Society 5.0時代の……「明日の技術」

毎年、CEATECは「明日の技術」にもあふれている。以前は、デバイス側、デバイスを構成するパーツ側という紹介や展示が多かったが、今年のCEATEC 2017は「サービス」の中核をなすような技術が多かったように感じた。明日の技術と今日の技術、いくつかピックアップしていこう。

めざせ! 聖徳太子、複数人の同時発言を分離

三菱電機ブースでは「AIを用いた音声分離技術」が紹介されていた。独自の「ディープクラスタリング」技術によって、一本のマイクに対して複数人が同時に話しかけても、その音声を話者ごとに分離するという。

開場では、10人程度が入れる小ブースで男女二人が同時に別のことを話して、それを分離した音声を再生するというデモが行われた。質問をしてみると、同性同士でも分離可能で、さらに語尾が若干異なる同じ発言でも分離可能と、現時点でもかなり実用性のある技術だと感じた。分離後の音声は微妙に変な音になっていたが、十分に聞き取れるレベルだ。

今のところ「3人までは実証している」ということなので、聖徳太子のように10人同時の発言を分離できる日も近いかもしれない。複数の話者が同時に発言すると、マイクから遠くなったり、マイクとの距離がばらついたりするため、ソースの品質が悪くなるという問題もあるようだ。

いわゆる深層学習(ディープラーニング)に類する技術なので、事前学習が必要となる。今回のデモは「英語かつ別人の声」でトレーニングをした結果で日本語を分離していたのだが、人の話し方の特徴をうまくつかんだ学習ができていたのだろう。

マイク一本で、複数話者がしゃべった内容を分離する技術。特定の話者や会話を事前学習するのではないため、学習ソースの話者とは無関係に使える点で応用性と汎用性が高そうだ

デモスペースで実際に体感。男女の話者とはいえ、語尾だけ変えた同時発言も分離していたので、実用性にも期待できる

AIの為替予測は儲かるのか!?

MUFG(三菱UFJフィナンシャル・グループ)は2016年のCEATECで、Fintechに関連する技術として、AIを利用した為替予測のデモを行っていた。2017年6月28日からは、「じぶん銀行スマートフォンアプリ」内において、AI外貨予測を提供開始している。今年のCEATEC 2017は、そのデータをもとにしたデモを見せた。

ルールはシンプルかつ大胆。アプリの米ドル予測が一時間後に上がると出れば買い、下がると出れば売りで、1,000万円分(!)を売買する。一定の利益・損失が発生するか、または1時間後に決済するというもの。

10月2日のCEATECプレスデーからスタートしており、3日目に見たところ、30万円ほどの利益が出ていた。ただし、デモは自動的に売買をしているが、アプリはあくまで予測を表示するのみ。自動売買のモードはなく、当然ながら必ず利益が出るものではないので注意したい。

2016年は技術デモだったAI外貨予測は、現在「じぶん銀行アプリ」に組み込まれているため、その気になれば誰でも利用可能。ただし自動売買ではなく、手動で売買オーダーを操作する必要がある

上の写真はプレスデー(10月2日)のもの。下の写真は10月5日の午後。損益はプラスだが、的中率が下がり気味。写真上で見ると、グラフの半分から左のほうはほぼハズレ