【レポート】

[Oracle OpenWorld]エリソン氏、機械学習で自動化を実現した「Autonomous Database」発表 - AWS Redshiftに対抗

米Oracleは10月1日、米サンフランシスコで年次イベント「Oracle OpenWorld 2017」を開幕した。初日夕方の基調講演に登場した経営執行役会長兼CTOのラリー・エリソン氏は次期データベース「Oracle 18c」、18cをベースとした「Oracle Autonomous Database Cloud」を発表、「世界初、そして唯一の完全自動化データベース」と紹介した。ライバルと位置づけるAmazon Web Services(AWS)のクラウド・データウェアハウス「Amazon Redshift」よりも低コストで高機能を実現すると胸を張った。

米オラクル 経営執行役会長兼CTO ラリー・エリソン氏

今年のOpenWorldは、本業であるデータベースの最新版が最初のトピックとなった。Oracleはデータベース最大手だが、クラウド・データウェアハウスの分野ではAWSが先行してRedshiftを提供、Oracleのデータベースから簡単に移行できるマイグレーションツール「AWS Database Migration Service」で猛攻をかけている。

Microsoftも今年9月末に開催した「Ignite 2017」で、LinuxとDockerに対応した「Microsoft SQL Server 2017」を10月2日に正式提供開始することに合わせ、マイグレーションツール「Database Migration Service」を発表したばかりだ。加えて、業務アプリケーションで火花を散らすSAPは、「S/4 HANA」で自社インメモリ技術「SAP HANA」のみに対応する方向に舵をとった。このような動きに対し、データベース最大手のOracleの次の一手が待たれていた。

最新データベースのポイントは自動化とセキュリティ

この日、エリソン氏は1時間15分の基調講演において、最新のデータベースの自動化技術とセキュリティの関係にフォーカスして話をした。

自動化技術とは「オートノマス」――つまり、完全なる自動化を実現するものだ。土台にあるのは、エリソン氏が「インターネットに匹敵するレボリューション」と評価する機械学習技術だ。

ネットワーク、ストレージシステム、仮想マシン、OSなどのインフラ、プラットフォーム、アプリケーションとさまざまなイベントログからノーマルパターンとアブノーマルパターンを学習することで、自動でプロビジョニングし、継続的に自身を適用させてチューニングを行う。バックアップ、アップグレード、パッチなどの管理も自動化される。もちろん、データが増えれば精度はさらに上がる。「100%自動化する。人の手による作業は不要」とエリソン氏はいう。

このようなフル自動化(人手を介さない)によるメリットは多岐にわたるというが、エリソン氏が最も強調したのはセキュリティだ。

「サイバーセキュリティで最も大きな問題はデータの窃盗だ。OracleのAutonomous Databaseはデータにとって最も安全な場所になる」とエリソン氏。Oracleは会期中、やはり機械学習を利用したセキュリティ・ソリューションを発表することになっており、完全ではないものの自動化を進めているという。

これらの連携により、脅威発生と同時にそれを検出してデータベース側に伝えると、データベースがシステムをダウンすることなく自動で自身にパッチを当てるといったことが実現するという。

「データ窃盗はパッチを公開した後に起こる」とエリソン氏。パッチ公開の後、管理者はダウンタイムをスケジュールしてパッチ適用を行うが、この時差を狙って攻撃されてしまうのだという。「このやり方は機能しない」とするエリソン氏、Oracleはサイバー防衛の自動化を実現するとした。

人手を介さないことで高い可用性も実現する。Oracle DB 18cの可用性は99.995%、年間30分以下とエリソン氏は約束する。そして、「Amazonなど他社は計画外の設定変更、計画外のメンテナンスやパッチ適用などが除外されている」と、競合に対するアドバンテージを強調した。

さらに、エリソン氏は自動化によるメリットとして、リソースの効率化と伸縮性も挙げた。大型のクエリなどで追加のキャパシティが必要な場合、「ダウンタイムなしにコンピューティングやストレージを拡大、縮小できる」とエリソン氏、必要最低限をプロビジョニングするためオーバープロビジョニングの心配はなく「真のオンデマンドを実現できる」と続けた。これに対し、「Amazonは自動化されておらず、Elastic(伸縮性、Amazon EC2のE)とは言えない」と指摘した。

AWS RedShiftに対する価格優位性をデモで披露

Oracleは価格面でも競争を挑む。エリソン氏は9月中旬、Oracle Databaseのライセンスの「Bring Your Own License(BYOL)」をIaaSだけでなくPaaSに拡大する「Pay as you go BYOL Database」、プリペイド感覚で月額または年額でクレジットを購入してさまざまなサービスに使える「Universal Credits」を発表している。BYOLを利用することで、最小価格は1 Oracle Compute Units(OCPU)と1テラバイトで月額300ドルになるという。

エリソン氏は、Oracle DB 18cのAmazonに対する価格と性能での優位性を示すデモも披露した。

例えば、Autonomous Database Cloudのデータウェアハウス版とAmazon Redshiftで同じ市場リサーチワークロードを動かすというデモでは、まずAWSを先にスタートさせた後でOracleのシステムのスタートボタンを押した(写真1)。

Oracleのシステムが、50%完了したRedshiftに追いついた段階で(所要時間はOracleが19秒、Redshiftが60秒)、価格はOracleが1セント、Redshiftは7セント(写真2)。38秒でOracleがワークロードを完了した時点でも、Redshiftはクエリを半分しか処理できていない上にコストはOracleの4倍以上だった(写真3)。最終的にRedshiftは所要時間244秒・価格が27セント、Oracleは38秒・2セントとなった(写真4)。

写真1:市場リサーチのワークロードをAutonomous Database Cloudのデータウェアハウス版とAmazon Redshiftで実行

写真2:Autonomous Database Cloudのデータウェアハウス版がRedshiftに追いついた段階で、料金は前者が1セント、後者は7セント

写真3:Redshiftはクエリを半分しか処理できていない上、料金はOracleの4倍以上

写真4:最終的な所要時間と料金は、Oracleが38秒/2セント、Redshiftは244秒/27セント

総じて、Amazonは数倍から数十倍割高となっただけでなく、「(Oracleなら)人手が不要になるなどのメリットがあり、RAC、高い可用性などの機能もある」とエリソン氏は述べる。

AWSと比較した優位性としてチューニング不要、管理不要、柔軟性、伸縮性などを挙げている

Autonomous Databaseはデータベース管理者の仕事を奪うのか?

昨今、AIが仕事を奪うと言われているが、Autonomous Databaseはデータベース管理者の仕事を奪うのだろうか? エリソン氏は次のように述べる。

「インフラ、パッチやアップグレード、チューニングなどのルーティン作業が自動化により解放される。これまでの管理から、データベースのデザイン、機械学習などのデータ分析、データの安全化などのイノベーションに時間を割くことができる」

18cはオンプレミス、顧客のデータセンター内でサブスクリプションモデルで利用できる「Cloud at Customer(ハードウェアはExadata)」、パブリッククラウドと、ワークロードの種類に合わせて複数用意する。まずは2017年12月、「Oracle Autonomous Database for Data Warehouse」を提供する。「自動化、効率化によりAWSの半分のコストで100倍の可用性改善を保証する」とエリソン氏は述べている。

2018年6月には、OLTP向け(「Autonomous Database for OLTP」)を提供するほか、NoSQLやExpressなども用意する計画だ。

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