地球に住む人類の数はすでに70億人を突破したといわれているが、その多くが都市部に集中しており、今後も都市部への流入は世界的な傾向として続き、2050年における都市部の人口は現在に比べ倍増する、といった予測があるほどである。そうした人口の都市部への集中により、さまざまな問題が生じることが危惧されている。

例えば、人口の増加に反して進む各種インフラの老朽化。道路や交通といった側面のみならず、水資源の確保や、電力エネルギーの安定供給といった部分まで考慮する必要があるほか、地球規模で進んでいる気候変動にも考慮する必要がでてくる。しかし、その一方で、政府や地方自治体などが使用可能な予算には限りがあり、こうした問題の解決に向け、持続可能な都市システムをIoTを活用して構築するスマートシティに注目が集まっている。

「2025年には、IoTは年間1.7兆ドルの経済価値をスマートシティにより創出されることが予測されている。また、そのうちの4割が、電気や上下水道といった各種のシステム同士が連携することで、生み出される新たな価値によるものとなる」とPTC Market & Solutionsグループ,ディビジョナル・バイス・プレジデント兼ゼネラルマネージャのレズリー・ポールソン氏はスマートシティがもたらす将来性を語る。

そんなスマートシティだが、大きく4つのシステムに分けることができるという。1つ目は「発電&グリッド」で、何らかのエネルギーを生み出して管理するためのソリューション。2つ目は「上下水道」で、上水道の品質であったり、給水インフラ、リサイクルを含めた下水処理などのためのソリューション。3つ目が「ビルマネジメント(ビル管理)」で、都市部で消費される電力の半数以上が消費されていると言われているビルのエネルギーコントロールソリューション。そして4つ目が、駐車場やごみ収集、交通インフラなどを含む「市民サービス&インフラ」で、PTCもこのカテゴリの価値が高まっていくことを期待しているとする。

都市の基盤となる4つのシステム

では具体的にはスマートシティ化により、どんなことが実現できるようになるのかというと、例えば街路灯1つとっても、従来は道路に設置されている街路灯は個別の存在であったが、近年は、センサを組み合わせることで、状況に応じた最適な照明環境を実現できるようになってきた。さらに近い将来になると、ネットワークに接続され、データセンターで一元管理することで、どこの街路灯のランプが切れているといったことが把握可能になるほか、各種センサを活用することで、さまざまな情報を得ることも可能となり、時間帯別の交通量の把握や大気汚染状況の把握と、まったく異なるインフラデータとの間からの相関関係などの発見といったことにつながることも期待できるようになる。「ただの街路灯が、都市全体のマネジメントにつながるソリューションへと進化する可能性がでてくる」(同)という。

こうしたスマートシティの実現に向けて、どのように取り組んでいくべきなのか。PTCでは、将来を見据えた形で、スモールスタートをしていくことを1つの提案形態としている。「将来、複合的なシステムが登場することを見据えた取り組みが必要」とのことで、そこに同社が提供するThingWorxプラットフォームが活用できるとする。「プラットフォームがあることで、これまで別々に管理されてきた各種インフラの情報を1つにまとめた形でアクセスすることが可能となるほか、将来的にはARやVR技術を活用したメンテナンス作業などを行うための基盤としての役割も担えるようになる」とThingWorxの役割を説明。すでにスマートシティやインフラ関連でのThingWorxの導入はさまざまな国や地域で進んでおり、日本でも太陽光発電システムの産業用・遠隔監視サービスに活用されるなど実績があるとする。

スマートシティの実現には、複数のシステムを接続するだけではなく、管理の容易化などのために一元化できるようになる必要がある。ただし、そのためのアプローチ手法は決まっているわけではなく、さまざまな方法が考えられ、ThingWorxでは、どういった方法にも対応が可能だという

なお、PTCでは、ThingWorxを中心に据える形で、さまざまなパートナーと連携を進めており、今後もそうしたパートナーとの連携を強め、高い柔軟性や機敏性といった特徴を武器にスマートシティソリューションの進化を促進していきたいとしている。

スマートシティの実現に向けて、さまざまな領域を得意とするソリューションプロバイダーたちとパートナーシップを締結しており、そうしたパートナーが提供するソリューションの下地としてThingWorxが活用されることとなる