A10ネットワークスはこのほど、年次イベント「A10 Forum 2017」を開催し、A10 Networksの創業者兼CEOであるリー・チェン氏が来日し、基調講演を行った。同社の製品ロードマップは今後、どう展開されるのか。本レポートでは、同イベントの基調講演の模様をお届けする。

ここ1年、特化した分野でパートナーシップを拡大

A10ネットワークス 日本法人代表 兼 社長 米国本社バイスプレジデント 川口亨氏

基調講演は、A10ネットワークス 日本法人代表 兼 社長 米国本社バイスプレジデントの川口亨氏の話からスタートした。同氏は国内ビジネスの概況を説明した。

川口氏は、国内ビジネスが2014年以来、73%超の成長を果たすとともに、2.5倍の人員を増員するなど、順調に推移していることをアピールした。またこの1年で、SCSK、富士通、NEC、デジタルアーツとパートナーシップが拡大したという。

2017年から2018年にかけて注力する分野としては、「アプリケーション・デリバリー」「マルチクラウド」「セキュリティ」が紹介された。あわせて、産業別に求められるソリューションを見極め、それぞれ展開していく。

分野別の注力ソリューション

最後に、川口氏は今年7月に新オフィスに移転したことに触れた。新オフィスは六本木となるが、「今まで都内の一等地に求める条件を満たすビルがなかった」という。「今回、ラボ環境を拡張した。ラボでは、製品・品質の検証、お客さまの環境再現、パートナーとソリューション開発などを行う。国内サポート体制を拡大し、お客さまのビジネスをサポートしていく」

セキュリティとクラウドへの投資を倍増

A10 Networks 創業者兼CEO リー・チェン氏

川口氏に続いて、リー・チェン氏が登壇した。チェン氏は川口氏の話を引き継ぎ、「アプリケーション・デリバリー」「マルチクラウド」「セキュリティ」に対する投資について語った。

同社の売上の内訳は、70%がアプリケーション・デリバリー、26%がセキュリティとなっているが、顧客が従来のインフラ環境からクラウドに移行していることから、今後は、クラウドとセキュリティへの投資を倍増するという。あわせて、顧客のマルチクラウドへの移行をサポートしていく。

チェン氏は中でもセキュリティの売上が伸びているとして、中核となるセキュリティ製品「Thunder TPS」「Thunder SSLi」「Thunder CFW」を紹介した。「Thunder TPS」は次世代型のDDoS防御アプライアンス、「Thunder SSLi」は暗号化されたトラフィックを可視化するアプライアンス、「Thunder CFW」は集約型セキュリティだ。同氏は「今後、DDoS製品ベンダーとしてNo.1になる」と宣言した。

A10のセキュリティソリューション

「Thunder TPS」は、「検知」「緩和」「マネジメント」の3つのコンポーネントによって、DDoS攻撃を防御する。具体的には、「A10 Detector」によって攻撃を検知し、「A10 Mitigator」によって攻撃を防御する。さらに、集中管理システム「aGalaxy」と連携することで、コンフィグレーションやポリシーの管理を実現する。また、A10 DDoSクラウドスクライビングセンターとの連携機能も提供する。これらの国内における提供時期は未定だ。

「Thunder TPS」による攻撃防御の仕組み

続けて、チェン氏は新たなエントリーレベルのアプリケーション配信コントローラ「Thunder ADC」として、「Thunder 940」「Thunder 1040」、金融機関における高頻度取引 (HFT) の遅延軽減とセキュリティを強化する低遅延ソリューション「Thunder 3745」を紹介した。

Thunder 1040は、同価格帯の他社製品と比較して最大2倍のSSL処理性能を引き出す「第3世代SSL/TLSハードウェア」を選択することができる。Thunder 3745は、FIX(Financial-Information-eXchange)プロトコルなどの業界に特化したプロトコルで運用されているような低遅延、低ジッター (揺らぎ)が重要視される電子証券取引などのアプリケーションに適している。

最後に、チェン氏はクラウド戦略を説明した。同社は、「セキュアアプリケーションサービス」「クラウド/SDN/NFVのエコシステム・インテグレーション」「可視化&自動化」「柔軟な選択肢の提供」を柱に、クラウドビジネスに取り組む。

「セキュアアプリケーションサービス」は、aGalaxyとHarmony Controllerをベースに、「Thunder TPS」「Thunder SSLi」「Thunder CFW」を連携させることで、セキュアなアプリケーションのマネジメントを自動化する。同サービスは第4四半期に発表される予定。

「セキュアアプリケーションサービス」の概要

エコシステムについては、VMwareやCisco Systemsと協業して、両社の製品やサービスとのオーケストレーションを進めていくという。

A10のクラウドポートフォリオ

今や、サイバー攻撃の防御はネットワークの監視だけでは対処しきれなくなっており、同社のアプリケーション管理に関するノウハウは有用と思われる。今後、発表予定の製品に期待したい。