【レポート】

データ全盛の時代にあえてこだわる“リアルな声”の重要性

1 地域特性に根ざしたプロダクトリサーチをグローバルの資産にする

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生活用品大手のP&Gは発表会を開催し、ジェルボール型洗濯洗剤の新製品「アリエール ジェルボール3D」「ボールド ジェルボール3D」を発表した。P&Gのジェルボール型洗濯洗剤は2001年に英国で最初に発売されたのを皮切りに世界各国で展開しているグローバル製品だが、日本市場に合わせてどのようなプロダクトリサーチが行われ、日本市場に最適化された製品が生み出されているのだろうか。P&Gの研究開発本部でファブリックケア製品のプロダクトリサーチを担当する大武秀稔氏にお話を伺った。

P&G研究開発本部でファブリックケア製品のプロダクトリサーチを担当する大武秀稔氏

このほど発表されたジェルボール3Dは、P&G日本法人の研究開発チームが中心となり、約8年の歳月を掛けて開発したという。これまで販売されていた単層構造のジェルボールに代わり、日本向けに独自開発されたミクソロジーフィルムによって3層立体構造のジェルボール型洗剤を開発。従来の液体洗剤では配合できなかった成分を配合することに成功した。これまでの液体洗剤では有効成分が持っている効果の相殺が起きるために配合できなかった組み合わせを、ジェルボール3Dでは洗濯機で洗う瞬間に有効成分を混ぜ合わせることで実現したのだそうだ。これをP&Gでは「液体洗剤の鮮度」と表現し、大規模なブランド・マーケティングを展開していくとしている。

なお、大武氏が所属する日本の研究開発チームは、主に日本市場におけるプロダクトリサーチを担当し、日本国内の消費者のニーズを理解して商品開発に還元する役割を担うのだという。洗剤製品の処方はベルギーの研究開発チームが中心に行い、パッケージデザインなどはシンガポールの研究開発チームが行う。日本向けの製品とはいえ、その開発はグローバル規模で行われ、大武氏によると日本のプロダクトリサーチから見えた消費者ニーズに対して海外のチームから理想的な製品についての意見が提案されるなどして、製品開発が行われるのだそうだ。いわば、日本の研究開発チームは日本の消費者の声を代弁する役割を果たし、世界各国のチームとの架け橋になっているのだ。

こうしたグローバル規模での製品開発に対する姿勢は、今回のジェルボール3Dについても明確にあらわれている。大武氏によると、欧米ではすでに展開している3層構造のジェルボールについて日本独自の製品開発が必要だった背景について、日本独自の消費環境があるのだと説明する。

「お湯を使ってゆっくり洗濯する海外と異なり、日本の消費者は冷たい水を使い短い時間で洗濯をする。日本と欧米では洗濯環境が大きく異なるため、(海外の製品では)フィルムが溶けず、製品が十分に機能しなかった」(大武氏)

グローバルでは通用する製品が日本の消費環境には適合しない。こうした状況において、グローバル企業のなかには「なぜこの国の消費者だけこんなに違うのか」「なぜこの地域のためだけにしなければならないのか」と考えてしまうのかもしれない。しかしP&Gは、この“日本と海外の違い”をあえて活かした製品開発を目指したのだという。

この点について、大武氏は「日本の過酷な消費環境でも認められる製品を実現できれば、他の地域に展開したときにもっと大きな成功になるのではないか。ならば、もっと日本市場向けの商品開発に投資をして、高機能の製品を開発しよう。これがP&Gの開発姿勢だった」と語る。P&Gは世界各国のプロダクトリサーチの知見が蓄積され製品開発に活かされる。このダイバーシティ(多様性)を活かして、日本市場に向けた商品開発を将来的なグローバルのアセットにしようと考えたのだ。

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インデックス

目次
(1) 地域特性に根ざしたプロダクトリサーチをグローバルの資産にする
(2) ビッグデータだけでは、厳しい市場競争には勝てない


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