【レポート】

「iPS細胞由来心筋シート」はダーウィンの海を越えられるのか - 第一三共、阪大発ベンチャー企業に出資・共同研究を開始

第一三共は、大阪大学発ベンチャー企業のクオリプスへの出資と、iPS細胞由来心筋シートの全世界での販売オプション権に関する契約を締結したほか、共同研究開発を開始することを発表。10月5日、都内にて報道陣向けの説明会を行った。

会見には、左から、デフタ・パートナーズ グループの原丈人 会長、クオリプスの飯野直子 代表取締役社長、大阪大学大学院医学系研究科心臓血管外科学の澤芳樹 教授、第一三共の代表取締役兼CEOを務める中山譲治氏が参加した

はじめに、クオリプスのチーフ・サイエンティフィック・アドバイザーであり、また心臓の再生医療における第一人者でもある大阪大学大学院医学系研究科心臓血管外科学の澤芳樹 教授より、「iPS細胞由来心筋シート」における研究内容の説明が行われた。

大阪大学大学院医学系研究科心臓血管外科学の澤芳樹 教授

心筋シートといえば、2016年6月に、テルモのヒト(自己)骨格筋由来細胞シート「ハートシート」の保険診療が開始されたことが記憶に新しいが、同大では、さらなる技術向上を果たすために、iPS細胞を活用した心筋細胞シートの研究を進めている。

その結果、iPS細胞由来心筋細胞による心筋シートの作成に成功し、約7日間、一定の温度でシートを保存可能な独自の搬送装置によってシートを拍動させたまま海外へ搬送することを可能にした。また、「SPring-8」を用いた実験によってiPS細胞由来心筋細胞が、宿主心筋と電気的・機械的に結合して同期拍動することを発見。そのほか、CD30抗体医薬による未分化iPS細胞の除去技術も開発することに成功した。

iPS細胞由来心筋細胞による心筋シート(左)。約7日間、一定の温度でシートを保存可能な独自の搬送装置によって「シートを拍動させたまま」海外へ搬送することを可能にした(右)

同シートの移植までの流れは大まかに、京都大学がiPS細胞を作ってストックし、その細胞を用いて大阪大学が心筋細胞を精製・洗浄、凍結保存をした後、手術日に合わせてシートを作製、融解、心筋シート化培養を行い、出荷、移植を行うというもの。同氏は今後「筋芽細胞シートで培ったノウハウを活かし、臨床研究を進めたい」としたほか、「同技術が死の谷を超え、ダーウィンの海を越えるのは難しいことであるが、今回の(第一三共との)連携によって、実際に世界中の患者に届けることが可能になってきたと考え、非常に期待している」と語った。

デフタ・パートナーズ グループ代表の原丈人氏

第一三共の代表取締役兼CEOを務める中山譲治氏

クオリプスの飯野直子 代表取締役社長

クオリプス創設者の1人で、デフタ・パートナーズ グループの会長である原丈人氏は、「天寿を全うする直前まで健康であることを実現することができる世界最初の国を2050年までに創る」という理念を掲げ、クオリプス設立の経緯を説明した。なおデフタは、同社の持つ、先見性や自己資金、事業能力などによって、クオリプスの支援を行う役割を担う。

また、第一三共の代表取締役兼CEOを務める中山譲治は、クオリプスとの具体的な事業化体制についての説明を行った。同社では2001年より細胞治療研究に取り組んできたほか、現在取り組んでいる「SOC(標準的治療)の改革」の実現のため、今回、大阪大学のiPS細胞由来心筋シートを、重要な治療法として位置づけ、連携を行うに至ったという。同連携により、「重篤な心不全患者の治療を行うこと」を目指すほか、両者の持つノウハウを活かし、研究開発を加速させ、世界展開につなげて行きたいとした。

産学連携によるiPS細胞由来シートとの開発・実用化のイメージ

さらに、クオリプスの代表取締役社長である飯野直子氏は、同社のラボ(大阪大学吹田キャンパス内)の説明のほか、事業内容の説明、会社名の由来などを説明し、「世界初となるiPS細胞を使った心不全治療の実用化を目指し、挑戦を続けていきたい」とコメントした。

クオリプスの研究開発拠点の概要

社名の由来は、イタリア語で心臓を意味する「Cuore」と「iPS」を組み合わせた造語であるという

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