【レポート】

"2.5Dプリンタ"で「質感」を印刷 - ものづくりの試作コストを低減

ものづくりの現場で3Dプリンタが活用されるようになって久しいが、カシオ計算機は「3D(立体)」ではなく「2.5D」のプリントを可能にする新たな製品を開発した。それが2.5Dプリンタ「mofrel(モフレル)」だ。

立体ではなく、半立体とも取れるようなネーミングのこのプリンタで、生産現場にどんなメリットがもたらされるのだろうか。発売を前に、その仕組みや開発の狙いについて、同製品の開発者に話を聞いた。

2.5Dプリンタ「Mofrel(モフレル)」。外観は、パンチングメタルや金属製の脚などでデザインの現場などにもマッチするような配慮がされている

「Mofrel」では、専用の「デジタルシート」に加工を施すことで、用途に応じた凹凸や色を付与する。それによって視覚情報だけでなく「触感」を作り出すことができる。畳の目から革目、ステッチなども「印刷」できることから、同社ではデザイン試作での活用を主な利用領域としてみている。

デザイン試作では、革や木材、タイルなど、実際に用いる素材を取り寄せて検討を行うため、材料費がかかる。また、既存の製品からイメージに近いものを探す手間がかかることや、モノを介する工程のため遠隔地の協業先との情報共有が難しいこともコストと言える。革目の細かな差異や、パンチングの数ミリ単位のピッチの違いなどを、取り寄せや加工の注文などをすることなく、凹凸で再現して検討できるというのが利点だ。

同製品を担当するカシオ計算機 デジタル絵画事業部 第二開発室 黒澤諭 室長は、「3Dプリンタはカタチの試作を促進しましたが、この2.5Dプリンタが3Dプリンタでの再現が難しい表面の質感の試作を行えるようにすることで、試作コストがさらに低減すると考えている」と語った。

専用の「デジタルシート」(左)を同機に通して加工していく。まずは白黒の図版を印刷し、凹凸をつけたいところを指定する

印刷が終わったら、それをもう片方のスロットに通して近赤外線を照射すると、黒の印刷が施されたところが隆起する

仕組みとしては、印刷対象となる「デジタルシート」に熱で膨張するマイクロパウダーが含まれていて、近赤外線を加えると、あらかじめ白黒印刷で指定した部分だけが隆起する。隆起の指定を行う「バンプデータ」は、専用ソフトなど作るのではなく、デザイン現場ではほぼインフラのようになっている画像処理ソフト「Photoshop」のプラグインとして提供する。

表面のフィルムをはがすと、隆起指示に使った白黒の印字が剥がれる

最後に、隆起したシートをカラー印刷にかける

その後、シート表面のフィルムを剥がして表面をまっさらな状態にし、上からカラー印刷を行うことで、フルカラーの手触りがあるシートが完成する。

凹凸と色が両立するシートが完成した

同製品の源流には、視覚障害者向けの点字印刷技術がある。凹凸だけでなくカラー印刷を加えることで、全盲の人から弱視の人まで利用できる点字を実現しようと技術開発を行ったところ、車のシートの試作にも使えるのでは、と外部から意見を受けたのが、2.5Dプリンタとして展開するきっかけとなった。

また、「デジタルシート」に含まれるマイクロパウダーの大きさは15ミクロン程度と微細で細かな目地の再現も行えるが、「単に細かければいいものではない」ということで、密度計算には苦心したとのことだ。

mofrelで印刷した「畳」。い草の目が微細に盛り上がっており、手触りも本物に近い

革張りのシートなどの検討を想定したサンプルでは、凹凸で縫い目も表現されている

現在、発売を前にいくつかの企業に貸し出し、レビュー協力を仰いでいる段階で、自動車メーカーをはじめ、自動車の内装を手がけるメーカー、電子機器や建材メーカー、アパレルメーカーで利用されている。また、特殊印刷のひとつとして、印刷会社などでの利用も視野に入れている。

すでにレビュー利用をしている企業からは、A3/A4サイズ展開となっているシートの判型について、より大きい範囲をカバーできるよう、A0サイズを希望する声があったという。また、デザイン検討の際には曲面の物体に貼り付けて使いたいというニーズもあり、それを満たすための伸縮性のあるポリオレフィン素材のシートを開発中だ。

曲面を持つ物体に貼り付けて使うシートのサンプル(開発中の物)

これまでにないカテゴリの製品であり目を惹くが、「これまでにない」が故に、各企業の既存のワークフローに組み込むのが難しいという課題も抱える。この部分については、地道に拡販を行うことで、業界ごとに利便性をアピールしていければとのことだった。まだ確定ではないが、販売想定価格は500万円としている。

なお、「Mofrel」は2018年2月発売予定。発売に先んじて、10月3日~6日にかけて行われるCPS/IoTカンファレンス「CEATEC JAPAN 2017」に出展される。

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