デジタル世代の子どもたちに教えたいこと

Q.最後に、本に掲載されている中からオススメの勉強方法を3つ教えてください。

【ショー・アンド・テル】
海外のキンダーガーデン(幼稚園)や日本のインターナショナルスクールでは、毎日のように取り入れられているアクティビティです。

やり方は、1人の子どもがクラスのみんなの前で、自分がみんなに見せたい物、それについて聞いて欲しい物を持っていき、それについて話すというものです。コミュニケーション力やプレゼン力を鍛えることができます。

ご家庭では、週末に家族全員が集まって、1人ずつ1週間の出来事を発表するようにしてみるといいと思います。

【アプリ「ピッケのつくるえほん」】
プログラミングを始めるならば、「スクラッチ・ジュニア」がオススメですが、とても有名なので知っている方も多いと思います。ですので、私からは自分だけの絵本がつくれるアプリを紹介したいと思います。デジタルえほんアワードを受賞したアプリでもあります。キャラクターを配置していくだけで場面を作成していくことができ、文字が入力できない小さい子どもは音声でお話を吹き込んでいくことができます。

絵本の中でストーリーを振り返っても良いし、印刷してはさみで切ってつくれば自分だけの本を作成することもできます。つくった本を読んでもらってショーアンドテルにつなげても良いですし、文字入力をしながら、ひらがなのお勉強につなげることもできるかも。お話をつくりながら、いろいろな創造力を育めると思います。

【親子一緒にさまざまな経験をする】
3つ挙げるならば、最後は親としての"心構え"を挙げたいと思います。

私が日記をつけていると、子どもも日記をつけると言い出しますし、私が嫌いな食べ物は、子どもが嫌いになることも多いです。つまり、良い意味でも悪い意味でも"親のフィルターを通した世界しか知らないのが低年齢児"だと思います。それを踏まえると、私は親の役割は、子どもに様々な体験をさせてあげられる環境づくりではないかと思っています。

料理ひとつをとっても、子どもが親から受ける影響は大きい

例えば、家庭での料理を振り返ってみると、自分が苦手な食材を使った料理はなかなか食卓に出てこないのではないでしょうか? 6歳までの子どもたちは特に、親の整えた環境の中で過ごしています。親の選んだおもちゃで遊び、親が連れて行きたいと思った場所に連れて行ってもらう。

そのような、どこへ行って、何に触れて、何を食べて、どんな体験・経験をするか、を少し意識するだけで、子どもの教育になるだけでなく、親にとってもより子育てを楽しめる刺激になると思います。

ここまでお話させていただいたことは、計算や読み書きと違って、すぐ身につくものではありません。でも、私たちの世代とは違って、アナログとデジタルが自然に共存する環境で育った今の子どもたちは、私たちにはない独自の感性を持っているはずです。親は、そんな彼らが自由に発想を育めるような環境づくりを心がけるようにしたいですね。

※画像はイメージ

筆者プロフィール: 五十嵐 悠紀(いがらし ゆき)

1982年生まれ。お茶の水女子大学理学部情報科学科卒業、東京大学大学院情報理工学系研究科コンピュータ科学専攻修士課程修了、東京大学大学院工学系研究科先端学際工学専攻博士課程修了。博士(工学)。日本学術振興会特別研究員PD・RPD(筑波大学システム情報系)を経て、現在は明治大学総合数理学部先端メディアサイエンス学科専任講師。JSTさきがけ研究員、情報処理推進機構(IPA)未踏事業プロジェクトマネージャも務める一方、子どもを対象とするITを使ったワークショップの講師を務めるなど、アウトリーチ活動にも力を入れている。専門はコンピュータグラフィックスおよびユーザインタフェース。素人が自ら創造し楽しむことができるためのCG技術を研究している。2男1女の母。共著に『Computer Graphics Gems JPシリーズ』(株式会社ボーンデジタル)、藤代裕之編著『ソーシャルメディア論』(青弓社)がある。

AI世代のデジタル教育 6歳までにきたえておきたい能力55
(1,300円・税別/河出書房新社)


工学博士ママの著者が、プログラミングってどう教えればいいの? 論理的思考力はどう育てればいいの? といった、これからの世代の子どもたちに必要な能力の伸ばし方を解説。コミュニケーション力、立ち直る力、集中力、語学力……など、さまざまな能力の伸ばし方が家庭教育をベースにわかりやすくまとめられている。