1967年に放送を開始した円谷プロ製作の特撮テレビシリーズ『ウルトラセブン』が、今年(2017年)で50周年というアニバーサリーイヤーを迎えることになった。第1話「姿なき侵略者」の放送日である10月1日は、熱心なウルトラセブンファンにとって祝福すべき記念日にあたる。ここではウルトラセブンの生誕50年を祝して、主演を務めた森次晃嗣(モロボシ・ダン役)とヒロインのひし美ゆり子(アンヌ隊員役)の2人がマスコミに向けて行った会見の模様(「ウルトラマンフェスティバル2017」のトークイベントより)をお伝えすることにしよう。

左から、ウルトラセブン、森次晃嗣、ひし美ゆり子

『ウルトラセブン』は、円谷プロとTBSが制作した「空想特撮シリーズ」の第3弾にあたる作品。1963年に創立した円谷プロが初めて取り組んだテレビシリーズ『ウルトラQ』(1966年1月開始)は、「もしも自然界のバランスが崩れたら」をテーマにしたSFアンソロジーに「怪獣」の魅力を加えた意欲的な作品で、放送される否や日本中に空前の「怪獣ブーム」を巻き起こす大ヒット番組となった。

『ウルトラQ』はモノクロ作品だったが、続く『ウルトラマン』(1966年7月開始)はカラーフィルムでの製作となり、『ウルトラQ』の怪獣路線をより強化する形で「怪獣と戦う特捜チーム」および「怪獣と戦う巨大ヒーロー」という、後に作られる数多くの特撮ヒーロー作品でも採用される要素を導入したパイオニア的作品として知られている。『ウルトラQ』から『ウルトラマン』へとシリーズが引き継がれたことにより、怪獣ブームは一層の盛り上がりを見せたが、製作スケジュールの問題で『ウルトラマン』は1967年4月、全39話の放送を終了する。

『ウルトラマン』の後番組には、東映東京制作所の『キャプテンウルトラ』(1967年4月開始)が放映された。『キャプテンウルトラ』は「宇宙特撮シリーズ」と銘打たれ、宇宙開拓時代を迎えた人類を襲う未知なる危険に挑む英雄・本郷武彦ことキャプテンウルトラの活躍を描く、本格スペース・オペラを志向していた。一方の円谷プロでは空想特撮シリーズの決定版となるべく、特撮・怪獣・巨大ヒーローの世界に「宇宙」の要素を加えた新番組の企画を進行。それが、宇宙から地球を狙って忍び寄る侵略者と戦う地球防衛軍の精鋭・ウルトラ警備隊と、彼らに味方する謎のヒーロー・ウルトラセブンの活躍を描いた『ウルトラセブン』だった。

『ウルトラセブン』では、当時の人気番組だったNHKの『サンダーバード』(イギリスで作られた特撮人形劇)の影響もあって、ウルトラホーク1号、2号、3号をはじめとする各種メカニックが出撃する特撮シーンに力が入れられた。また、地底や海底、宇宙などから現れる「怪獣」に代わり、地球を侵略するという明確な意志を備えた「宇宙人」をメインと敵とし、地球へ飛来した侵略者と地球防衛軍、ウルトラ警備隊との"戦い"に物語のウエイトが置かれている。

毎回、地球に攻めてくる宇宙人たちはそれぞれバラエティ豊かな外見をしているのと同様に、その侵略目的もさまざま。地球防衛軍の壊滅を狙うゴドラ星人(第4話)や、本来は地球に危害をもたらす意志がないものの、不幸なトラブルによって地球爆破の命を受けたペガッサ星人(第6話)、人間同士の信頼関係を破壊し、自滅を目論んだメトロン星人(第8話)、そして種族の衰退を防ぐためやむなく地球人の若い生命を奪おうとするワイルド星人(第11話)など、純粋なエンタテインメントの要素を守りつつ、時には深く考えさせられるドラマ性を盛り込んで、バラエティ豊かなシリーズを作り上げている。

ウルトラセブンの仮の姿であるモロボシ・ダンは、地球防衛の使命感に燃える実直な心を持っているが、自分自身が地球人ではない(M78星雲が彼の故郷である)ため、地球人と宇宙人の間に立って苦悩することもある。宇宙人が「悪」、地球人が「正義」と簡単に割り切れないエピソードも作られ、シリアスなムードが貫かれた『ウルトラセブン』は、本放送で夢中になったファンはもちろん、再放送や、ビデオやDVDといった映像ソフト、CS放送、ネット配信などで幅広い年齢層にアピールし続け、今や二世代、三世代にわたって『ウルトラセブン』のファンだという人も少なくない。

当時、24歳の若手俳優だった森次晃嗣(当時の芸名は森次浩司)は、「僕がダンを演じていたときは、とにかく若かったから、演技もストレートでしたね。今だったら芝居を作ってしまうところでも、何か新鮮さを感じながらやっていたように思います」と、若さゆえのフレッシュな演技がハツラツとしたダン隊員像を作り上げるのに役立ったと、しみじみ振り返った。

「過去の映像を見返して、どんな感想を抱くか?」という記者の問いに対しては「いつも見返すと懐かしい気持ちになりますね。あの頃に戻りたいと思っても戻れないけれど(笑)。映像にしっかりと場所が映っているおかげで、このロケのときはこんな風だったなあ……とか、思い出を振り返るきっかけになります」と、俳優として長いキャリアを積んだ現在においても『ウルトラセブン』が重要な作品であると力強く語った。

ウルトラ警備隊の紅一点でメディカルセンターの医師を兼任し、ダンにほのかな思いを寄せる友里アンヌ隊員を演じたひし美ゆり子(当時の芸名は菱見百合子)は、今年7月に『ウルトラセブン』の思い出を綴った本『アンヌ今昔物語』を上梓したばかり。ひし美は「ときおり、ファンの方たちと一緒に当時の映像を見返すんですけれど、あらためてダンというキャラクターはすばらしいと思いました。特に最終回(第49話)は、自分が死ぬかもしれないというのに、我が身をかえりみずに地球のため侵略者と戦いぬく。本当に感動しますよ」と、最終回のダンについて言及。特撮ファンの間でも、最終回でダンがアンヌに「僕はウルトラセブンなんだよ」と告白するシーンは、永く語り継がれるべき名場面との高評価がなされている。

あれから50年が過ぎた現在でも、森次とひし美は『ウルトラセブン』劇中のダンとアンヌの雰囲気そのままに、気さくな言葉でやりとりをしている。森次は「50年経っても、僕らは当時といっしょで"アンヌとか"ダン"と呼び合っている。その方が、呼びやすいんだよね(笑)」と、いつまでもお互いに飾らない仲間同士であることを明かした。

50~60代の大人から幼い子どもまで、『ウルトラセブン』のファン層は実に幅広い。森次もひし美も、80年代以降はウルトラマンシリーズ関連のイベントなどに出演し、さまざまな世代のファンと接している。ひし美は「50年前よりも、今のほうがファンの人たちの熱気がすごい」と、大人になったファンが根強くウルトラセブンやアンヌのファンで居続けてくれることに驚きと感謝の意を示し、森次は「今でもウルトラセブンの新しいファンが増え続けているのが驚き。普通だったら、あんな番組あったねって忘れられるもんだけど、そんなことないですからね。あらためて作品の力と、凄さを感じます」と、50年の時を経てなお不滅の人気を誇る『ウルトラセブン』が、これからも末永く大勢の人たちに愛されることを願っていた。

秋田英夫
主に特撮ヒーロー作品や怪獣映画を扱う雑誌などで執筆。これまで『宇宙刑事大全』『宇宙刑事年代記』『メタルヒーロー最強戦士列伝』『ウルトラマン画報』『大人のウルトラマンシリーズ大図鑑』『ゴジラの常識』『仮面ライダー昭和最強伝説』『日本特撮技術大全』『東映スーパー戦隊大全』『ゴーグルV・ダイナマン・バイオマン大全』『鈴村健一・神谷浩史の仮面ラジレンジャー大百科』をはじめとする書籍・ムック・雑誌などに、関係者インタビューおよび作品研究記事を多数掲載