テレビ朝日系で好評放映中の特撮テレビドラマ『宇宙戦隊キュウレンジャー』のスピンオフとして製作されたVシネマ『宇宙戦隊キュウレンジャー Episode of スティンガー』が10月25日に東映ビデオより発売となった。28日にはアニメイト池袋本店にてDVD&Blu-rayの発売イベントが催され、主演のサソリオレンジ/スティンガー役・岸洋佑のトークショー&ミニライブ、そして握手会、サイン会が行われた。

左から大塚明夫、岸洋佑

『宇宙戦隊キュウレンジャー Episode of スティンガー』は、キュウレンジャーのメンバーでサソリ座系出身のサソリオレンジ/スティンガーにスポットを当てた作品となっている。space13「スティンガー、兄への挑戦」で、宇宙幕府ジャークマターに魂を売り渡した実兄・スコルピオを倒すため、オウシブラック/チャンプと共に旅立ったスティンガー。本作ではテレビシリーズでは描かれなかった、スティンガーとチャンプの知られざるエピソードが語られている。

MCの呼び込みで岸がステージに現れたとたん、会場につめかけた多くの女性ファンや、スティンガーの衣裳を身に着けたちびっ子ファンからの歓声が轟いた。続いて、シークレットゲストとして、オウシブラック/チャンプの声を演じている声優の大塚明夫が、テレビ本編でチャンプが肩にかけているジャケットを着用した状態で登場。渋みのある声で「待たせたな、相棒!」というチャンプの決めゼリフを発し、こちらもファンの大歓声によって迎え入れられた。

レッド以外のメンバーを主役に据えたスピンオフドラマが放送中に発売されるというのは、「スーパー戦隊」シリーズ初の出来事だという。岸は本作の撮影を振り返って、「テレビシリーズのエピソードと違い、お芝居をする部分が多くてやりがいがあった」と語り、大塚が「その分、アフレコも大変だったね」と付け加え、岸の笑顔を誘った。

テレビシリーズや劇場版と同時進行だったという、過酷なスケジュールについて岸は「テレビではちょうど、伝説の男(ホウオウソルジャー/鳳ツルギ)が来たところでしたね。なんか、裸の男がいるぞって(笑)。一方で、Vシネマは兄スコルピオとの戦いに赴く前のことを語っているので、時系列がわからなくなって、今どっちを撮っているのか混乱したことがあった」と、複数のエピソードを同時進行で撮影する難しさを語った。ちなみに、Vシネマの中ではチャンプが「暴走」をはじめる、という描写があるが、こちらも現在放送中のテレビシリーズと巧みに連動していて、Vシネマとテレビを両方観ることによって、より面白さが増すように作られている。

Vシネマの中で、好きなシーンは?と聞かれた岸は、「冒頭のところで、僕とチャンプが食事をしているシーン。あそこのお芝居はかなりアドリブが入っていて、チャンプのスーツアクターをされている(岡元)次郎さんとのやりとりが楽しかった。そこに声を入れてくれる明夫さんのお芝居もすばらしかった」と、チャンプとスティンガーとの微妙な距離感を表現した食事シーンを挙げた。

過酷な戦いを経て、お互いを理解し合って相棒同士となったスティンガーとチャンプ。お互いのキャラクターの魅力は?という質問に対し、大塚は「スティンガーの魅力はやっぱりツンデレでしょう! ツンデレキャラの彼が、おかしな扮装をしたり、みんなにイジられるというのが、ファンの方々の琴線に触れるんじゃないかな」と、内面の優しさをうまく人前で表すことのできない"ツンデレ"こそがスティンガー最大の持ち味だと指摘。

一方、岸は「チャンプって見てくれはコワいんですけれど、明夫さんの声と次郎さんの動きによって、包容力が半端じゃないというか、そばに居るだけで安心感があるんです。スティンガーはそれに甘えて、チャンプと2人でいるときだけイジワルな感じになるんでしょうね。ツンツンしててね。でも、小太郎の前だとデレデレですから(笑)」と、いついかなるときでもドッシリ構える相棒の包容力にスティンガーが甘え、頼っていると分析していた。

キュウレンジャーは、さまざまな特殊能力を発揮するキュータマを用いて悪のジャークマターと戦っているが、もしもキュータマが実在したら、使ってみたいものはどれ?という質問が飛び出した。大塚は「時間をつかさどるトケイキュータマが欲しいですね。ちょっと時間をさかのぼって有馬記念の当たり馬券を……」とイタズラっぽい笑顔で答えた。岸は「フタゴキュータマはどうしても欲しい。2人に分裂して、片方が仕事をしている間、もう片方はひたすら寝ていたい」と、多忙な毎日を過ごすキュウレンジャーならではの切実な願望を明かしていた。

今回はスティンガー、およびチャンプにスポットを当てたVシネマが製作されたのだが、今後もしもキュウレンジャーのキャラクターを主役にした作品を作るとしたら?という問いに岸は「実はもうタイトルを決めています。『レシピofスパーダ』ってのはどうですか(笑)」と、料理が得意なカジキイエロー/スパーダ(演:榊原徹士)を主演にしたクッキング中心の作品を構想。大塚は「『Episode of ドン・アルマゲ』なんてVシネマがあったら、敵の正体が詳しくわかるので、キュウレンジャーの今後の戦いに役立つんじゃないの」と語った。

役者と同時にシンガーソングライターでもある岸は、Vシネマの劇中でエンディングテーマ「見えない絆」、挿入歌「サソリ座の歌」「一輪の影」と3つの楽曲を歌っており、これが本作の大いなるセールスポイントのひとつとなっている。今回のイベントでは、岸による「一輪の影」ライブ歌唱が行なわれ、客席のファンを魅了した。

イベント終了後に行われたマスコミ会見で岸は「キュウレンジャーのイベントで、チャンプが登場することってあまりなくて、今回はファンのみなさんがとても喜んでくれた。僕自身も明夫さんと一緒にイベントができて、本当にうれしかった」と、大塚とのトークに確かな手ごたえを感じていた模様。大塚も「そう言ってもらえて、こちらもうれしいですよ。ただ、小さな子どもは『このオジサン誰だろう』って、不思議に思ったんじゃないかな。でも、チャンプの声を出すと『あっ!』と気づいてくれる、そういうところも楽しいですね」と、あまりファンと生で接する機会がないだけに、今回のイベント出演を楽しんでいると話した。

「一輪の影」をファンの前で歌った感想を求められた岸は「もともと17歳のころから歌ってきた曲でしたが、お客さんの前でこれを歌うのは初めて。お聴きくださったファンの方たちが僕の歌からどんなことを感じてくれたのか、ぜひ教えてほしいと思っています」と、大切な楽曲をファンの前で披露できた喜びを語った。大塚は「歌い終わったとき、お客さんがみんなお風呂から出てきたみたいな顔をしていました(笑)。ああいう光景はあまり見たことがないですね」と、岸の甘く切ない歌声に心を奪われた女性ファンたちのリアクションに着目していた。

改めて今回のVシネマについての感想を求められた大塚は「大変面白がりながらアフレコをさせていただきました。お集まりのみなさんにはぜひこのVシネマの伝道師となってもらって、作品の良さを広めていただきたいです」と、本Vシネマが多くの人々の目に触れてくれるよう、ファンの一人一人に熱烈なるPR活動を呼びかけた。

岸は「やっとみなさんに作品を届けることができてうれしく思います。俳優としても歌手としても、まだまだこれからだと思っていますので、まずはキュウレンジャーのテレビシリーズを無事完走できるよう頑張っていきたいです」と、Vシネマの主演という大役をこなした後、いよいよクライマックスに向かおうとしているテレビシリーズに全力をそそぐ決意を表明した。