自律型エンタテインメントロボット「aibo」

ソニーは11月1日、犬を模した自律型エンタテインメントロボット「aibo」を2018年1月11日より発売すると発表した。販売はオンラインのソニーストア限定で、先行予約を11月1日午後11時1分より開始する。本体価格は19万8000円(税別)だが、別途月額2980円のクラウドサービスに接続する「aibo ベーシックプラン3年」などが必要となる。

2016年春にソニー代表執行役 社長 兼 CEOの平井一夫氏が開発を指示、2017年度内の発売を目標に開発を続けてきた。「感動をもたらし、好奇心を刺激し続ける会社が存在意義」と発信し続けてきた平井氏にとって、ロボティクス事業は強いソニー復活の一つの鍵でもあったはずだ。

先代のAIBOは1999年に登場し、「エンターテインメントを書くにしたロボット文化が生まれた瞬間」(平井氏)を作り出したが、2006年に撤退。「大変厳しい判断を行い、家族の一員としてかわいがってきたオーナーにとって心痛むことだったと受け止めている」と平井氏は過去の決断を振り返る。

新しいaiboは、イメージング事業とモバイル事業、本社R&D部門が中核となった混成部隊で製作。過去のAIBOに携わった技術者は「4名程度」(ソニー AIロボティクスビジネスグループ長 川西 泉氏)に過ぎず、「過去の継承」よりも新たなaiboという側面の方が強いようだ。

クラウド連携が新aiboの中核に

ソニー代表執行役 社長 兼 CEO 平井 一夫氏(右)とソニー AIロボティクスビジネスグループ長 川西 泉氏(左)

過去のAIBOと新しいaiboでは、消費者を取り巻く環境が大きく変わった。人々は常にスマートフォンを手に取ってクラウドサービスに接し、AIスピーカーが流行の兆しを見せ、スマートホームの環境が整いつつある。そうした環境から、aiboについても「一定のお役立ちを意識しつつ、エンタテインメントロボットとして、癒やしや楽しめるといったバランスを考えた」(川西氏)という。

そこで鍵となるのが、クラウド接続だ。バックエンドにはIoTデバイスとの親和性が高く、外部連携の拡張性も見込めるAWSを採用。飼い主と接して育った人格ならぬ"犬格"がクラウドに常時バックアップされ、スマートフォンアプリ上で外出先でも自分のaiboと触れ合うことができるようになる。20名程度まで顔を認識し、可愛がってくれる人の順位付けなども行うことから、「世界に私だけのaibo」となる。

AI技術も、ソニー内製のディープラーニングライブラリや外部ソリューションも活用しつつ、aiboの性格が自律的に成長するプログラムに仕上げたことで、「ソニーとしてもどう成長するかはわからない部分がある」(川西氏)。各家庭で成長したaiboのデータをクラウドで集約することで、集合知としてさらに賢く進化させる構想もあるという。

スマートフォンアプリ「My aibo」

AWSをバックエンドに利用し、クラウドを活用してスケールやデバイス連携といった拡張性も意識した

また、鼻先に取り付けられた魚眼カメラを活用した「aiboフォト」や、ユーザーがプログラミングしたモーションなどをダウンロード、一部コンテンツは購入できる「aibo ストア」も立ち上げる。従来の延長線上ではなく、クラウド接続を前提にした新しいaiboの形は、今のソニーの勢いを表す姿勢にも見える。

My aiboではaiboが撮影した写真も閲覧できる

モーションを自作可能に

また、面白いポイントではコアプロセッサーにスマートフォン向けのSnapdragon 820を採用していることもあり、aiboがLTE接続できる。オンラインストアで購入後、到着して直ぐに利用できるように製品設計したもので、「箱を開けたらすぐに我が家のペットとして利用できる」(川西氏)。

各家庭で自律的に成長するaiboをクラウドで集約し、さらに進化させる試みも

スマートフォンにも利用されているSnapdragonを採用した

Wi-Fi接続が理想としたものの、ソフトウェアアップデートやモーションのダウンロードなどをユーザーが意識せずに利用できるようにしたことで、ITに明るくない高齢者層などでも安心して購入できるよう意識した。