【インタビュー】

黒沢清監督、デジタル全盛の時代で実写映像の力を語る「猥雑さ、泥臭さといったものは、本当に豊かなもの」

1 東出昌大の怪演――うちが先のはず(笑)

渡邊玲子
  • <<
  • <

1/2

9月18日よりWOWOWプライムにてスタートするドラマ『予兆 散歩する侵略者』(毎週月曜  24:00~全5話・1話のみ無料放送 WOWOWメンバーズオンデマンドにて9月7日より先行配信。毎週木曜 24:00~ 全5話)を手がけた黒沢清監督にインタビュー。劇作家・前川知大率いる劇団「イキウメ」の舞台を映画化した『散歩する侵略者』のアナザーストーリーを、映画版とは異なる設定、キャストでスピンオフドラマとして製作。映画版とは一味違う、新たな侵略サスペンスだ。ドラマ版ならではの見どころや、製作の舞台裏について話を聞いた。

ドラマ『予兆 散歩する侵略者』

『予兆 散歩する侵略者』ストーリー

山際悦子(夏帆)は、同僚の浅川みゆき(岸井ゆきの)から「家に幽霊がいる」と告白され自宅に行くが、そこには実の父親がいるだけだった。みゆきの精神状態を心配した悦子は、夫・辰雄(染谷将太)の務める病院の心療内科へみゆきを連れていく。診断の結果、みゆきは「家族」という≪概念≫が欠落していることがわかる。帰宅した悦子は、辰雄に病院で紹介された新任の外科医・真壁司郎(東出昌大)に違和感を抱いたことを話すが、辰雄からは素っ気ない返事のみ。常に真壁と行動をともにする辰雄が精神的に追い詰められていく様子に、悦子は得体の知れない不安を抱くようになる。ある日、悦子は病院で辰雄と一緒にいた真壁から「地球を侵略しに来た」と告げられる。冗談とも本気ともつかない告白に、自分の身の周りで次々に起こる異変に、真壁が関与しているのではないかと疑い始める。

黒沢清(くろさわ きよし)
1955年生まれ。兵庫県出身。立教大学在学中より8ミリ映画を撮り始め『神田川淫乱戦争』(1983年)で商業映画デビュー。その後、『CURE』(97年)で世界的な注目を集め、『回路』(2000年)では、第54回カンヌ国際映画祭国際批評家連盟賞を受賞。ほか、代表作に『トウキョウソナタ』(08年)、『Seventh Code』(13年)、『岸辺の旅』(14年)、『ダゲレオタイプの女』(16年)などがある。

――ドラマ『予兆 散歩する侵略者』はどのような経緯で誕生したんでしょうか?

映画の準備が進んでいる過程で「スピンオフドラマをやりませんか」と言われまして。まったく予測していなかったので、正直「えぇ~!?」って戸惑いました。どうしたらよいのかわからぬままスタートしたんですが、「ああでもない」「こうでもない」とやっているうちに、メチャクチャ面白くなってきて。最終的には、ものすごく楽しかったですね。こんなにいろんな発想が浮かぶとは思わなかったです。

――映画版は、スリルあり、ユーモアあり、豪快なアクションあり、と、かなり盛り沢山なエンターテインメント作品という印象を受けましたが、今回のドラマ版は登場人物が少ないせいか、普通の日常が侵略されている感じが、より濃密に描かれています。監督ご自身では、映画版とドラマ版のテイストの違いについて、どうお考えですか?

ドラマ版は映画と比べると予算も少なく、撮影日数も限られていて、映画でやったことはもう出来ないという前提がありました。しかし、映画をやっていなかったら、やっぱり爆破のシーンも撮りたいし、この題材なんだから自衛隊も少しは出さなきゃとか、いろんな欲が出たと思うんですが、途中から「本編でやらなかったことはこれだ」っていうのがかなり明解に見えてきましたね。登場人物も限られていて、場所もほとんど家と職場しかないんですが、「何か本当に恐ろしいことが確実に起こっている」という表現に特化した作品にすればいい、という方向で様々なアイデアが浮かんできました。いやぁ、スピンオフってやってみるもんなんだなって(笑)。

――東出昌大さんは、映画版とドラマ版の両方に出演されていますが。

映画を撮っているときから「東出さんがこれだけというのはいかにも勿体ない」と何となく思ってはいたのですが、『予兆』の脚本が仕上がって、改めてこの役は東出さん以外は考えられなくなってしまいました。それとまあ、両方出ているのは彼だけなので「いろんなことを妄想してくれる観客が出てきたら面白いな」っていう、下心なんかもあったりして(笑)。

――東出さんは最近出演されたドラマ『あなたのことはそれほど』での怪演も話題になりました。

ちょうどこの作品と撮影時期がほぼ重なっていたんですが、恐らくこちらの方が少し早かったはず。世間ではあちらの方が先に放送されたので、「あ、またこんな役!」って言われるのは、ちょっと複雑なんです(笑)。

――東出さんがこれほど濃いキャラクターになると監督はあらかじめ想定されていたんでしょうか?

ご本人はもちろんノーマルな方なんですけど(笑)、パッと見、ものすごく背が高いし、普通じゃない人を演じさせたら、本当にこんなにハマる人はいないと思います。『寄生獣』の東出さんがすごく良かったから、今回も上手くいったら絶対ハマるとは思っていたんですけど、まさかここまでのクオリティでやってくれるとは! 我ながら、最高のキャスティングだと思っています。

――第1話の岸井ゆきのさんの取り乱し方もすさまじかったですね。

あのシーンは前半の要なんです。「岸井さん、このドラマのツカミはあなたの怖がり方にかかっていますから!」って、何度も言いました。いやぁ、本当に上手い俳優でした。「怖がりながらも、後ろにある電球を揺らしてください」っていうと、「わかりました」って何度も練習して。岸井さんの怖がり方で、「間違いなく恐ろしいことが起こっている」っていう感じがちゃんと出せたので、本当に助かりました。

  • <<
  • <

1/2

インデックス

目次
(1) 東出昌大の怪演――うちが先のはず(笑)
(2) 夏帆さんだけは正気のままでいてほしかった

人気記事

一覧

イチオシ記事

新着記事