仕事で関わる人の死活問題に

深刻な問題とは、展示会に関わる人には死活問題につながることだ。その影響について、東京ディスプレイ協同組合理事長の吉田守克氏は「展示会でのブース施工、電気工事、警備、人材派遣、清掃、印刷、宿泊、飲食など展示会の支援企業は深刻な悪影響を受ける。20カ月間の展示会中止・縮小によって延べ1600社が2300億円の売上を失い倒産が続出する」と警鐘を鳴らす。

それだけではない。展示会は"商談の場"である。先の吉田氏は「展示会に出展する中小・零細企業も営業や宣伝に莫大な費用をかけられず展示会を大いに活用している。展示会という販売手段によって新規顧客を開拓しているので商談の場がなくなる」とする。展示会に直接的に関連業界に携わるだけではなく、見本市を商談の場として捉える多くの中小企業に影響を及ぼし、経済に大打撃を食らう恐れがある。

その影響の大きさは莫大だ。日本展示会協会の試算によると、20カ月間で中止になる見本市は232本相当とし、出展できなくなる企業は78000社。商談の場が奪われることで喪失する売上は2兆700億円に達するとしている。

仮設展示場は不十分

もちろん対策がないわけではない。2019年4月からの制限にともない、東京都は仮設展示場を用意する。それでもデモが起こるのは対策が極めて不十分だからだ。

仮設展示場建設予定地

まず、仮設展示場は五輪開催期間も利用できるわけではない。2020年7月以降の3カ月は使用不可になる(後述するように一部緩和の方向)。

次に、施設についてだ。仮設展示場の面積はビッグサイトの4分の1程度に過ぎない。仮設展示場があっても、ビッグサイトの使用制限がかかるため、利用可能面積は今より減ってしまう。設備も不十分だ。「仮設展示場は出展製品を搬入するためのトラックヤードや、来場者の待機スペースといった、展示会場に不可欠な要素もなく非常に厳しい条件」と先の吉田氏は指摘する。

最後が仮設展示場とビッグサイトの距離について。両施設は約1.5km離れている。となれば、類似テーマを2会場で同時開催する分断開催の可能性も出るが、これに関しての懸念は尽きない。

そもそも、1.5kmも歩いて移動しようと思える人がどれだけいるかだ。いわずもがなだが、1施設あたりの来場者が減ることは必至。展示会の効果が薄まれば、出展社も減る。減れば展示会が成り立たない。最終的に競争力を失うという流れが見えてくる。こうした負のスパイラルの発生が強く想定されると、ある業界関係者は指摘する。