橋本病の発病の仕組みや症状を医師に聞いた

タレントの研ナオコさんに歌手の岩崎宏美さん、元プロ野球選手の今浪隆博さん……。一見すると関連性が全くなさそうにみえる3人だが、実はある共通点がある。それは「橋本病」の罹患を公表していることだ。

橋本病の正式名称は慢性甲状腺炎で、約100年前に日本の橋本策(はかる)医師が初めて症例を報告したことからその名がついたとされている。その名称からはどんな病気なのか全く想像がつかないが、一体どういった症状を呈してどのような治療をするのだろうか。内科・糖尿病内分泌内科の山本祐歌医師にうかがってみた。

――橋本病とはどのような病気なのでしょうか。

橋本病は「自己免疫疾患」といわれる病気の一種です。通常、私たちの体内に外界からさまざまな細菌やウイルスが入ってくると、血液中の白血球やリンパ球などがこれらの異物をやっつけようとします。この自分自身を守るための防御機構を「免疫」といいます。

橋本病はこの免疫に何らかの異常が起こり、自分自身の細胞を「異物」と認識して攻撃する自己抗体が原因です。その結果甲状腺の細胞が壊れ、甲状腺の機能が低下してしまいます。もう少し詳しく説明しますと、TPO抗体や抗サイログロブリン抗体と呼ばれる抗体によって甲状腺機能に異常がみられるようになり、これらの抗体は血液検査で陽性か否かがわかります。

――ふだん私たちの体を守ってくれている免疫システムのトラブルが橋本病を引き起こしているというわけですね。甲状腺機能が低下すると具体的にどのような症状が現れるのでしょうか。

甲状腺は代謝を調節するホルモンを分泌する臓器です。ちょうど、首の喉仏の下あたりに位置します。橋本病になると、外見上、甲状腺がやや大きくなることがあり、健康診断で甲状腺腫大(しゅだい)を指摘されて発見されるケースがあります。

甲状腺機能が正常の場合もありますが、大半の橋本病では甲状腺機能低下症をきたします。すなわち、甲状腺ホルモンの分泌が低下し、代謝が悪くなります。具体的には「倦怠感」「むくみ」「便秘」「脈がゆっくりになる」「脱毛」「低体温」「声がかすれる」「眠気」「やる気がでない」「体重増加」「寒がり」「月経異常」「不妊」など、さまざまな症状が起こります。

――どういった人が橋本病になりやすいのかを教えてください。

男性よりも女性の方の患者さんが多いです。遺伝はある程度関係があるといわれていますが、遺伝以外の原因に関してもあまりわかっていません。

――罹患してしまった場合、どのような治療をするのか教えてください。

基本的には不足している甲状腺ホルモンを補うということになります。甲状腺ホルモン薬を内服して、甲状腺機能が正常に保たれるように薬の量を調整します。比較的、副作用が少なく、安価な薬です。一般的に完治は難しいですが、治療をやめてしまうと甲状腺機能が低下してしまいますので、必ず服用を継続することが大切です。

※写真と本文は関係ありません

取材協力: 山本祐歌(ヤマモト・ユカ)

日本糖尿病学会専門医、日本抗加齢医学会専門医。En女医会所属。

En女医会とは
150人以上の女性医師(医科・歯科)が参加している会。さまざまな形でボランティア活動を行うことによって、女性の意識の向上と社会貢献の実現を目指している。会員が持つ医療知識や経験を活かして商品開発を行い、利益の一部を社会貢献に使用。また、健康や美容についてより良い情報を発信し、医療分野での啓発活動を積極的に行う。En女医会HPはこちら。