東芝のフラッシュメモリ事業である「東芝メモリ」の売却交渉が大詰めを迎えている。その背景を整理しつつ、いま東芝とフラッシュメモリ業界で何が起きているのか、今後の状況を占っていこう。

買収交渉に望む企業連合

現在、東芝を巡って繰り広げられている一連の騒動は、「東芝メモリ」の売却先について、後に日米間連合と呼ばれる米BainCapitalを中心としたコンソーシアム、iPhone製造などで知られる台湾Hon Hai Precision Industry (鴻海精密工業)、東芝とパートナーを組んでフラッシュメモリ開発や製造を続けてきた米SanDiskを買収した米Western Digital (WD)の3つの交渉先との間での決着を巡って繰り広げられているものだ。

東芝メモリは業績悪化に伴う事業売却を目的に2017年初頭に設立された半導体子会社だ

もともと東芝メモリ売却の発端となったのは、同社が米Westinghouse買収に絡む原発事業における巨額損失に起因する。2017年3月期の連結決算で5400億円超の債務超過が確定し、倒産回避のために2018年3月のリミットまでに資金を確保する必要があった。

売却資金を基に債務超過を解消するというシナリオが順当とも考えられるが、実際にはいくつかのオプションがあり、完全売却以外に東芝メモリへの外部資本参画なども手段となる。最終的には東芝本体の事業継続に必要なつなぎ融資枠を銀行団に承諾してもらえれば倒産は回避できるため、東芝メモリの売却というのはその手段の1つというわけだ。

売却交渉の成立から資金を確保するというタイミングを最終リミットから逆算し、東芝が内部的に設定していた交渉期限が8月31日だった。しかし、交渉が難航していることを受けて結論は9月に持ち越されることになった。本稿を執筆している9月8日時点で、この最終決定は9月13日が見込まれている。

東芝メモリ売却の話が具体化した4月以降、さまざまな企業が交渉に手を挙げている。代表的なものでいえば、日本からは産業革新機構や日本政策投資銀行といった政府系機関、投資ファンドの米BainCapital、米KKR、同業者の韓国SK Hynix、台湾Hon Hai、米Broadcomと米Silver Lake Partners連合といった具合だ。

このほか、Hon Haiのグループにはシャープやソフトバンク、Appleといった企業の名前も見られ、BainCapitalと組んだSK Hynixと合わせて、おおよそ3-4グループによる争奪戦の様相を見せるようになった。