米テラデータが、米アナハイムで開催した「Teradata PARTNERS Conference 2017」(以下、PARTNERS)において、同社のオリバー・ラッゼスバーガーエクゼクティブ・バイスプレジデント兼チーフ・プロダクト・オフィサーが、日本人メディアの取材に応じ、「Teradata Everywhereは、我々の戦略そのものになる」と発言。同社の今後の方向性を示す中核的なメッセージに位置づけた。

昨年のPARTNERSでは、Think Big Analyticsによる「ビジネスアナリティクス」、Teradata UDAやアーキテクチャコンサルティングによる「エコシステムアーキテクチャー」、そして、Teradata Everywhereによる「ハイブリッドクラウド」を打ち出し、Teradata Everywhereは、柱のひとつでしかなかったものを、同社の中核メッセージへと高めた。その狙いなどを聞いた。

米テラデータのオリバー・ラッゼスバーガーエクゼクティブ・バイスプレジデント兼チーフ・プロダクト・オフィサー

昨年のPARTNERSでは、「Teradata Everywhere」というコンセプトは、あくまでも3つの柱のひとつに過ぎなかったのですが、今年のPARTNERSでは、テラデータのすべての製品や方向性を包括するような上位概念へと位置づけられたように感じます。その理解で正しいのでしょうか?

ラッゼスバーガー:その理解であっています。今年のPARTNERSでは、Teradata Everywhereのメッセージをさらに昇華させ、上位概念としました。このメッセージのなかに、我々がやっていきたいと、考えていることのすべてが示されています。たとえば、エコシステムアーキテクチャーの進め方も、Teradata Everywhereのなかにあり、Teradata Analytics PlatformもTeradata Everywhereの構成要素とひとつと位置づけられ、また、Teradata IntelliSphereなども、Teradata Everywhereの必要要素となっています。そして、Think Big Analyticsによるアナリティクスは、Teradata Everywhereを実現する重要な要素になります。

Teradata Everywhereは、今年初めて発信したコンセプトではありませんが、今年は、顧客の要求や市場環境の変化などを捉えて、メッセージ性を高め、その考え方を一歩進めたというわけです。

「Teradata Everywhere」は、我々の戦略そのものです。これからこの戦略は拡大し、進化をしていくことになります。

これは、テラデータにとって、フェーズチェンジにつながるのでしょうか?

ラッゼスバーガー:この1年間に渡って、顧客から多くの声を聞いた結果、Teradata Everywhereというメッセージが理解してもらえると考えました。Teradata Everywhereが顧客の決断におけるリスクを軽減することに大きく役立っていると感じますし、同時に、それに対する理解も深まったといえます。

テラデータでは、エコシステムアーキテクチャーによって、どのパブリッククラウドを活用するのか、あるいはオンプレミスでいくのか、ハイブリッドクラウドを選択するのか、といったことを気にせずに活用できる展開オプションを用意しており、どれでも選んでもらえます。テラデータのアプラインスを選んでも、Azureで動かしてもいいわけです。さらに、ひとつだけのライセンス契約で、展開モデルを変えても、そのまま利用することができます。こうしたテラデータが目指す姿が、Teradata Everywhereという言葉に集約されたわけです。

ステアリングコミッティでも、「Teradata Everywhereという言葉にもっとフォーカスした方がいい」という声が出ていました。Teradata Everywhereという言葉が一度理解されれば、多くの顧客がそのメリットについて感じることができ、進化へとつなげることができます。そして、テラデータも、Teradata Everywhereの下で、様々な製品を投入し、さらに充実させ、完成したものにできるわけです。より包括的なストラテジーに進化させていくことができます。

いま、顧客がテラデータに求めているものはなんでしょうか?

ラッゼスバーガー:明確なのは、テラデータに求められているのは、「アナリティクスプラットフォーム」であるという点です。しかし、多くのユーザーは、多数のシステムを持ち、複雑な環境になっており、同時にアナリティクスを行うためには、データをそれぞれのシステムにコピーして活用する必要がありました。データウェアハウスに蓄積されているデータと、アナリティクスを行うシステムには、一貫性のある基盤が構築できず、あるシステムでは最新のデータでアナリティクスを行ったにも関わらず、別のシステムでは、2週間前のデータをもとにアナリティクスを行うといった状況も生まれています。今回のTeradata Analytics Platformは、こうした課題を解決するものになります。

データをいちいちコピーせずに、Python、Spark、Rといった様々な言語を使って、ひとつのコードで、ひとつのプラットフォームで処理ができるようになります。まずは、TeradataとAsterを統合し、今後は、Spark、TensorFlowにも統合することになります。これにより、ユーザー企業は、それぞれのシステムにあわせた利用ではなく、統合した環境で、データやアナリティクスを利用できるようになるわけです。

また、Teradata IntelliSphereも、いまは10種類のソフトウェア製品が対象になっていますが、これも、今後は広がっていくことになるでしょう。

我々が過去18カ月で学んだのは、数を絞って、大きな課題にしっかりとフォーカスし、それを解決していくということでした。「広く浅く」ではなく、「狭く深く」です。Teradata Everywhereのもと、クラウドへの大規模投資を進めていますし、Teradata Analytics Platformを活用したアドバンスドアナリティクスにも力を入れています。そして、AIにも大きな投資をしています。これは、深層学習がTeradata Everywhereを実現する上で、重要なピースになると考えているからです。

テラデータが、Teradata Everywhereの企業へと進化したことによって、競合企業も変わってくるのでしょうか?

ラッゼスバーガー:これまでにもオラクルやIBMという競合は存在していました。Teradata Everywhereは、拡張性に優れ、ユニークなケーパビリティを持っています。これはどのベンダーにも提供できないものだといえます。AWSやオラクルなどのパブリッククラウド環境では、それぞれら異なるコードを使っていますから、移行するためにはコードを書き換えなくてはなりません。ですから、そのたびに開発が発生します。これは顧客にとっては大きなデメリットです。それに対して、テラデータの場合は、Teradata Everywhereの考え方によって、何1000や、何万ものユーザーやアプリケーションを統合システムでサポートできるものになるわけです。しかも、ペタバイト規模のデータを対象にしたクエリーをかけることができます。これが我々の強みです。複数のサイロ化したシステムを構築するのではなく、また、アプリケーションごとにホストを設けるのではなく、Teradata Everywhereというなかで、ひとつのプラットフォームの上で、すべてを統合し、利用できるようにします。これは他社にはできません。

ある大手の飲料水メーカーは、テラデータを活用して、70日以内に、AWS上で本番環境を展開した例があります。これもテラデータだからこその成果です。

Teradata Everywhereの世界に入ると、従来型のITベンダーが競合になるだけでなく、クラウドファースト型のAWSのような企業も競合になってくるでしょう。しかし、ここでも、テラデータが指向しているハイブリッドクラウドによる提案によって、差別化が可能です。顧客の選択肢を制約しない環境を作ることができるのはテラデータの特徴です。

Teradata Everywhereは、ユニークであり、価値の高い提案ができ、だからこそ、ガートナーやフォーレストといった調査会社からも高く評価されていると思います。競合他社には真似ができないものです。

テラデータならでは特徴を出せるのは、大規模な企業が持つ、大規模な課題を解決するといった部分です。医療、石油・天然ガス、コンシューマエレクトロニクス、自動車メーカー、金融機関などのグローバルなトップ企業の課題をしっかりと解決することが、我々の重要な役割だといえます。

その一方で、これからは、パートナーの存在がますます重要になります。

たとえば、Teradata IntelliSphereにおいては、データ変換ツールやBIツール、可視化のツールも必要になり、データ保護のための暗号化技術も必要になります。幅広いセグメントにおいて、幅広いパートナーとの協業が必要になります。クラウドカンパニー、ソフトウェアベンダー、次世代型ソフトウェア企業までを含めて、幅広い協業を進めていきます。

今回のPARTNERSでは、「THE EDGE OF NEXT」をキーワードにしました。この狙いは何でしょうか?

ラッゼスバーガー:大規模なデータを収集し、これを対象に分析をするという技術そのものがかなり進んできました。それによって、大きな革命が始まっています。ひと握りの会社がデータを活用して、素晴らしい成果をあげていますが、残りの99%の企業は、まだ「アナリティクスジャーニー」を始めていません。データを使えば何かができるということすら始めていない。技術はあり、センサーのような情報収集手段もあり、顧客もいるのにそれができていない企業に対して、最初の一歩を踏み出すことを提案したいと考えました。これまで多くの企業は、新たな技術に対して不確定要素や、未知の要素に対するリスクを懸念していたため、「アナリティクスジャーニー」に踏み出すことができていませんでした。小手先だけの取り組みに留まり、大規模投資や戦略投資ができていなかったのが実態です。我々の提案は、「まず北極星を探すこと」です。それが10年後に向けた道しるべになります。しかも、それは1回の予算サイクルで実現するものではなく、ジャーニーなのです。文化や人材も変えていかなくてはいけません。その一方で技術が成熟し、製品も揃ってきました。テラデータは、企業が導入に踏み出すときの決断をお手伝いすることができます。そして、最先端のアルゴリズムを活用することで、成功に導くことができます。「北極星」を探し、それに向けて高度なアナリティクスの機能を使っていこうというわけです。

つまり、今回のPARTNERSでは、「最先端」や「切り口」という観点で「EDGE」という言葉を使っています。また、IoTの普及により、エッジコンピュータの考え方が広がりはじめています。それに伴い、新たなクラウドサービスが生まれはじめています。クルマでも、1台1台がデータセンターとなり、しかも、かつてのデータセンター1個分ほどのコンピュータが搭載されるようになっています。このように、収集した大量のデータから、エッジでなにをやるか、ということも考える意味を込めました。

ただ、EDGEというと、最先端の尖った技術という印象があるのですが、今回のPARTNERSでは、最先端技術というよりも、導入のハードルや運用の成果を追求するための考え方や製品が中心となりました。これらの製品をみると、THE EDGE OF NEXTという言葉との間にギャップを感じますが。

ラッゼスバーガー:最先端を行くことは、企業にとっては、不安や恐怖、あるいはリスクの懸念があると思います。最先端技術を活用したものの、判断が違っていたらどうしようかと思うわけです。テラデータが目指しているのは、最先端の技術を安心して導入してもらうための不安を解消する点です。その視点から、様々な製品を発表したり、メッセージを発信したりしています。それらを包括するもらうとわかるのですが、「安心して大きな一歩を踏み出し、最先端のアナリティクス技術を導入してほしい」という意味になります。だからこそ、「THE EDGE OF NEXT」をキーワードにしたわけです。