【レビュー】

iPhone 8がiPhone 5sに続くiPhone史のマイルストーンである可能性について

iPhone誕生から10年。この10年に生み出されてきたモデルの中で初代に並んで記憶されるものとして、iPhone 5sがあると筆者は思っている。4、4Sで磨かれてきたデザイン、5で拡大した画面、そしてフラットデザイン採用のiOSが搭載され、通信もLTEに対応し、スマートフォンでやりたいこととできることが合致したタイミングにある記念碑的なモデルだ。

だがAppleはそこに乗り続けることをせず、iPhone 6という新たなフェーズを切り開いた。それは大画面化という市場の流れに迎合し、Appleらしい信念を持つことをやめたかに見えた。だが、その時点でスマートフォンはもはや一部の先進的な人々のものではなくなり、Appleという企業が世界に示す存在感までも変わっていたのだ。エッジの立った「武器」ではなく、もっと幅広い人を対象とした「道具」をつくる。それはAppleにとっても新たな挑戦であったのだろう。その挑戦が、iPhone 8で一つの完成を見たのではないかと思う。

iPhone 6からのデザインにこだわりを見る

iPhone 8の基本的なフォルムは、iPhone 6から引き継がれてきたものと同じ。だが、性能を大きく引き上げつつ同じ形を保っているのは、中身がより高密度化していることを意味する。iPhone 6に比べて、機構面では耐水防塵になり、スピーカーが上下に搭載され、液晶は3Dタッチ対応になり、Touch IDは物理でなくなり、イヤホンジャックは廃止された。チップはApple A8(デュアルコア)から6コアのA11 Bionicへ、メインのカメラは8メガピクセル/HDビデオから12.0メガピクセル/4Kビデオへと進化した。ここまで変わっているのに同じ形を保っていることに、逆にAppleがこのフォルムにいかにこだわっているのかが現れている。

iPhone 8のボディ。基本的にはiPhone 6シリーズからのフォルムを継承

左がiPhone 8、右が6。画面側は差がわからないほど似ているが、背面の造りには進化が見られる

同じフォルムを保ちながらもデザインにこだわり続けていることがわかる部分が、背面にある。アンテナを収納している部分のラインだ。iPhone 6が発売された当時「Dライン」と呼ばれ、一部のファンからはAppleらしくないと評価されていた樹脂製のライン。金属のボディにアンテナを収納する都合上、どうしても仕方のなかったところのようだ。

だが、iPhone 7になるとラインが減って「C」のような形状になり、8ではついにほぼ姿を消した。わずかな痕跡はあるが、手に触れてわかるような素材のつなぎ目感がなく、意識して見ない限り気になることはない。全体のデザインとして、よりパーフェクトな「滑らかな板」に近づいたと言えるだろう。

左から、iPhone 6/7/8の「Dライン」の変化

素材も進化している

フォルムは同じでもこれまでと大きく異なっているのが素材だ。表面・背面ともガラスで覆われており、手に持った時の感触がこれまでとは全く違う。背面にガラスでは滑りそうで怖いのではないかと思ったが、実際に触れてみるとガラスなのに不思議なしっとり感があり、手に吸い付くような感触。iPhone 4Sのガラスともまた異なっている。この質感のためにケースなしで使ってみたいと思わせる仕上がりだ。

iPhone 7までのつや消し加工された金属より、手のひらから滑りにくいガラス素材。スマートフォンの中で最も丈夫なガラスが使われているという

このガラスだが、iPhone 7と比べても指紋の汚れがつきにくいようだ。これまでスリープ時に白っぽく浮いて気になっていた汚れが、iPhone 8では同じように触っていてもほとんど見えない。汚れても、布で拭けば従来よりも軽い力ですぐに落ちる。小さなことのようだが、心理的には品の良さがぐっと向上したポイントだ。人間の目には同じガラスに見えても、ガラスの質そのものが異なっているのだ。

画素数は同じでも画質が違う、表現力の向上したカメラ

7から8へ、全体的にスペックが上がっていることは確実だが、目に見えてわかる変化といえばカメラだ。イメージセンサーが新しくなり、より大きく、速くなっているという。これにより色味の表現がよりくっきりとし、暗いところでもオートフォーカスが速い。iPhoneのカメラがホワイトバランスや露出に強いのは以前からだが、これもより強化されている。

様々なシチュエーションでiPhone 7と撮り比べたものを見てみよう。

逆光でも暗い部分のテクスチャまで精緻に表現。カメラを向けるだけで明るさのバランスを取ってくれる

暗い場所の撮影でもすぐにピントが合う。また、暗い中でもテクスチャが潰れることなく、ノイズ感も少ない

特に、明暗の差が極端なシチュエーションで、明るい部分も暗い部分もテクスチャを失わずに描画されている点に注目したい。ホワイトバランスもより自然に表現され、暗い場所のノイズ感も少ないことが、イメージのクリアさを作り出している。

状況を伝えるだけの写真なら特に気にしなくても構わない部分だが、表現手段としての写真、雰囲気や空気感を見て感じるというレベルになると、こうしたディテールは最もこだわりたいポイントになる。ここまでくると、アートや表現としての写真を撮るツールといっても差し支えないだろう。

さらに2レンズ搭載のiPhone 8 Plusで使用できる「ポートレートモード」は、iOS 11でベータ版から正式版になった。様々なシチュエーションにおいて照明効果をシミュレーションし、対象物にフォーカスを絞った印象的な写真を撮影することができる。新しいファイルフォーマットが採用されたことにより、ポートレートの照明効果は後から変更することも可能だ。

iPhone 8 Plusで使用できるポートレートモード。様々な照明効果をリアルタイムでシミュレーションして撮影

背景をぼかし照明効果を加える事で、印象的な写真に仕上がる

撮影した後から「編集」でポートレートモードの効果を変更することが可能だ。画像はどんな場所でも劇的なポートレート写真になる「ステージ照明」効果

バッテリー

バッテリー性能も向上している。iPhone 8ではチップが新しくなり、動作が速くなっているにも関わらず、スペック上のバッテリー持続時間は7と変わらない。iOS 11にアップデートしたiPhone 7では従来よりもバッテリーの減りが早くなった事例が報告されているが、8では丸一日問題なく使用できている。

それでも足りないというヘビーユーザーに嬉しいのが、USB端子経由で大容量の電源を供給できる「USB PD」(USB Power Delivery)への対応、つまり急速充電が可能になった事だ。

別途、急速充電用のアダプタ(29W USB‑C電源アダプタ)の購入が必要だが、充電を急ぎたい状況が多い人にはオススメだ

さらに、発表前から噂になっていたワイヤレス充電にも対応。最近カフェなどで見かけることのあるワイヤレス充電対応のテーブルを使えば、アダプタやケーブルを取り出すことなく、置くだけで充電ができるという手軽さがいい。もちろん、世界規格なので海外でも同様だ。

置くだけで充電される「Qi」。iPhone 8が30分で30%から52%まで充電された

話が細部に及んだが、iPhone 6から8発表までの3年間、Appleはエッジの立った信念は鞘にしまいつつ、ひたすらに内面を磨くことでこのラインの完成度を徐々に高めてきたのではないか。そういう意味でiPhone 8は、6以降Appleが描き始めたiPhone "シーズン2"が一つの決着を見た瞬間なのではないだろうか。もちろん、シーズン3もすでにスタートの仕込みができているのがAppleの抜け目のなさ。鞘にしまわれたものは飾りではなかったということだ。

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