吉田氏は、綾鷹ブランドに対する消費者の期待は「漠然と『急須』『本格的』というキーワードを浮かべているもの」だと分析している。

競合他社も「CMキャラクターのあの人の製品だよね、くらいのものかもしれない」とした上で、「だからこそ、なんとなくのチョイスから一歩踏み込んでもらうために、『伝統と革新』というキーワードのもとに創造し続けなければならないと思っています」と吉田氏は語る。

一方で上林氏はこの新製品が「急須で入れた緑茶の味を知っている層がどう感じるか、やや恐怖を持ちつつも期待している」と話す。

「これまでの経験から、綾鷹は一定のクオリティを保ってしっかり成果を出しました。珠玉の深みは、そこからさらにクオリティを上げることを目指した総結集的な製品です。これまでもクオリティを大切にしていて私たちに伝わってきた声も批判的なものはなかった。この製品で目指すのは、さらに上を知っている人たちに認めてもらえる緑茶です。まずは口にしてもらってファンになってもらう。それは、私たちが普段からやっている『体験してもらってわかる味』であり、マーケティング的に数字で見えてくるものではないんです。飲んでもらえれば、期待を超えられるものだと思っています」(上林氏)

取材時に飲み比べた感想では、通常の綾鷹を基準として、にごりほのかと珠玉の深みの明確なブランド間の違いを感じることが出来た。にごりほのかは飲みやすい煎茶、さらに言えばよりライトなブレンド茶のような飲みやすさがあるのに対し、珠玉の深みは苦みがグッと奥底に漂う濁り茶ならではのあじさいがあった。とはいえ、苦みありきではなく、吉田氏らの説明通りの旨み、コクといったものも多分に感じられ、急須で飲むお茶の味というコンセプトが通常の綾鷹よりも感じられる。

綾鷹の試飲にあわせて、珠玉の深みと同じく、通常の煎茶に玉露を加えた時の味わいを上林氏に注いでいただいた。玉露を加えると苦みこそ増すものの、味わいが一段と深くなる

日本コカ・コーラは9月にも「熟成」をキーワードにリブランドした「熟成烏龍茶 つむぎ」をリリースしているが、こうしたプレミア感を強調した製品の連続投入は必ずしも意図したものではないと吉田氏は煙に巻く。

ただ、好調な経済環境下において、高級感を打ち出す製品が飲食品に限らず登場しつつあるのも事実。デフレ脱却にあわせた値上げだけでなく、付加価値にあわせたプレミア価格を消費者がどこまで許容し、求めるのか、珠玉の深みの売れ行きに注目したいところだ。