ガソリンでありながらディーゼルを超える圧縮比に

しかし、言葉で表すのは簡単だが、実際に実現するのは難しい。ガソリンエンジンで圧縮比を高めると、予期せぬタイミングで自然着火してしまう、いわゆるノッキングが発生する。理想的な燃焼を行うには、回転数やアクセル開度、外気温度などによって圧力を大きく変える必要が出てくるという。

そこでマツダは、本来の燃焼前にプラグの周辺で小さな燃焼を行い、その力で周辺の空気を圧縮する方式を考えた。マツダではこれを「エアピストン」と呼んでいる。これにより、状況に見合った圧縮比が実現できる。そして、高圧の空気をシリンダー内に供給するために、「エアサプライ」と呼ばれるスーパーチャージャーも採用することにした。

新エンジンで理想的な燃焼を実現(画像提供:マツダ)

この結果、圧縮比は既存SKYACTIV-Gの14:1のさらに上を行く16:1になった。マツダはディーゼルエンジンのSKYACTIV-Dに関しては、後処理なしでNOx排出を抑えるべく、多くのメーカーとは逆に圧縮比を低くしている。その数字もまた14:1だ。

つまり、SKYACTIV-Xはガソリンを燃料としながら、ディーゼルよりも高い圧縮比を持つ。これは画期的なことだ。ガソリンでもディーゼルでも幅広い圧縮比のエンジンを作ってきた経験が、エアピストンによる可変圧縮比というブレークスルーに結びついたのではないだろうか。

目標に掲げた性能数値は最高出力が140kW、最大トルクは230Nmで、過給器を追加したこともあり、同じ2リッターのSKYACTIV-Gの114kW/196Nmから大幅にアップしている。それでいて燃費については、「デミオ」などに積んでいる1.5リッターSKYACTIV-Dと同等を目指しているという。