iPhone 8の進化の中で、ワイヤレス充電もまた、新たなエコシステムやライフスタイルに影響しうる要素だ。ワイヤレス充電自体は以前からスマートフォンで採用されてきたが、iPhoneが業界の標準規格であるQiを採用したことは、ワイヤレス充電のアクセサリや、これに取り組む様々な企業にとって、非常に大きなニュースとなる。

Mophieのワイヤレス充電器「Wireless Charging Base」。ケースのままiPhoneを上に載せれば、そのまま充電が開始される。非常にシンプルな使い勝手だ

iPhone 8は、Qiに対応するワイヤレス充電機を利用できる。iPhoneの発表イベントで紹介されたMophieのWireless Charging Baseで試してみると、ケースを装着していても、ただiPhoneを乗せるだけで充電が始まる。今まではLightningケーブルを差し込まなければならず、iPhoneを持ち出すときには抜かなければならなかった。

ちょっとした手間だが、1日に5回セットは強要されるルーティンがなくなることは、インパクトが大きい。また使っていないケーブルを垂らしておく必要もなくなるため、デスクやベッドサイドをスッキリと整理することもできるようになる。

個人的に便利だと思ったのは、充電しながら音楽を聴いたりビデオが見られるようになったことだ。iPhone 7以降、ヘッドフォン端子が廃止されたため、Lightning端子は充電とヘッドフォンを排他利用せざるを得なかった。ワイヤレス充電を用いれば、充電しながらでもLightning端子にケーブルを差し込むことができる。オフィスで音楽を聴いたり、夜寝る前に充電しながらヘッドフォンで音楽を楽しむことができるようになり、Lightining端子の取り合いの問題が1つ解決した。

これで、人の行動も変わるかもしれない。

数日間のレビュー期間の中であっても、生活空間の中での明確な「スマートフォンの場所」ができるということは、充電の手軽さとは裏腹に、筆者にとってスマートフォンから離れる時間を演出してくれることにもなった。

Apple Watch Series 3がセルラーに対応したことも手伝って、ちょっとした外出をiPhoneなしで、という場面が何度も訪れたからだ。

ワイヤレス充電の速度は、Appleによると、付属の充電器と同じ程度だとしている。そのため、バッテリー容量が小さく、より短い時間で多くのパーセンテージを回復することができるiPhone 8の方が、ワイヤレス充電のメリットが大きいと感じた。

今後、iPhoneがワイヤレス充電に対応したことで、カフェや空港などの公共空間でのワイヤレス充電インフラが急速に整っていくことが予測できる。iPhone 8は、普及していくインフラを最大限に利用し、モバイルバッテリーに頼らない新しい充電のエコシステムを享受することができるだろう。