ASUSから2017年2月に発売されたシングルボード・コンピュータ「Tinker Board」は、先行する"あいつ"より速いだけでなく、アクセサリを流用できるということで話題になった。

これまで開発者・技術者・DIY愛好者のものだったシングル・ボードコンピュータだが、このところ盛り上がりを見せ、より身近な存在となりうる可能性を持っている。そんな中現れたTinker Boardのは期待の製品の1つだ。日本向けに発売開始された初期ロットをいち早く入手、その実力を検証してみた。

シングルボード・コンピュータを取り巻く状況

Tinker Boardの内容へ入る前に、現在の「シングルボード・コンピュータ」を取り巻く状況についてまとめておこう。なぜなら、Tinker Boardは後発であり、明確に"ある製品"を意識したデザインだからだ。

ASUSが日本向けにも提供を開始するシングルボード・コンピュータ「Tinker Board」

欧米での発売は2017年2月と先行しているが、当初から技適は取得済だった

シングルボード・コンピュータには多様なプラットフォームがあり、一括りにできないほど多くの用途やターゲット層が存在するのだが、大まかにいうと「マイコン系」と「PC系」に区分できる。

前者は2005年登場のArduinoが代表格で"小ささ"を重視し、処理内容も"軽い"ものがターゲットという傾向がある。後者はより"重い"処理をもこなす性能を備え、そのぶん"大きさ"が許容されるが、組み込み用途も前提とされるため名刺サイズが一般的。2012年発売のRaspberry Piが代表格といえるだろう。

シングルボード・コンピュータの分野で大きな存在感を示す「Raspberry Pi」

出荷台数というビジネス目線で見ても、Raspberry Piは強い。欧州のTech系媒体「BetaNews」に掲載されたEben Upton氏(Raspberry Pi財団創設者)のインタビュー記事によれば、2017年7月時点でシリーズ累計の出荷台数は1,400~1,500万台にもおよぶという。2015年2月で累計500万台、2016年9月で累計1,000万台という数字とあわせれば、勢いは止むどころか加速していることが分かる。

Raspberry Piの強みは、名刺サイズの筐体に旧型スマートフォン級の処理能力で単価が5千円前後という"ほどほど感"にあるが、アフターマーケットの充実を見逃してはならない。前述したArduinoは形状のバリエーションが十数種類あるが、Raspberry Piは基本的に一種類(「Zero」と「Compute Module」を除く)。特に「2」と「3」は端子の位置や形状まで完全に一致し、仕様が公開されている。アクセサリ類を製造しやすく、しかも採算をとりやすいのだ。

Raspberry Piはケースや拡張カードなどアフターマーケットが充実しており、オーディオなどホビー用途に活用するユーザも多い

Raspberry Pi用アクセサリは種類も豊富で、本体ケースに専用タッチスクリーン、カメラモジュールにGPSモジュール、汎用入出力ポート(GPIO)に接続するタイプの拡張ボード……などなど膨大な数がある。そのアフターマーケットを存分に活用できるのであれば、後発であっても世に受け入れられやすいことは確かだろう。