今回Appleは「iPhone 8」と「iPhone 8 Plus」、そして「one more thing...」で「iPhone X」を発表した。
iPhone 8シリーズは、新しいiPhoneのラインナップにおいてメインストリームのモデルと言える。改善・強化を重ねてきたiPhoneをさらに磨き上げた完成度の高いモデルである。
ガラスの背面パネルとアルミニウムのフレームで構成された新デザイン、iPad Proで培った技術を導入したRetina HDディスプレイなど、強化点のリストは長い。それらの中で、キーノートでは新プロセッサの「A11 Bionic」とカメラ機能の説明に時間を割いた。
A11は、iPhone 7シリーズのA10よりも高速かつ効率的に動作する。新しい世代のプロセッサで、そうした進化は順当なものだが、A11ではこれまでライセンスしていたGPUも独自開発になった。近年GPUはデータベース処理など、グラフィックス以外の演算処理にも利用されており、CPU同様に独自開発でプラットフォームに最適化させる価値が高まっている。機械学習もGPUが効果を発揮できる用途であり、A11は機械学習向けのニューラルエンジンを備える。他にもISP (Image Signal Processor)とビデオエンコーダーも独自開発である。
これまでもチップレベルからハードウエアやソフトウエアとの統合的な開発を行えることが、ライバルに対するiPhoneの強みになっていたが、それがA11で明らかな違いになった。その効果がユーザーに最も伝わるのが写真やビデオである。スペックを比べただけではメインカメラが12メガピクセル、前面カメラが7メガピクセルとiPhone 7シリーズと目立った違いはない。ところが、実際の撮影では新しいISPとセンサーによって高速に動作し、十分な明るさがない場所での撮影にもより強くなった。
特にiPhone 8 PlusではポートレートモードでA11の強みが発揮される。「ポートレートライティング(ベータ)」というポートレートモードの新機能を利用できる。フレーム内の深度マップを作り、被写体の顔を認識して、リアルタイムの解析を繰り返しながら、照明機材を使ったような照明エフェクトをポートレートに加えられるフィルター機能だ。
ビデオ撮影機能は、最大60fpsの4K撮影を実現。フルHDで240fpsのスーパースロー撮影を行える。フレームを200万タイルに分割し、リアルタイムのイメージおよびモーションの解析を行って、細部まで鮮明な映像を記録する。「スマートフォンで最高品質のビデオキャプチャを実現」とアピールしていた。
そしてカメラの第3の活用法として、Appleが新たに取り組み始めたのが拡張現実 (AR)だ。ARKitは既存のiPhoneもサポートするが、カメラがAR向けにもキャリブレートされ、A11の高精度なモーショントラッキング、ARを視野にデザインされた新しいジャイロや加速度センサーを利用できるiPhone 8シリーズでは、より快適にARアプリを楽しめる。