生産性向上については、前ページで触れたように、異なる仕様のPCを1台ずつ生産できる混流での組立ラインを実現している点も見逃せない。

現在生産ラインでは、6本のPC生産ラインが混流生産できるが、3年前に、デスクトップPCとPCサーバーの生産ラインを1つのフロアに統合。3本設置されているPCサーバーの生産ラインでも、デスクトップPCの生産を行えるようにしている。これにより、PCやPCサーバーの需要変動にあわせて、生産品目を変動させるなど、柔軟性を持った生産体制を実現しているのだ。

すでに、Windows XPの延長サポート終了にあわせて導入されたPCがリプレースに入る「2巡目」需要が始まっており、これが法人向けPCの出荷増につながっている。こうした需要変動にも対応できる体制が構築されているというわけだ。

富士通アイソテックでは、トヨタ生産方式をベースにした独自のFJPS(Fujitsu Production System)を展開。これにより、生産革新活動を長年にわたって続けてきた経緯がある。これまでにも、PCの製造手番の大幅な削減などの成果をあげているほか、従来は4本だったサーバーの生産ラインを3本に減らしながらも、同じ数量のサーバーを生産するといった効率化を図っている。

そのほか、2016年度から導入した機能型組織制度により、生産品目ごとに分かれていたために発生した重複業務を統合。統一した組織体制で運営を開始したことで、それぞれの生産品目ごとに蓄積されていた品質保証や生産管理のノウハウを共有でき、全体の品質向上や管理手法の底上げにもつながっているという。

付加価値PCが増加、現場に課題も

富士通のPC事業を担当する富士通クライアントコンピューティングでは、2016年2月の分社化以降、4辺狭額フレームを採用したデスクトップPCを投入するなど、付加価値路線を推進している。富士通ブランドのPCの特徴を訴えることができるようになる一方で、付加価値が高まることで、生産現場では作業が難しくなっているのも事実だ。

4辺狭額フレームを採用したデスクトップPC。店頭モデルは「ESPRIMO FH77/B1」という名称で展開する

富士通アイソテックの岩渕社長は、「富士通のPC事業が分社化して以降、付加価値型製品のラインアップが増加。デスクトップPC市場においても、付加価値路線を打ち出している。狭額縁のデスクトップPCが高い人気を誇っているのはその表れである」と前置きしながら、「これによって、生産ラインにおける組立工数が増加したり、これまで以上に高い組立精度が求められたりするようになっている。こうした課題を解決するために、開発部門と密に連携しながら、生産しやすい環境づくりに取り組んでいる」とする。

また、法人向けPCにおいては、生産時点でユーザー企業固有の設定やソフトウェアのインストールを行なうカスタムメイドプラスサービスを用意しており、富士通アイソテックでは、こうしたサービスにも柔軟に対応できる体制としている。事業部門との連携により、サービスメニューの広がりにも対応していく考えだ。

AIの導入も視野、品質管理に活用

また、自動化への取り組みにも余念がない。

デスクトップPCやPCサーバーの組立ラインでは、仕様が異なる製品を1台ずつ生産する混流ラインとなっているため、大量生産に適した自動化が行いにくい環境にあり、むしろ、治具を活用した「からくり改善」の方が効果的だ。だが、その一方で、富士通アイソテックの自主事業に位置づけられるプリンタの生産ラインにおいては、生産品目ごとの仕様の変更が少ないため、自動化に向けた取り組みがスタートしている。

また、プリンタの場合は、富士通アイソテックにおいて、設計および開発を行っていることから、生産現場と直結した形で製品開発が進められる点も、自動化への取り組みはプラスの要素になる。現時点では、まだ試験的な要素が強いが、プリンタヘッドの組立工程や、筐体の組立工程において、自動化に向けた取り組みが開始されており、さらに、1階に設置された部品倉庫から組立ラインへの部品供給においても自動化を視野に入れているという。

もちろんPCの組立ラインにおいて、自動化をあきらめているわけではない。検査工程では、自動検査装置を導入し、品質向上などにつなげている。

また、あわせて生産ラインにおけるAIの活用も検討しており、今後、生産ラインでの品質管理などに活用する計画だ。「生産ラインから得られる様々な情報を活用することで、システムトラブルを未然に防ぐといった応用を期待している」という。

AIの活用については、富士通のAI開発組織との連携を進めており、製造現場におけるAIの活用の可能性を追求。富士通アイソテックでも導入を検討していくことになる。