インフォテリア 代表取締役社長/CEO 平野洋一郎氏

近年注目を集めるブロックチェーン。「名前は知っているが仕組みについては詳しくない」という人も多いのではないだろうか。そんなブロックチェーンビギナーを対象に、インフォテリアは「いまさら聞けない! ブロックチェーン」というテーマで、勉強会を開催した。今回、ブロックチェーンの基礎についてレクチャーしてくれたのは、インフォテリア 代表取締役社長/CEOの平野洋一郎氏。平野氏はブロックチェーン技術の普及推進を行う団体「BCCC」の代表理事を務めており、ブロックチェーンの健全な発展と普及に向けた取り組みを行っている。

勉強会では、平野氏がブロックチェーンの仕組みや特徴、応用などについて、初心者でも理解しやすいように解説してくれたので、その内容を可能な限りわかりやすく紹介しよう。

高いシステム強度でビットコインを支える

「ブロックチェーンは、新たに考案されたデータ記録の技術です。『Satoshi Nakamoto』と名乗る人物によって2008年に提出された仮想通貨ビットコイン構想の論文に記載されており、システムがリリースされた2009年以降一度もダウンしていないことから、ビットコインを支えている技術だといえるでしょう」

まずはじめに、平野氏はブロックチェーンが生まれた背景から説明した。そのうえで、「ビットコインの取引所破たんや詐欺事件が起きていることは事実ですが、銀行強盗が起きても日本円の信頼性を損ねないことと同様に、それらによってビットコインの信頼性が失われるわけではありません」と、ブロックチェーン技術の持つ堅牢性を強調する。

ブロックチェーンとは「高い堅牢性」を備えた「データを記録する技術」だ。では、どのような仕組みで堅牢性を実現しているのだろうか。

「ブロックチェーンの特徴はデータの塊を連鎖させた構造になっている点です。その人しか持つことのできない秘密鍵を使って暗号化し、実行された取引データがブロックを形成。新しく作成されるブロックには1つ前のブロックの情報(ハッシュ値)が書き込まれるようになっており、仮に取引の情報を書き換えたとすると次の取引と照合ができなくなるため、データが改ざんされていることがわかるのです。秘密鍵で暗号化されているそれらのブロックをすべて一瞬で置き換えることは、事実上不可能でしょう」(平野氏)

複数の取引記録から形成されるブロックの情報が、次のブロックに組み込まれて連鎖していくため、1つの取引データを変更しようと考えた場合、連結しているすべてのデータを変更しなければならない。この仕組みによって、ビットコインは高い堅牢性を保ちながら取引を行うことができているのだという。

ビットコインを例にしたブロックチェーンの仕組み

ブロックが連鎖するイメージ

また、Peer to Peer(P2P)と呼ばれるネットワーク構築方法も、ブロックチェーンの特徴の1つだ。さまざまなコンピューターが同じ立場でつながって処理をするというもので、世界中に存在するそれぞれのコンピューターが通信ネットワークを構成する中継点「ノード」となり、参加者の合意形成によって処理が行われる。

「分散データベースとは異なり、コンピューターのみが分散しているため、データや処理は分散されません。ハイスペックなクライアントサーバは不要で、いくつかのコンピューターが故障した際や悪意による攻撃を受けた際でも、そのノードを切り離すだけで正しいデータを残すことができます」と、平野氏。

従来はコストや時間をかけて壊れにくく強固なサーバを設計することが一般的だったが、ブロックチェーンでは、コンピューターは壊れるという前提で設計されている。高価なハイスペックコンピューターを使う必要がないため、コストメリットを実現。そして、取引の情報は全ノードで常に共有されているため、いくつかのコンピューターがダメになった場合でも、システム自体は停止しないようになっている。

ノード共有のイメージ

P2Pがもたらすシステムの継続力