メインカメラの紹介がずいぶんアッサリだなと思われたかもしれない。実は今回、クローズアップしたいのはサブカメラのほうなのだ。いや、最早、サブカメラと呼ぶには相応しくないことになっている。FaceTime HDカメラではなく、新搭載された「TrueDepthカメラ」を見ていこう。

TrueDepthカメラシステムが埋まっているセンサーハウジング部

TrueDepthカメラシステムはディスプレイ上部の小さなスペースに収められている。ここには通常のカメラのほかに赤外線カメラ、環境光センサーに近接センサー、ドットプロジェクタと投光イルミネーター、スピーカー、マイクが組みこまれ「センサーハウジング」というモジュール群を形成している。

熊乃さんと水上さんにセルフィーを試してもらった(注:このカットはiPhoneで撮ったものではありません)

どの機能から紹介しようか迷うが、セルフィーで使えるようになったポートレートモードからいこう。デュアルカメラだから実現できたポートレートモードが、フロントカメラで利用できるのだ。もちろん新機能であるポートレートライティングも使える。もうこれだけで「買い」だと思った人もいるのではないだろうか。特に女性で。iPhoneは特に何にもしなくても「インスタ映え」する写真が撮れるが、それがセルフィーでもということになるのだ。ナチュラル志向、あくまで自然に写すのをベースにしながらも「盛れる」写真が撮れる。

Face IDの設定を行っているところ

二番目は新たなセキュア認証機能「Face ID」だ。3Dの顔認識機能であるFace IDは、TrueDepth カメラから、3万以上の目に見えないドットを顔の上に投射して解析し、顔の深度マップを作成して、顔の正確なデータを読み取り、顔の赤外線イメージもあわせて取り込む。新搭載の「A11 Bionic」チップのニューラルエンジンは、取得した深度マップと赤外線イメージを数学的モデルに変換し、それが登録済みの顔のデータと照合されることで、ロックが解除される仕組みになっている。その際、誤認識する可能性は100万分の1だという。iPhone 8シリーズで採用されているTouch IDでの誤認識は5万分の1とのことだから、これは「激減」と言って過言ではない。

Face IDのテスト その1

メークを変えた、髭を生やしたといった外見の変化もFace IDでは認識する。他社製スマートフォンの似たような機能では、メガネかけるとダメ、被ったお面を誤認識するなどという話を聞くが、Face IDではそういったこととは無縁だ。例え立体的に象ったマスクを装着したとしても、生体反応(瞬き)がないと動作しない。iPhone Xの発表直後、寝ているところに翳されたらロックが解除されてしまうのではないかという懸念の声が広がったが、Face IDにはそういった注意知覚機能がちゃんと用意されているのだ。目が開いていて、意識してデバイスを見ているかを認識するので、知らないうちに誰かがロックを無断で解除することはできないのである。

Face IDの利用に際してはパスコードを設定しなければならず、以下の状況下では、セキュリティ強化のため、パスコード入力による本人確認が必須となる。

  • デバイスの電源を入れた直後や再起動した場合
  • デバイスが48時間以上ロック解除されていない場合
  • デバイスのロック解除に過去6日半パスコードが使われておらず、過去4時間にFace ID でデバイスのロックを解除していない場合
  • デバイスでリモートのロックコマンドを受信した場合
  • 顔認証を5回失敗した後
  • 音量ボタンのどちらかとサイドボタンを同時に2秒間長押しして電源オフ/緊急SOSを作動させた後

なお、暗所での使用も可能である。これは、先述の赤外線カメラを搭載しているからだ。また、Face IDの登録は一人しかできないようになっている。

Face IDのテスト その2

使ってみれば、反応はとても早いと感じるはずだ。筆者は9月に開催されたスペシャルイベントで実施されたハンズオンで、データを登録済みのスタッフの顔を借りて機能を試したのだが、反応が早過ぎて、最初何が起こっているのか理解できなかった。単にパスコードを入れてないデバイスのスリープが解除されているようにしか見えなかったのである。ムービーをご覧頂ければ分ると思うが、まず、スリープから起きてロック状態にあるのが、次の瞬間、カギが外れてロックが解除されている。本当に「次の瞬間」という感じなので見逃さないで頂きたい。

アニ文字のテスト

最後に「アニ文字」だ。アニ文字は「アニメーション」と「絵文字」を組み合わせたかばん語で、TrueDepthカメラに向かって頭を動かしたり、話したりすると、それらをキャプチャーし、プリセットされたキャラクターが同じ動作でアニメーションするというものだ。これはiMessageで使える機能である。この機能はFace IDと異なり、登録された人以外の動きでもキャプチャーできる。大げさに頭を振ったり、口を開けてみる方が効果がよくわかるが、普通に話しても口の動きを的確に捉えてくれる。話した音、つまりオーディオデータを追加して利用するという形なので、何語で話しかけても関係なく機能する。Siriのような音声解析を行っているのではないからだ。50以上の異なる筋肉の動きを捉え、解析してくれ、ユニコーンやロボット、ウサギなど12種類のキャラクターに反映できる。面白いのは、やはりロボットを選ぶと、表情はやや乏しくなる(機械的になる)というところだ。人間にはない特徴を持つキャラクターを選ぶと、「それらしい」動きをしてくれるところが楽しい。アニ文字は表示についてはiPhone XでなくてもOKだ。だが、作成はiPhone Xでないとできない。

間もなくARに対応する簡易映像編集アプリ「Clips」

オマケでApple純正の簡易映像編集アプリ「Clips」についても紹介しておこう。次のバージョンでClipsはARに対応する。TrueDepthカメラから、360度アニメーション化された風景や抽象画の中に飛び込めるようになるのだ。筆者は映画『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』をテーマにしたコンテンツのデモを見せてもらったのだが、ミレニアム・ファルコンに乗り込み、R2-D2が投影するホログラムの中に入るといったシーンを楽しめた。