地震国“日本”……東海地震や首都直下型地震の可能性が常に取りざたされている。巨大地震が発生した際には、人命救助や食料援助、水道・電気の復旧などが急がれるが、こうした任務に就く緊急車両の通行ルートを確保することが重要になる。

首都高速道路(以下、首都高)は、9月1日の“防災の日”に先立ち、「緊急対応訓練」をメディアに公開した。場所は中央環状線大井北換気所の敷地内で、強い日差しが降り注ぐなか、数多くの職員とメディアが集まった。

この日の訓練の目的は「軽量素材を用いた迅速な道路啓開作業の習熟・検討」というもの。“道路啓開(けいかい)”とは聞き慣れない言葉だが、首都高の説明によると「災害時に緊急車両の通行のため、放置車両等の移動、応急復旧工事(簡易な段差補修等)により救援ルートを切り啓くこと」らしい。

首都高は、首都直下型地震の際、「東名」「中央」「関越」「東北」「常磐」「京葉」「アクアライン」「横羽」の8方向からの救援ルートを想定。重大な被災により車両通行が不可能な箇所を避け、軽微な被災で済んだ道路を組み合わせて救援ルートを設定する。その際に、各高速道路を結ぶ東京外環や中央環状などの役割が重要になってくる。

先頭の乗用車はフレームから切れているが、計5台の車両が用意されていた

訓練の様子をみてみよう。首都高の訓練といえば、3月にも開通前の路線を利用したトンネル火災消火訓練を見学させていただいたが、警察・消防・首都高が参加、実際の事故車を使った規模に驚いたことがある。それを経験していたので、「今回もきっと実車を使った大規模なものだろう」と予想していた。現場に到着してみると、案の定、乗用車3台、大型トラック1台、大型バス1台という規模の被災現場がつくられていた。

マグニチュード7.3の地震発生を想定

さて、状況はこうだ。「都心南部直下地震発生、マグニチュード7.3、首都高管内最大震度6、一部震度7」というもの。この地震により、首都高の複数箇所で高架橋の支承(橋桁を支える部分)がはずれ、橋梁の繋ぎ目に30cmの路面段差および50cmの開きが発生。この路面段差に一般車両が乗り上げ立ち往生、後続車両も滞留し通行できないという想定だ。すでに滞留車のドライバーおよびバスの乗客は降車し、避難階段から脱出したという想定だ。

この現場に、パトロールカーが到着。パトロール隊はクルマから折りたたみ自転車を降ろし、現場の状況確認のため急行。路面段差に乗り上げた乗用車を確認すると、その状況を無線連絡する。50cmの開きが生じているが、自転車ならば手前で降りそれをまたぐことが可能だ。

パトロールカーが到着(左)。折りたたみ自転車で路面段差や開きの間近まで行き、状況を確認(右)