【レポート】

パナソニックらが「次の100年」をベンチャーと考える場「100BANCH」

渋谷駅南口からすぐという好立地にある3階建てのビル。ここには複数のベンチャー企業やグループが集い、それぞれ実現したい企画に取り組んでいる。

彼らがあつまる施設の名称は「100BANCH」。パナソニックが2018年に100周年を迎えることを契機に、ロフトワーク、カフェカンパニーが参画したことで生まれた「場」だ。

同施設は2017年7月7日からオープンしているが、運営から一区切りとなる3カ月が経過したことを受け、あらためてこの「場」の設立経緯やその「場」自体の立ち上げの裏話などを公開するイベント「100年先につながる新しい価値を目指して、パナソニックが100BANCHをつくった理由」が行われた。

イベント会場となった「100BANCH」3階「LOFT」(写真提供:ロフトワーク)

松下幸之助のベンチャー精神を現代に

「100BANCH」という名前は、たくさん、100年という期間を示す「100」と、"番地"、"束"という意味を重複させた「BANCH」というふたつの単語を組み合わせた多義的なもの。渋谷に集まる人々、そして若者の力をたばねるという施設の狙いを体現しているという。

3階建ての施設はフロアごとに用途が異なり、1Fはカフェ・カンパニーが企画・運営するカフェスペース「KITCHEN」(※今秋オープン予定)、2Fは後述するプロジェクトに参加するメンバーのためのワークスペース「GARAGE」、3Fはイベントスペース「LOFT」となっている。

「100BANCH」外観

3階建てのビルの各フロアごとに異なる役割がある

施設の主な対象者を若者と定義したのは、パナソニックの創業者・松下幸之助が23歳のころに起業したというエピソードから。今や大企業であるパナソニックもかつては「ベンチャー」であったという原点に立ち返り、若者の挑戦を支援する。

プレゼンテーションを行った、ロフトワーク Layout Unit CLO 松井創氏(左)、パナソニック コーポレート戦略本部 経営企画部 未来戦略室 則武里恵氏(右)(写真提供:ロフトワーク)

「渋谷での3カ月」が若手のビジネスを加速

「100BANCH」の中核を成すのは、35歳以下の若者たちを支援するアクセラレーションプログラム「GARAGE Program」だ。企業発の若年向けビジネス支援制度にはさまざまな例があるが、同プログラムの特徴は、随時公募・審査を実施し、3カ月ごとに参加者が入れ替わるスピード感と、ジャンルを区切らずビジネスアイディアを募集する門戸の広さにある。

イベント開催段階で「GARAGE Program」に参加していた面々。プロジェクトはWebサイト上にて一覧することができる

審査を通過したチームは、「100BANCH」内のワークスペース「GARAGE」やイベントスペース「LOFT」を無償で利用できる。また、採用を決めた審査員が各プロジェクトにメンターとして参加し、課題解決のためのアドバイスやサポートを受けられる。審査員兼メンターには、研究者/メディアアーティストの落合陽一氏、ハードウェアメーカーCerevoの岩佐琢磨 代表取締役、同施設の空間・ファサード設計も手がけた建築家の長坂常氏(スキーマ建築計画)など、各界の著名人が集まっている。

「100BANCH」立ち上げの裏話

数々のプロジェクトが動く「場」として機能している「100BANCH」だが、ここでは裏話として、「100BANCH」自体の立ち上げの裏話が語られた。

「100BANCH」プロジェクトのスケジュール

ロフトワーク 京都ブランチ事業責任者 寺井翔茉氏

ロフトワークの寺井翔茉氏は、「100BANCH」の計画がスタートしたのは約10ヶ月前、「GARAGE Program」の事前公募を4月から行ったことを差し引くと、使える時間は実質8カ月と、参加企業の数や計画の大きさからするときわめて短い時間だったと明かした。

「100BANCH」のビジュアルイメージは、ロゴマークを中心に一定のトーンで展開されている。だが、その統一感とは裏腹に、守るべきデザインルールは「線を交差させた角度」のみときわめてシンプルだ。

「100BANCH」のロゴは、アイソメトリック図から着想を得た120度で交差した線によって作られている

「100BANCH」のBIガイドライン

寺井氏は、こういった共創スペースや公的空間において、開設最初は綺麗だが、だんだん張り紙や案内板などが追加されていって雑多になってしまう例もあるとした上で、それは「デザインルールが複雑で、デザイナーにしか扱えないようなものになっていると、通常の運営に耐えられない」として、トーンのそろったデザイン運用には、ゆるやかで開かれたデザインルールの設計が必要だと指摘した。

また、スピードが要求された開設までの道のりには、プログラミング分野のアジャイル開発手法のひとつである「Scrum」(スクラム)を採用し、全メンバーが物理的に同じ場所に集まって進行していった。

ちょうど同時期にロフトワークが開設したワーキングスペース「COOOP3」に専用のスペースを作り、通常3か月はかかる仕事を3日で終わらせるための場を設けた。壁にふせんを貼る形式でタスク管理やWebの階層整理、企画構想まで行い、それをそのままプレゼンテーションに使うことで、プレゼン資料の作成・管理を省くなどの仕組みを設けた。

壁に付せんを貼り、タスク管理や企画構想を行った

プロジェクト運営における3つのポイント

そして、骨太なプロジェクトには根幹となる部分からクリエイターを巻き込むことが不可欠であると語り、ウォーターフロー型にできあがったもののデザインを任せるのではなく、プロジェクト立ち上げからクリエイティブを考えていくことがプロジェクトの成功に必要なのだと語った。この「100BANCH」設立プロジェクトの詳細は、ロフトワークWebサイトに掲載されている。

なお、同イベントではメンターの1人でもあるCerevo 代表取締役社長 岩佐琢磨氏と、パナソニック コーポレート戦略本部 経営企画部長 村瀬恭通氏、同 経営企画部 未来戦略室 則武里恵氏の対談「パナソニックと100BANCHが目指す“次の100年の価値”とは」が催され、パナソニックのような大企業がベンチャーと共創することのメリットなどについて意見が交わされた。

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