感覚を数値化する

加地氏は「本当に役立つスポーツデバイスは何か」を考えていた。行き着いた答えは、"パフォーマンスを上げる"という価値の提供だった。ファッションとしてのデバイスではなく、スポーツのパフォーマンスを上げるデバイスだ。

コンセプトを見直している最中、目に入ったのが4年前のCESで展示されていたゲーム用のモーションキャプチャだった。それは、9軸のセンサーをワイヤーでつないでゲーム用のモーションキャプチャをするというもの。それを目にした加地氏は、自身の体験を結びつけ、モーションキャプチャを取り込みたいと考えた。

先にも述べたとおり、加地氏は自転車競技に取り組んでいる。ある時、加地氏は当時のコーチからペダルを踏み込むタイミングがズレていると指摘されたという。

しかし、それは感覚的なもの。「12時のタイミングで踏み込んで」と目安を言われても、受け取るほうは自分のズレに気づかない。コーチと対面で教えを受けている時間はまだいいが、翌日になれば、修正した自分の動きが不確かになってしまう。結果的に自分が教えられたとおり正しいことができているのか、わからなくなってしまう。

モーションキャプチャは、こうした問題を解決する。センサーで読み取り、数値化すれば、何が正しい動きなのかが見えてくるはずだ。自転車も、ランニングも、ゴルフも、水泳も、モーションキャプチャで動きを数値化すれば、感覚に頼らないトレーニングが可能になる。

それだけではない。人間はなぜスポーツで体を痛めるのか。マラソンで、なぜ足が痛くなるのか。長時間、自転車に乗ると腰が痛くなる人がいるのは、どうしてなのか。筋肉が足りないのか、フォームが悪いのか。原因を数値化して科学的に測定することで、見えてくるものもあるはずだ。

CESでの展示を見た翌週、フォックスコンにスマートウォッチからモーションセンサーの開発に切り替えることを伝えた。こうして生まれたのがワイヤレスモーションセンサーを活用した「TYPE-R」だ。

TYPE-R(提供:LEOMO)

TYPE-Rはスポーツのあり方を変える。日常を対象にするのは、スポーツで成功してからでもいい――。そう考えた加地氏はまず、自身とかかわりの深い自転車向けにビジネスを展開していくこととなった。