動画制作の受託業務などを行うCrevoが今月から、動画制作プラットフォーム「Collet」をオープン化する。Colletは、Crevoが自社で動画制作する際に利用していた制作進行管理ツール。制作進行管理にあわせて、「ジョブボード」と呼ばれるクリエイターとのマッチング機能も用意することで、発注から動画のファイル共有、修正依頼など、一気通貫で動画制作のオンライン操作が可能になる。

同社の利用実績ベースでは実に制作関連業務にかかる時間が1/5程度にまで圧縮できたという。これまで自社の制作管理にColletを利用していたものの、クリエイターやクライアントからも好評だったことから、社外への開放を決めた。当初は30社の限定公開(クローズドβ版)で、利用料は月額のサブスクリプション契約となる。

またサービスリリースと同時に、伊藤忠テクノロジーベンチャーズなど4社から総額3.1億円の第三者割当増資を実施している。動画制作市場の見通しや同社の戦略など、Crevo 代表取締役の柴田 憲佑氏に話を聞いた。

クリエイティブな動画を誰もが広告に使える時代へ

視聴率の低下などからテレビ動画制作のニーズが伸び悩む一方で、オンライン動画広告市場はスケールし続けている。オンラインビデオ総研/デジタルインファクトの調査によれば、同市場は2016年に842億円であったものが、2022年には2918億円まで拡大する見込みだ。また、Crevoの調査では動画制作市場全体の市場規模がおよそ5000億円であり、テレビCMが1/3、そしてオンライン動画オンライン動画も同等にまで成長する見込みだという。

その一方で、動画制作会社の多くは「自社にクリエイターを抱えており、安定的な動画制作ができる反面、自社人材に閉じてしまうため作り上げる動画表現に限りがある」(柴田氏)。方やCrevoは、約100カ国、3000名のクリエイターが登録しており、「およそ半数が海外のクリエイター」と柴田氏は語る。

「創業当時から『日本を元気にしていきたい』という想いがあるが、その一つに『世界中の人材をどう有効活用していくか』に取り組みたいと考えていた。Colletは当初、国内クリエイター限定だが、将来的には自社受注以外の海外リソースとのマッチングも検討していきたい」(柴田氏)

ジョブボードでは、フリーランスなどのクリエイターを直接、過去の作品データベースなどを閲覧しながら探すこともできる

もちろん、高品質な動画制作には一定のコストがかかる。Web動画コンテンツが多い同社の制作実績ベースでも、安価なもので数十万円、高いもので数百万円となる。ただ柴田氏は、「(Colletで)オペレーションコストを低減すれば、高品質な動画の低価格化、大量制作が可能になる」と自信を見せる。

700社のクライアント実績は大手企業が数多く並ぶが、柴田氏は広告・宣伝費による動画制作ではなく事業部の予算による動画制作が多いと話す。つまり大企業であっても、事業部予算で投下できるコストは限られるため、より中小規模の企業における予算感に近い。そこに動画市場の裾野が拡大する下地があると柴田氏は読む。

「漫画の動画化からブランディング、イベント動画など、限られた予算で高品質な動画を提供してきた。通信環境の変化やデバイスの進化によって、スマートフォンからサイネージまで、さまざまなシーンで動画が求められるようになった。大手プロダクションのハイエンドな動画コンテンツに対して、私たちはミドルレンジの動画を広くカバーできると考えている」(柴田氏)

これまではキャプチャしたシーンに赤入れしていたが、Colletでは動画自体に赤入れできるため、認識の齟齬が起きづらく、なおかつクラウドサービスのメリットを活かした制作スピードの向上が期待できる

ジョブボードはクリエイターが掲載案件に対して応募することも可能。登録クリエイターの競争によって、コストとクオリティをリバランスできる

当初はWeb広告代理店を中心にサービスを広げ、2018年度までに150社程度の契約を目指す。現時点ではWeb版のみで、ディレクターなどが撮影現場などで使いやすいアプリ版の開発などが現状の課題だという。また柴田氏は今後、ジョブボードにおけるクリエイターとのマッチング強化を進め、登録ユーザーの過去作品の見える化、AIによる依頼内容とクリエイターのレコメンデーションを実装したいと話す。

「Webの動画市場は、Webサイト構築の世界が辿ってきた道と似ていると思う。2003年頃に開発会社が乱立し、その後2010年頃にWordpressやDreamweaverなどの制作ツールによって市場環境が整った。ここまで簡単にWebサイトが作れるようになったように、フレームワークが整えば動画制作でも同じことが起こりうると感じている。その市場を、制作管理というポイントでデファクトスタンダードになりたい」(柴田氏)