三叉神経痛の治療法の一つに薬物療法がある

洗顔や食事など、日常生活のふとしたシーンに電撃が走ったかのような痛みに襲われる病気・三叉(さんさ)神経痛。その原因の多くは、蛇行した血管が神経を圧迫していることによるものだ。耐え難いほどの痛みが一日に数十回も襲ってくることがあるだけに、可及的速やかに治療にあたったほうがよいが、具体的にどのような治療を行うのだろうか。

本稿では、高島平中央総合病院脳神経外科部長の福島崇夫医師の解説をもとに、三叉神経痛の治療法について紹介する。

治療法は大きく3種類

顔面の感覚を司る三叉神経に痛みが出る三叉神経痛は「洗顔」「咀嚼」「歯磨き」「化粧」などの動作が引き金となり痛みが出現する。痛みが続く時間は、数十秒~数分程度と人によって異なる。10万人あたりの患者数は4~5人と言われており、特に40~50代の中高年で患者が多い。

三叉神経痛が疑われる場合は、痛みの症状や病気の経過などを踏まえつつ、MRIによる画像検査で最終的な診断を下すことになる。

「一言に『血管が神経を圧迫する』と言っても、無数の血管があります。どれが神経痛の責任血管なのかを見極めることは、外科的な治療戦略を立てる際に非常に重要です。それを判断するにはMRIが適しています」

治療法は大きく分けて3種類あるという。それぞれの特徴は以下の通り。

薬物療法

三叉神経痛は内服薬がよく効く病気の一つ。最も効果が現れやすいのは抗てんかん薬で、中でも「カルバマゼピン」や「フェニトイン」などがよいと言われている。

「てんかんと同じく、異常な神経伝導を抑えることが作用機序です。60~70%は効き目がありますが、永続的ではありません。だんだん効果が鈍くなるという問題もありますし、ふらつきや眠気などの薬の副作用にも注意を払う必要があります」と福島医師は話す。

外科的治療

一般的な三叉神経痛(特発性三叉神経痛)であれば、発病の原因は血管による神経の圧迫にある。そこで「微小血管減圧術」と呼ばれる手術を用い、血管圧迫を取り除く治療法もある。神経を圧迫している血管を神経から剥がし、場所を移動することで神経の圧迫を解除する仕組みだ。移動させた血管が再び元の場所に戻ると痛みがぶり返すため、血管テープで動脈を巻き硬膜に縫いつけるなどして再発を防ぐ。8~9割の症例はこの手術で痛みが消失するうえ、侵襲も少ないので体力のない高齢者でも受けやすいというメリットもある。

定位放射線治療

さまざまな方向から放射線を照射し、周辺の正常脳への被爆を避けつつ脳深部の特定の場所に高線量の放射線を当てる治療を指し、ガンマナイフなどが該当する。ガンマナイフによる治療では、血管に触れている三叉神経の微小な部分にガンマ線を照射して痛みの感覚を和らげる。ガンマナイフを使用した手術は2015年に保険診療が適用され、今後症例数が増えていく可能性がある。

「外科的治療と比べ開頭する必要がないため、患者さんへの負担は圧倒的に少なく、治療成績も良好です。一方で放射線治療ですので被爆への留意や開頭手術による外科的治療と比べて即効性がないため、すぐに痛みは取れず月単位で経過を見ていく必要があります。基礎疾患があり体力低下などの理由で外科的治療を受けることが難しい患者さんには良い適応だと考えます」