"食"は旅の醍醐味のひとつ。普段なかなか食べられない刺身やステーキといった高級料理もいいが、せっかくならば"地元民に愛されている庶民派の味"も楽しみたい。海山の恵みが豊かな食の宝庫・愛媛県では、食ツウの県民たちにどんな料理が愛されているのだろうか。ここでは地元の人に聞いた、2大ソウルフードを紹介したい。

鮮魚をはじめ、自然の恵みが豊富な愛媛県

今治人のソウルフード「焼豚玉子飯」

"今治人たちが愛してやまない"という「焼豚玉子飯」(750円)なるB級グルメを食べに行く。名前から考えると、こま切れの焼き豚を玉子でとじた親子丼的なもの? それとも、フライパンで焼いた焼豚と玉子焼きを丼飯にのせたポーク玉子的なもの?

……いろいろと想像を膨らませていたのだが、実際はもっともっとワイルドな一品だった。それがこれ!

「焼豚玉子飯」750円

丼飯の上に、焼き豚をドーン、その上に目玉焼きをドーン! まさしく"焼豚玉子飯"。名前に一切の偽りなし。しかも、ラーメン鉢風の器に山盛りなので、ボリュームも申し分なし。ちょうどお腹ペコペコだったので、さっそく食べていこ……え? 地元流の食べ方がある?

目玉焼きの下には、焼き豚がどっさり

まず、レンゲ(レンゲのみで食べるのも地元流)で、2個の目玉焼きを半分にカット。そして、その半分を豪快にかき混ぜる。そのうえで食す。半分を食べ終わったら、同じ要領でもう半分もかき混ぜて食べるのだという。

目玉焼きを半分にカット

半分を豪快にかき混ぜれば、完成

では、ようやくパクリ。正直、焼豚と玉子とご飯なので、ある程度は味の予想がついていたのだが、いい意味で裏切られた。味の決め手は"タレ"。しょうゆベースの濃厚なこのタレが"甘辛い"というか"甘甘辛い"のだ。これが焼豚や丼飯によくマッチし、少し懐かしさを感じさせるような優しい味わいを醸し出している。

半熟の黄身も味のアクセントに

半分を食べたら、もう半分も同じ要領でかき混ぜる

この「焼豚玉子飯」は、今治で数十の店が提供しているのだが、今回はせっかくなので発祥の店と言われる「白楽天」に来店。この、ありそうでなかった今治の名物グルメはどのように誕生したのか? 店主に聞いてみた。

今治市の中華料理店「白楽天」

「もともとは店のまかない飯として食べられていたもので、当時の店主がそれをメニュー化したのが始まりです。約40年前になります。昔から今治人はイラチ(気が短い)なので、料理が早く提供されないと我慢ができない。安い、早い、旨いの三拍子そろった『焼豚玉子飯』は理にかなっていたこともあって、地元で人気メニューになったんです」

食事前、隣で常連さんたちが「焼豚玉子飯」に唐揚げが付いたセットをペロリと完食している勇猛な姿を目撃。「さすが地元民!」なんて思っていたのだが、いざ食べてみると大食いではない自分もサクッと完食できた。ひと口食べ始めるとレンゲが止まらなくなる、クセになる一杯だった。

なかなかのボリュームながら、すんなりと完食

●information
「焼豚玉子飯」
白楽天
住所: 愛媛県今治市常盤町4-1-19
営業時間: 11~15時、17~22時
定休日: 火曜日

せっかく愛媛に来たのだから、やはり瀬戸内の魚介も食べたい。続いては、地元の方に「魚介? それならこれだよ! 」と教えてもらったソウルフードを紹介しよう。