ワールドワイドで成長を続けるファーウェイだが、自社ブランドの個人向けスマートフォンをはじめとする、コンシューマービジネスの歴史は意外と浅い。初期の成長を支えたのは、一言でいえば堅実さ。これからは、堅実さを継続しつつ「攻め」が加わる。コンシューマー領域でマーケティングと販売の指揮をとるJim Xu氏に、日本メディアとのラウンドテーブルで話を聞いた。

近年、日本でもファーウェイ製のスマートフォンが存在感を高めている。2017年6月に発売されたSIMフリーの「P10」シリーズは、多くのMVNO事業者がいわゆる格安SIMと一緒に販売中だ。P10シリーズはミドルレンジからハイエンドクラスのスマートフォンだが、初期のファーウェイが作っていたのは、エントリー向けの安価な端末だった。ここ数年で世界的な躍進を果たした土台には、先述した堅実さがある。

Jim Xu氏(President, Marketing and Sales Service, Huawei Consumer Business Group)

―― ここのところ、ファーウェイのスマートフォンがとても魅力的になってきたように思います。描いてきた販売戦略、その結果についてどのようにお考えですか。

Jim Xu氏 : スマートフォンのメーカーとしては、私たちは新参者です。5年前、自社ブランドの製品をスタートするとき、「品質」を最重要課題にしました。具体的にいえば、良い端末を作ること、その品質を保証すること、販売する国々でアフターサービスを強化することです。ドイツのアワードに全メーカーの全製品を評価するものがあるのですが、ファーウェイ製品が14カ月連続で第1位になりました。日本ではKDDIさんから表彰されたこともあるんですよ。

また、Androidというプラットフォームの中では、差別化がとても大切です。ファーウェイの場合、デュアルレンズやデュアルSIM、ロングバッテリーライフなど、基本的なことをしっかりやることを心がけてきました。

―― 今後の販売戦略に変化はありますか。また、世界にはアップルやサムスンなど巨大なライバルがいると思いますが、どのように戦っていくのでしょうか。

Jim Xu氏 : ブランドが重要になってきます。「P9」ではライカと協業することで、カメラ機能の品質を格段にアップできました。また、AI対応のチップセット(編注:Kirin 970)を開発することで、高い技術力によって相手を超えることを目標にしました。

グローバルではSIMフリー端末が主流で、消費者から見ると「お金を出すに値する端末か」どうかです。繰り返しになりますが、カメラ品質のアップやバッテリーライフ、ソフトウェアパフォーマンスの向上などを図り、最終的に手ごろな価格で提供できるようになれば、グローバルでファーウェイの価値を出せるはずです。

―― 10年前のお話ですが、そのとき「BtoCビジネスはお金がかかるのでBtoB領域に専念する」とお聞きしたことを記憶しています。BtoCで成功するまでの苦労をお聞かせください。また、ファーウェイはエントリーからミドルローの製品で飛躍してきたと思いますが、これからハイエンド系にも伸ばすにあたって、戦略的な変化はあるのでしょうか。

Jim Xu氏 : 数あるスマホメーカーの中でも、ファーウェイはユニークな存在だと思っています。BtoBで培ったネットワークインフラと、コンシューマー向けのスマホを同時に手がけているからです。これはDNAになっています。アップルやサムスン、ソニーといったグローバル企業と比べて、一番の違いではないでしょうか。

10年前、ちょうど4Gネットワークを手がけていたときに、大きな問題にぶつかりました。それは、どうやって消費者にモバイルネットワークを使ってもらうか、ということです。ひとつの方策としてドングル式のデータカードをグローバルで発売したところ、とても多くの方々に買っていただけました。これは各国の通信キャリアを通じて販売した、BtoBの販路です。そしてもうすぐ5Gの時代がくるわけですが、やはり、いかに有効な端末を作ってネットワークに適合させるか。ファーウェイには通信技術の蓄積があり、業界内で先行もしています。このシナジーを発揮して世界をリードしていけるのでしょう。

未来に向けて、消費者には、音声、データ通信、VoLTE、ビッグデータ、ストレージ、ゲーム、動画などを使ってほしいと思います。良いネットワークインフラを作り、ネットワークに合わせた良い端末を作ることで、良いユーザー体験を届けられます。ここが、ファーウェイが差別化できる強みなのです。端末もネットワークインフラも、同じラボで研究、開発しています。このあとご覧になっていただければ、お分かりになるかと思います。

また、チップセットの分野でも、スマートフォンの技術、例えばCPU、GPU、画像処理、バテリーなどは、ネットワーク側の研究とも連携しています。ネットワーク研究の成果を端末で生かせるようになっているのです。これも、ライバルを超えるための強みであると考えています。

―― グローバルで注力しているマーケットと理由を教えてください。その中で、日本の位置付けと、日本のマーケットに期待することはありますか。

Jim Xu氏 : グローバルで販売されるスマホは14億台といわれ、中国、アメリカ、日本、欧州が大部分を占めます。さらに500ドル以上の端末は、これらの地域に集中しています。これら以外に人口の多い国、インドやインドネシアなどでは、ローエンド端末が主流です。注力マーケットの優先順位としては、ハイエンドが先にきます。

数年前、ファーウェイは方針を変えました。中国が一番大事だと位置付け、中国市場で生き残れるか。4年前の中国ではサムスンがトップシェアでしたが、そのときの40%ものシェが今では2%へ急落しています。ファーウェイのシェアは25%と、トップになることができました。

また、これまでの4年間、欧州にも投資を継続しています。結果、イタリア、スペイン、フィンランド、ポーランド、オーストリアといった国々でトップシェアとなり、大半の国で20%を超えました。2017年、欧州でのファーウェイのスマホ売り上げは、50億ドルを超えるのではないでしょうか。中国に続いて、欧州でも生き残れました。

日本市場については、これまでタブレットや固定系の端末を多く販売してきました。スマホはSIMフリーを主戦場にしていますが、日本は重要で戦略的な市場です。一部、とても良い業績を上げることができ、口コミでも良い評価をもらい、自信がつきました。最大のボリュームでもあるキャリアマーケットでも、あきらめずに取り組みを続けます。近いうちに成果が見られるのではないでしょうか。