【インタビュー】

専業主婦じゃダメですか? - 子育てに専念する選択肢があっていい

1 自分にとって最も大きな仕事は「子育て」だった

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薄井シンシアさん

キャリアを積むには、子育てしながらも、働き続けなければいけない……そんな考え方が一般的となっているいま、専業主婦を経て、40代後半からキャリアの道を花開かせている女性がいる。

ANAインターコンチネンタルホテル東京で営業開発担当の副支配人を務め、現在はシャングリラホテル東京でパブリックディレクターとして活躍している薄井シンシアさんだ。

薄井さんは17年間、専業主婦として1人の娘を育て上げた後、47歳で仕事復帰。カフェテリアの"給食のおばちゃん"から、電話受付のアルバイトを経て、勤続3年でホテルの営業副支配人となった。

「それぞれが自分に合わせて『私は働く』『私は専業主婦になる』という選択が余裕を持ってできるほど、社会にはまだ多様なオプションは用意されてはいない」と語る薄井さん。薄井さんにとっての仕事、子育てとは? 30代の子育て女性に向けてメッセージをいただいた。

「一番大事」と思った子育てに全力を注いだ日々

――結婚後も精力的にお仕事を続けていらっしゃったという薄井さん。当初は「子どもができても仕事を続ける」と考えられていたそうですが、なぜ一転、専業主婦になる決断をされたのですか?

本能的なものかな。娘がうまれたとき、瞬間的にこの子を育てることが私にとって一番大事で、子育てがうまくいかなかったら、私、一生自分を許せないと思ったんです。

もちろん、覚悟して専業主婦になると決めたときには、すごく悩みました。仕事も大好きでしたし、周囲や両親からは「専業主婦になるのはもったいない」と言われました。決断してからも、モヤモヤした気持ちはありましたよ。仕事をしている友達と会うたびに、みんな輝いているように見えて、「何で私だけが」ってやっぱり思いました。

ただそんな風に思い続けていると、後悔する人生になってしまいますよね。だからその時は、「私の仕事は子育てなのだ、これを一生懸命やろう」と自分に言い聞かせました。

――少しだけ仕事を続けてみようという選択肢もなかったのでしょうか?

ある意味で、私は不器用だと思います。いま仕事をしていて思うのですが、改めて、ワーキングマザーって自分にはできなかったことです。本当にみんなよくやってるなと思います。頭が下がりますし、すごく尊敬しています。

人間って選択肢があればあるほど良いといいますが、逆に選択肢があることは1つの荷物なんですよ。選択肢がある分、その選択肢を吟味して、決断しなければならない。

私の場合はいっぱいある選択肢に、自分の中でプライオリティを付けました。私は「これが一番大事」と思ったことに100%、200%の力をもって集中してやる性格なんです。

――決断された後、先のことを考えて不安になることはなかったのですか?

もちろんありましたよ。子育てが終わった後に就職するのは難しいだろうなって、その都度不安でした。娘が大学に入って家を出たら、私その後どうしようって。ただ、私は子育てにプライオリティを置くと覚悟していたからね。

――それくらい、人生において子育てにかける時間の優先度が高かったということなんですね

そう、すごく覚悟しました。その先にたとえキャリアがなかったとしても、自分にとって一番大事なことができればいいじゃない、と。振り返ってみると、子育てに専念した17年間は人生の中で一番幸せな時間です。もし神様が「もう一度やってもいいよ」という期間をくれるとしたら、やはりこの17年間を繰り返したい。だからいま、自分にとって最も大きな仕事は終わっていると思っています。

「自分にとって最も大きな仕事は終わった」と薄井さん

いろんな生き方があっていい

――専業主婦になりたての頃の薄井さんのように、子育てとキャリアの間で揺れている女性は多いと思います。今は専業主婦になるという選択肢が選びづらいと感じる人も多い印象です

日本人って、同じ年齢で大学を卒業して、就職して、結婚して……みんな同じ時期に同じことをやりますよね。そうすると、自分だけ違うことをやると不安になる。

私は別に、私と同じようにみんなに専業主婦になってとは思っていません。人間はみんな違うんだから、いろんな生き方があってもいいんじゃないの? と言っているんですよ。30年前、女性は専業主婦になるというのが主流でした。それが一転、いまはワーキングマザーになりなさい、となっている。何で? それって誰が決めてるの? 何でみんなが同じことをしなくてはならないの? この風潮が、私は嫌なんです。

世の中には働きたい人もいれば、子育てに専念したい人だっている。その人たちを罰しなくてもいいじゃない。その人たちに、どうぞやってください、そして子育てが終わったら戻りたいときにはチャンスを与えますからね、ということでいいじゃないですか。後は、それぞれのがんばり次第でしょ。

今年58歳になりましたが、あの時あれだけ不安だったけれど、振り返ってみれば、結婚もした、子どももいる、キャリアもある、全部手に入れているんです。ただ、全部同時じゃないだけ。ちゃんとプライオリティをつけていましたから。

「専業主婦になっても大丈夫」と娘に示したかった

――子育てを終えたいま、キャリアを積まれている理由は何ですか?

娘にとって一番身近なロールモデルとして、「専業主婦になっても大丈夫」と勇気を与えたかったんです。

私の娘は、世界を舞台に活躍する力を持っている人だと思います。ただ高校生の時に「世の中のどんな仕事もやる自信があるけれど、母親になることには自信がない」と言いました。私のような母親になりたいけれど、専業主婦になるとキャリアは諦めなければならないと考えていたみたいです。

「私の子育てを気に入ってくれた」というのはすごくうれしかった。でもその反面、彼女が専業主婦を選ぶことでキャリアを諦めてほしくなかった。だから、「専業主婦になっても大丈夫だよ、ママはあなたほど優秀ではないけれど、仕事に復帰しているからね」というのを見せたかったんです。

ただ、いまは少し考えが変わっています。仕事をしながらキャリアを積んで分かってきたのは「娘を育てたからいまの私がある」ということ。17年間を娘のために犠牲にしたのではなくて、この17年間があったからこそ、元々なかった可能性がいま花開いている。あなたのおかげで、私これだけできるのよと、いまは娘に示しています。

私は決して特別な存在ではない

――ただ、薄井さんはすごく特別な存在にも思えます。誰もが仕事に復帰して、キャリアを積んでいけるとも思えないのですが……

それを言われるのが、すごく嫌なんです。私が過ごしてきた17年間は本当に平凡な17年間。その当時の私の周りにいる専業主婦も、みんな同じことをやってきたんですよ。公園に行って子どもを遊ばせたり、家事をこなしたり……。みんなと同じことをやってきた私ができているのに、なぜ特別に見られなくてはならないの?

意識していないだけで、子育てを通して専業主婦はキャリアにつながる多くの経験を積んでいます。ただ、社会的にはすごく馬鹿にされているのよ。お金をうみだしていないから、そして、専業主婦の能力を測る制度がないからね。評価が難しいんです。

だから、専業主婦が努力して「できるんだ」と見せればいい。別に専業主婦自体を評価しろとは言いません。その代わり、チャンスを与えてほしい。専業主婦にチャンスを与えて、そのがんばり具合で評価してほしいと思っています。

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目次
(1) 自分にとって最も大きな仕事は「子育て」だった
(2) 自分の中のプライオリティを大切に
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