齋小菅)、写真右下の触れると音が出る「織ノ響」(細尾:西陣織)など、全7種類の家電が展示されていました