10月27日、パシフィコ横浜国立大ホールにて、「SPACE MEETS YOKOHAMA きぼう、その先へ」というイベントが行われた。来場者は約4000人で、会場の様子はインターネットにも配信された。周りを見渡すと、多くの小学生が参加をしていた。2017年12月、JAXA金井宣茂 宇宙飛行士が、国際宇宙ステーション(ISS)での長期滞在を開始する。同イベントは、同氏の壮行会を兼ねたものとなった。

イベントの様子。ステージには、金井宣茂 宇宙飛行士や油井亀美也 宇宙飛行士、大西卓哉 宇宙飛行士などが並んだ

「きぼう」は、ISSの一部で、日本が開発を担当したもの。宇宙飛行士が長期間活動できる、日本では初めての有人施設だ。最大4名まで搭乗でき、船内実験室、船外実験プラットフォーム、船内保管室、船外パレット、ロボットアーム、衛星間通信システムの6つの要素からできている。金井 宇宙飛行士はここで、タンパク質結晶生成を始めとしたさまざまなミッションを行うこととなる。

国際宇宙ステーション(ISS) (模型)

「きぼう」日本実験棟 (模型)

宇宙飛行士になるとは思っていなかった

「将来の夢は、医者だった」と金井 宇宙飛行士は語る。同氏の両親が病院で働いていたことから、医療の道を志すようになった。防衛医科大学校を卒業したのちに、海上自衛隊へ入隊し、医師として働くようになる。金井 宇宙飛行士に宇宙の夢を見させたのは、潜水医学だった。「勉強をする中で、海の底に潜っていくのと、空の向こうの宇宙に上がっていく宇宙飛行士の仕事はよく似ていることが分かった。そこから、宇宙の医学に興味を持ち、宇宙飛行士になりたいと思うようになった」(同氏)。

JAXAの金井宣茂 宇宙飛行士、油井亀美也 宇宙飛行士、大西卓哉 宇宙飛行士

2030年宇宙の旅~民間企業との連携も~

JAXAは、2020年代~2030年代に日本人宇宙飛行士による月面探査を目指しており、現在は月に人が住むためのさまざまな技術開発を行っている。しかし、予算の問題もあり、現在は民間企業の協力を得ながら、基地を立てる、人が住む、調査をする、食物を作る、などといった技術の開発を行っているという。

基地を立てるためには、建設機械が必要であるため、現在、JAXAでは、ロケットで送れるような軽いパワーショベルを作っているとのこと。素材はCFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastics)。航空機体にも用いられている、繊維強化プラスチックだ。同材を用いたパワーショベルは、これまでと同じエンジンパワーでも、より多くのものを持てるようになるという。

また、月に存在する水を取り出す技術も開発している。使用するのは、フリーズドライ技術。これはカップ麺などに利用する、水分を含んだ食品を急速に凍結し、減圧して真空状態で乾燥させる技術だ。マイクロ波で月に存在する水を蒸発させ、それを取り出すというもので、現在、地上で民間企業と技術を開発を行っているという。民間企業の宇宙産業への取り組みといえば、「au×HAKUTO MOON CHALLENGE」やインターステラテクノロジズの「MOMO」の打ち上げなどが挙げられるように、最近はその注目度を挙げており、宇宙ビジネスの今後のさらなる拡大が見込まれる。

チームHAKUTOのローバー「SORATO」。2017年12月28日、世界初の月面探査レースに挑戦する

「新世代の宇宙飛行士へ」

金井 宇宙飛行士は来場者とインターネットの視聴者に「みなさん1人ひとりの応援が、ロケットブースターのように、私の背中を後押しして、ISSに連れて行ってくれるように感じます」と、応援に感謝している胸中を語った。また最後は、「私たち(油井宇宙飛行士、大西宇宙飛行士、金井宇宙飛行士の3名)は、新世代宇宙飛行士と呼ばれているが、もう新世代と呼ばれるほど若くありません。そう考えると、本当の意味での新世代宇宙飛行士は、これを見ている子供たち。みなさんより1歩先に、宇宙に行かせてもらいますが、次は、みなさんの番だと思います。ぜひ一緒に宇宙を目指しましょう。ありがとうございました」とイベントを締めた。

金井宇宙飛行士には、寄せ書きの入った旗が渡された