iPhoneとAndroidスマートフォンの間に、なぜこれだけのパフォーマンスの差が生じたのか。その答えは、ビジネスモデルの違いにある。

まず前提として、Appleのスマートフォンビジネスは依然として、好調だ。業界全体の利益の9割以上、赤字分もカウントするなら100%以上のシェアを確保する存在となっている。これは、他のメーカーは薄利多売という条件下で販売台数の確保を強いられているということも意味している。

A11 Bionicは2つのハイパフォーマンスコア、4つの効率コアと、3コアのグラフィックス、画像処理エンジンを備える

Appleはプロセッサの設計や製造に関して、自社の高付加価値スマートフォン向けに専念できる。そのため、プロセッサ単体の単価や収益性を考える必要がないのだ。ここが、Androidスマートフォンとそのプロセッサとの決定的な違いとなる。

Androidスマートフォン向けのプロセッサは、前述のQualcommで比較する場合、ARM、Qualcommが利益を確保する必要があり、また採用するスマートフォンメーカーのことを考えると、コストを下げ、サイズをより小さく設計するなど付加価値を高め、競争力を維持しなければならない。他方Appleは、最終製品となるiPhoneまで含めて設計することができるため、コスト、サイズの面での制約がQualcommに対して大幅に小さくなる。しかも、プロセッサそのものが他社との競争に晒されることはないのだ。

AppleはiPhoneのパフォーマンスについて「ハードウェアとソフトウェアの深い連係によって実現する」と説明することが多い。確かにその効果として、アプリ起動速度などにも現れてくることもあるだろう。しかし、そもそもの話として、プロセッサのみの単純な比較を行った場合でも、競争に晒されずに自社設計と自社製品への採用を行うAppleのマイクロプロセッサの製造モデルは、Androidスマートフォンのそれとは根本的に異なる潤沢なコストとリソースによって、独自の進化を続けているのだ。