仮想マシン(VM)上のWindowsをTouch Barで操作するなど、最新の機能を盛り込んだ「Parallels Desktop 13 for Mac」。今バージョンの強化ポイントや新機能に関して、米Parallels社のアジア・太平洋地域 ジェネラルマネージャーのケビン・グリーリー氏と同社のシニア・プロダクトマネージャーであるカート・シュマッカー氏、そして日本のパラレルス株式会社の代表取締役 下村慶一氏にお話を伺った。

左から米Parallels社 シニア・プロダクトマネージャー カート・シュマッカー氏 米Parallels社 アジア・太平洋地域 ジェネラルマネージャー ケビン・グリーリー氏 パラレルス株式会社 代表取締役 下村慶一氏

--まずTouch Barについて。macOSでもTouch Barの活用が十分にできていない状況下にあって、とてもいい実装だと思いますが、どのような苦労がありましたか?

シュマッカー ありがとうございます。Touch Barは現在、MacBook Proにしか実装されていませんが、もしかすると今後の彼らの製品、例えばiMac Proなどにも導入されるのではないかという噂を聞いていました。なぜ実装するに至ったかといえば、やはり非常に革新性の高いハードウェアのフィーチャーであり、その革新性をWindowsにももたらしたいと考えたわけです。おそらくAppleの方々も驚いていると思います。まさか美しいTouch BarがWindowsアプリに対応するようなことは誰も想像していなかったと思います。

WindowsのアプリをTouch Bar上でサポートするために、非常に複雑な課題に取り組むことになりました。Appleが推奨している方法というのがあって、私たちはそれを参照しながら、WindowsのアプリケーションをいかにTouch Bar上で機能するようにし、カスタマイズするかということに取り組みました。

そしてTouch Barのサポートは数年前に私たちがリリースした、Windowsアプリに対するMacのジェスチャーのサポートに非常に似ていると考えています。ジェスチャーへの対応ではWindowsのショートカットを介してジェスチャーが使えるようにしたわけですが、Touch Barに関しても同じように実現できると考えたわけです。

新機能「Touch Bar ウィザード」を使って機能が割り当てられていないWindowsアプリでもTouch Barが使えるようになる

Touch Barの対応に関しては、さらにアイデアを練っている段階で、もしかすると将来新たな機能を実装することになるかもしれません。それに向けてまずはユーザーからの反応を見ていきたいと思っています。ユーザーさんに気に入っていただけるのかどうか。今日できないけれどできればいいのに、という機能がTouch Bar上であるのかどうか。ユーザーにとってそもそもこの機能は重要なのかどうか。そういったことを見極めながら、もし人気が高まるようであれば、ぜひフィーチャーも増やしていきたいと思っています。

--ある意味、Windowsよりも使いやすいWindowsがTouch Barを使うことによってできるということが非常に印象的です

シュマッカー そう言っていただけると光栄です。何年も前にRetinaディスプレイのサポートをし始めたときに、MacBook Pro上でParallels Desktopを動かして、Windows 8をそこで起動することが最も画面としても綺麗に見せることができる方法だとおっしゃってくださった方がいらっしゃいました。そのときもとても嬉しかったです。

--ただ、Touch Barが付いていないモデルにはアピール力が弱まると思うんですが、Touch Bar以外の訴求点は何になるでしょう?

シュマッカー まず今年の秋、9月か10月にリリース予定のWindows 10の新しい更新における「Windows 10 People Bar」は今後、人気が高まり、広く普及するだろうと考えていますが、これをMacで使えるようにするというのが今回の一つのポイントであり、今後、WindowsのフィーチャーをMacに持ってくるという先例となると思います。

そして、ドライブの容量が小さいユーザー、例えば256GBとか128GBといったマシンを使っている人に対してはSSDのサポート強化があります。ファイル転送速度が二倍に増えていますので、仮想マシンを外付けドライブ上で動かすことが可能になります。

もう一つ、多くのユーザーに喜んでいただけるポイントとしては、Parallels ToolboxがParallels Desktopに同梱されるようになるということ。Toolbox 1.0では20のツールが含まれていましたが、2.0では32のツールに増えました。異なる機能、異なるツールに対してそれぞれ個別にユーティリティを購入することなく、一つのツールボックスで全てに対応できるため、ユーザーからは非常に良い反応が返ってきています。

Windows 10の秋のアップデートで実装されるPeople Barに対応。Windows 10では3つしかタスクバーに登録できないが、Parallelsで使えば制限なく登録が可能だ

Mac用の単機能ツールが同梱されるParallels Toolbox。1.0から12の機能が追加され、さら便利になった

--Parallels Desktop 12のときに発表された「Parallels Access」への言及がありませんでしたが、どうなりましたか?

シュマッカー もちろん、まだ使っています。Parallels Accessもインストール可能でバンドル化されています。もちろん13でも入っています。今回のプレス発表でのプレゼンテーションでは新しい機能のみをお話しすることが求められていたので、古い機能については言及しませんでしたが、今も同じように13でも使えますし13の中にバンドルされています。

--企業向けのソリューションとして伸びているということですが、コンシューマー向けの訴求点はあるんでしょうか。

シュマッカー 私たちの原点に立ち返りますと、やはりコンシューマーや新しいユーザーさん向けの訴求点はやはり変わらず、再起動なしにMac上でWindowsを走らせる(実行することができる)という点です。2つ目は、新しいユーザーであっても全く困難な操作や複雑さがなく、非常に簡単に、Mac上にWindowsをインストールできるということ。これを1クリックでインストールできるということです。

新規のユーザーを対象に調査を行ったのですが、その結果、彼らが直面している問題、課題が2つ見つかりました。

まずひとつはWindowsをどうインストールしていいかわからないということでした。それを私たちは1クリックのインストール(Parallels Desktopに何もVMがインストールされていない場合、ワンクリックでMicrosoftから直接Windows OSをダウンロードしてインストールできる)という方法で解決しました。

ふたつ目はユーザーから「Parallels Desktopのトライアル版(14日間無償で試用できる)はあったとしてもWindowsは買わなくてはいけない」という声がありました。それで私たちはMicrosoftと協力して、Parallels Desktop上でWindowsに関しても試すことができるという仕組みを今回提供しました。Mac上でParallelsを使うことによってWindowsを走らせているというユーザーは、弊社にとってもMicrosoftにとってもお客様です。共通のお客様であるがゆえに、私たちは協力していかにしてユーザー・エクスペリエンスを改善できるかということを考えました。

下村 また弊社はVMソフトウェアでは唯一のパッケージの流通ベンダーですので、Webだけでなくお店に行っても情報や製品をチェックすることができます。加えて日本語化に関してはマニュアルもホームページも十分に対応しています。例えばお店に他のアプリを使っている方がいらした場合には、「Parallels使ってはいかがでしょうか」という乗り換え版(SKU)も用意しているので、コンシューマー、エンドユーザーにとっても購入しやすい環境を提供しています。

--次期 Parallels Desktop 14につけたい機能はありませんか

シュマッカー 開発チームはすでに次のバージョンの開発に取り組んでいますが、フィーチャーに関しては、まだここでお話することはできません。

グリーリー とはいえ、私たちは常に新しいOS、それがAppleのものであれ、Microsoftのものであれ、もしくはどのLinuxのディストリビューションであったとしても、最新のOSに対応していくことは保証します。そして常に新しいOSの中で出てくるフィーチャーなどに関しては、それに対応する最初の会社でありたく、ユーザーが求めるフィーチャーを実装する最初の会社でありたいと考えています。

シュマッカー そして常にMicrosoft、そしてAppleと密に連携をとって開発を進めています。OSの中で新たなフィーチャーが出て来たときには、それをいち早くParallels Desktopにも実装したいと努力しています。例えばPeople Barに関しては、まだMicrosoftからもリリースされていないものにも関わらず、私たちはすでに対応しています。AppleのWWDCにも常に参加をし、macOSでどういった新たな機能があるのか、常に新しい情報にアンテナを張り、それをいち早くParallels Desktopに実装するということを心がけています。