現代の龍はモノレール?

さて、西鎌倉駅の次は片瀬山駅に到着する。この駅の付近は、モノレールが地上と同じ高さを走る珍しい区間だ。片瀬山の次の目白山下駅で、下車してみよう。目白山下駅のホームからは、相模湾が遥かに見渡せる。

駅を出たら、後を振り返るようにして、モノレールに沿って細道を上っていこう。この先の小高い山の頂上付近一帯は、「片瀬山公園」として整備されている。

この片瀬山、または目白山と呼ばれる山は、もともとは竜口山といい、この山こそが、力尽きた五頭龍が山に姿を変えたという、伝説の山なのだ。今となっては住宅の造成等で寸断されてしまったものの、かつては、この片瀬山から深沢方面に続く丘陵が、横たわる龍に見えたことから五頭龍伝説が生まれたのだろう。しかし、今はむしろ、空を駆け抜けるモノレールこそが、"現代に蘇った龍"に見えるのは、筆者だけだろうか。

片瀬山の見学を終えたなら、モノレールに乗って、終点の湘南江の島駅を目指そう。目白山下駅を出ると、間もなくトンネルに入り、トンネルを出るとすぐに、吸い込まれるように湘南江の島駅のホームに到着する。

湘南江の島駅エスカレータ・エレベータ棟内観イメージ(画像提供: 湘南モノレール)

湘南江の島駅は、現在、バリアフリー化のため、エレベーター、エスカレーターを設置する新棟の増築工事を行っており、新エレベーター棟の供用開始は、2018年4月1日を予定している。新棟の内観イメージを見れば、ずいぶんきれいな駅になるのだなと思う。

江の島は2020年東京五輪のセーリング競技の会場に予定されているなど、今後、江の島を訪れる人が増加することが見込まれるので、駅をリニューアルする意味は大きい。

散歩のシメは牛鋤焼と自家製お蕎麦で

さて、散歩のシメにおいしいものを食べに行こう。モノレールで大船まで戻り、向かったのは、「ルミネ ウィング」のレストラン街にある「らい亭(らいは「木雷」で1字)北院」という店だ。

同店は、鎌倉山にある蕎麦・会席料理の老舗「らい亭」の支店で、店名は、大船が鎌倉の北の玄関口に位置することから名付けたという。以前は老舗ということもあり、年配のお客さんが多かったが、食事メニューやお酒の種類を増やすなどした結果、様々な年齢層のお客さんが増えたという。

「北院膳」(税別1,900円)もまた、9月11日より蕎麦が大盛り無料に

今回注文したのは、黒毛和牛の「牛鋤焼(ぎゅうすきやき)」を中心に、自家製蕎麦、茶碗蒸し、香の物などがついた「北院膳」(税別1,900円)。これからの、秋の行楽にピッタリなメニューだ。ちなみに、9月11日より、北院では全てのメニューで、これまでは有料だった蕎麦の大盛を無料にするサービスを開始するという。

「伊勢志摩サミットにも出された三重県伊賀の純米酒「半蔵」や宮崎県の焼酎「マヤンの呟き」など珍しいお酒もそろっている

なお、北院では毎月プレミアムフライデーに合わせて、「プレミアムフらいてー」というプレミアムなフライや天ぷらが食べられる企画を実施している。9月はなんと松茸の天ぷらが食べられるということで、こちらも楽しみだ。

湘南モノレールをモチーフにした絵本の刊行を記念する列車の出発式にて。一番右が尾渡社長

さて、湘南モノレールの沿線散歩、いかがだっただろうか。湘南モノレールは、これまでどちらかというと沿線住民の通勤・通学の足と認知され、観光路線のイメージは薄かった。しかし近年、同じく江の島観光の足である江ノ電の混雑が激しいことが地域の社会問題にもなっていることなどから、観光路線としても注目されはじめていることもあり、様々なイベントの開催や、特別なヘッドマークを付けた列車の運行など、PRに力を入れている。

尾渡社長は、「湘南モノレールの全国的な知名度はまだまだだが、今後、広く存在を知ってもらい、観光客の皆さまに、江ノ電とモノレール、2つとも乗れたらいいよねと言っていただけるような存在に、早くなりたい」と意気込みを語る。

筆者プロフィール: 森川 孝郎(もりかわ たかお)

旅行コラムニスト、オールアバウト公式国内旅行ガイド。大磯町観光協会理事。鎌倉ペンクラブ会員。京都・奈良・鎌倉など歴史ある街を中心に取材・撮影を行い、「楽しいだけではなく上質な旅の情報」をメディアにて発信。観光庁が中心となって行っている外国人旅行者の訪日促進活動「ビジット・ジャパン・キャンペーン」の公式サイトにも寄稿している。鎌倉の観光情報は、自身で運営する「鎌倉紀行」で更新。