――外から見ていて気になるのは社長交代のペースが速いことです。初代社長の関取高行氏が1年、2代目社長の大田義実氏が2年の在任期間でした。まさに、野球でいえば、ショートリリーフの様相です。社員も落ち着かないのではないでしょうか。この調子では、3代目社長の吉田社長の在任期間は3年ということになりますが(笑)。

吉田氏:私の在任期間で3年になるかどうなるかわかりませんが(笑)、ショートリリーフでつないできたというのは、結果的にそうなったということであり、最初からそうだったわけではないと思いますよ。その時々の適材となる人を社長に据えたということだと思います。

社長が変わることで、社員にも様々な影響を及ぼすのは確かです。しかし、これによって新たなことにチャレンジしやすい環境が維持できますから、新たなことをやりたい社員にとってはいいことかもしれません。

ただ、常に、短くバトンを渡していく会社ではないということも理解していてください。これまでの3年間は外科手術が必要な時期でした。経営側も大変だったと思います。これからは内科的な手術に入る時期です。いわば心肺能力を高めるなど、弱い部分を強くしていくことが求められます。

私の社長としての役割は、目の前の収益を高めるとともに、将来の方向性をしっかりと示すことです。何年間社長をやるかということよりも、いまやるべきことをやることが最優先です。いま、私は60歳ですが、VAIOをちゃんとした会社にすることが、私の役割です。

――就任会見では、「VAIOから日本のエレクトロニクスを元気にしたい」と発言していました。これはどんな思いを込めたのですか。

吉田氏:一流の会社からスピンアウトした会社がどう成功していくのかということは、多くの人が関心を寄せていると思います。その期待にVAIOは応えていく必要があります。VAIOは姿、形を変えたが、VAIOらしさはしっかりと残っていて、引き続き応援したくなる会社だと言ってもらいたいですね。そうしたVAIOを目指したいと考えています。

社長就任会見の一幕。VAIOのブランド価値を高めるとともに、VAIOから日本のエレクトロニクスを元気にしたいと語られた

――1年後のVAIOは、どんな会社だと言われたいですか。

吉田氏:「VAIOの復活が本物になった」と言われたいですね。最初の1年は不安に感じた人も多かったでしょう。しかし、3期連続の最終黒字、2期連続の営業黒字なり、信用能力も少しずつついてきました。最初の1年を地盤づくりの1年だとすれば、そこから3年を経過して、それが評価されるのが来年になります。その成果をみて、復活が「本物だ」と言われるようになりたい。

現時点でも復活の道筋を歩んでいますが、まだ復活の麓にいるにすぎません。力強さに欠けます。モノづくりでの「本物」感は維持しつづけていますが、財務体質や経営体質を含めて、総合的にVAIOは「本物」であると言われることを目指したいですね。

社員からは、みんなでそろそろ「美味しい酒」を飲みたいという声があがっているのですが、「いや、もう少し待ってくれ」と言っているんです。まだ、復活を喜ぶには早い。2018年5月期の決算で、それを評価したいですね。そのときには、美味しいお酒を用意しますよ(笑)。