【レポート】

Hot Chips 29 - IBMの恐竜「z14メインフレーム」

Hot Chips 29において、IBMは新メインフレーム「z14」について発表を行った。メインフレームなんて絶滅寸前の恐竜と思われているかも知れないが、メインフレームは、進化を続ける最強のプロセサであり、ビジネスの根幹を支える存在であるという。

z14メインフレームについて発表するIBMのChristian Jacobi氏

金融機関ではIBMメインフレームへの信頼は絶大なものがある。筆者の理解では、VISAやMaster Cardなどの大手クレジットカード会社もIBMメインフレームを使っている。したがって、メインフレームは1日に300億件のトランザクションを処理し、年間6兆ドルのクレジットカードの支払いを処理しているという。

メインフレームは、毎日、300億件のビジネストランザクションを処理し、年間6兆ドルのクレジットカードの支払いを処理している (このレポートの図は、Hot Chips 29におけるIBMのJabcobi氏の発表スライドのコピーである)

IBMのメインフレームは、System 360の発表された1964年から50年を超える歴史がある。最近の歴史を振り返ると、2008年のz10からおおよそ2年ごとに新しい機種を発表し続けている。今回のHot Chips 29で発表されたz14は14nmプロセスで製造されるプロセサで、データの完全暗号化や処理を停止させないガーベッジコレクションなどの新しい機能をサポートしている。

IBM Zプロセサの歴史。今回発表のz14は14nmプロセスで作られ、データの完全暗号化や処理を停止させないガーベッジコレクションなどの新しい機能をサポートしている

「ドロワ(引き出し)」と呼ばれるシャーシには、6個のCPチップと1個のSCチップが入っている。CPチップは、10個のプロセサコアを集積するチップであり、SCチップは4次キャッシュを搭載し、6個のCPチップ間を接続する。

そして、6個のSCチップは水冷のコールドプレートで冷却されている。なお、SCチップは空冷である。

z14ドロワには6個のCPチップと1個のSCチップが搭載されている。6個のCPチップは、水冷のコールドプレートで冷却されている

z14は、SCチップから6個のCPチップがつながるという構造になっている。そして、SCチップは他のSCチップへの接続ポートを持っており、最大4個のSCチップを相互接続して24CPチップ(240CPUコア)のシステムを構成する。

右側の写真はフロントパネルを開けた状態のキャビネットの写真で、右側のキャビネットの中央付近に4段積み重なっているのが4つのドロワである。その下は電源、上はPCIeのIOドロワである。

CPチップとSCチップは14nmプロセスで製造され、メタル配線は17層という豪華プロセスである。CPチップは10コアと128MBのL3キャッシュを搭載し、チップ面積は696mm2である。SCチップはインタコネクトと672MBのL4キャッシュを搭載し、チップ面積はCPチップと同じ696mm2となっている。

最大システムでは、24個のCPチップを持ち、32TBのメインメモリを搭載できる。IOドロアに対しては40本のPCIe3.0 x16接続があり、最大320枚のIOカードを接続できる。

6個のCPチップと1個のSCチップを搭載するドロアを4ドロアまで接続でき、最大24CP(240コア)のシステムを構成できる。CP、SCチップともに14nmプロセスで作られ、チップサイズはどちらも696mm2

CPチップのクロックは5.2GHzで、汎用プロセサとしては最速クラスのクロックを誇っている。チップ写真から分かるように、左右に5個ずつのプロセサコアがあり、中央部分に128MBのL3キャッシュが配置されている。

アーキテクチャとして特徴的なのは、Javaのガーベッジコレクションをメインの処理を止めないで実行できるPauselessのガーベッジコレクションを実現している点と、暗号化アクセラレータを強化し、すべてのデータを暗号化した状態で扱うPervasive暗号化を行い、処理中のメモリデータなどが盗まれても内容は分からないというセキュリティを実現している点である。

z14のCPチップの写真と特徴。CPUコアのクロックは5.2GHzと汎用プロセサでは最高速級となる

面白いのが順序を保存する圧縮である。ストレージやメモリを節約するデータ圧縮を行うと、普通はデータはめちゃくちゃになってしまうが、z14では<、=、>という大小関係を保存する圧縮機能がある。もちろん、圧縮率は下がるが、その低下はわずかであるという。

この圧縮は、A<Bであれば、compress(A)<compress(B)が成立するということが保証されるので、圧縮したデータのままで大小関係をみてデータのソートを行うというようなことができる。

その外にも、お金の計算には不可欠の10進の浮動小数点演算とか、RSA暗号化やECCの計算に便利な長いビット数の数値の乗算とか、事務計算に便利なレジスタ間のBCD演算など、他のプロセサが持っていない多くの機能がハードウェアで実装されている。

このように、z14はパワフルな無敵の恐竜のようなプロセサであるが、IntelのXeonも機能、信頼度が向上してきており、レガシーの基幹サーバをx86で置き換えるメーカーが相次いでいる。最近、OracleがSPARCハードウェアのエンジニアを大量解雇し、x86上のSPARCエミュレータの使用を推奨するという動きが出ており、恐竜達には厳しい環境になっているのは、技術的には残念である。

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