楽天は23日、楽天モバイルの新たな料金プラン「スーパーホーダイ」の提供を9月1日より開始することを発表した。高速データ通信の容量を使い切った後も最大速度1Mbpsのデータ通信を容量制限なく使用できることが特徴。同日行われた発表会の模様をレポートする。

同日行われた発表会では、同社副社長執行役員 通信&メディアカンパニー プレジデント 平井康文氏、同社執行役員 同カンパニー楽天モバイル事業担当役員 大尾嘉宏人氏が登壇し、楽天モバイルの戦略とプランの詳細が語られた。

楽天副社長執行役員 通信&メディアカンパニー プレジデント 平井康文氏

同社執行役員 通信&メディアカンパニー 楽天モバイル事業担当役員 大尾嘉宏人氏

通信&メディアカンパニー成長の方向性は「サンドイッチ戦略」

楽天はこの7月、スペインのサッカー一部リーグFCバルセロナのメイングローバルパートナーとなり、これを機に楽天グローバルブランドの統合を実施。コーポレートロゴやサービスロゴが刷新され、国内外約11億人のユーザー層を核にした「楽天エコシステム」の構築・拡大を図っていくことが発表された。

そんな中で、楽天モバイルを含む同社の通信&メディアカンパニーが掲げるのが「サンドイッチ戦略」だ。戦略の中では「今後ともコンテンツがキングであることは間違いない」とした上で、重要なのはそれをアグリゲーションしていくための統合されたサービスプラットフォーム、そして実際にユーザーが体験するためのエンドデバイスであると平井氏は述べた。

コンテンツプラットフォームとエンドデバイスで挟み込む、「サンドイッチ戦略」

楽天モバイルユーザーに占める楽天会員の割合は90%以上に達するという。また、楽天モバイル契約後は利用するグループサービスの平均利用数が2.3から2.7へ拡大、さらにキャンペーンの実施によって楽天市場での購入額が1.8倍、ダイヤモンド会員転換率が6.6倍と、楽天モバイルがグループにとってのロイヤルカスタマー獲得に貢献していることがうかがえる。

「これからの通信&メディアカンパニーにの文脈において、楽天モバイルが主語になる、そのほかのサービスをアタッチして価値を高めていく、というのが大きな方向性。これからも、楽天モバイルは楽天グループの事業の中核であることは間違いない」(平井氏)

楽天モバイルに加入したユーザーは利用する関連サービスが増え、楽天市場での購入額・ダイヤモンド会員への転換率も増大と、グループへも貢献

低速時でも実用に耐える最大通信速度1Mbpsを提供

続いて登壇した大尾嘉氏は、「スーパーホーダイ」プランの詳細について述べた。最も大きな特徴は、プランに含まれる通信容量を使い切った後の通信速度制限下(いわゆる低速時)においても、最大1Mbpsの通信速度を提供するということだ。ただし、通信が混み合う時間帯(12:00~13:00、18:00~19:00)は最大300kbpsとなる。

低速時でも最大1Mbpsで使い放題、国内通話5分かけ放題が特徴の「スーパーホーダイ」

「62%の人がデータ通信速度制限の経験がある。結果として、65%の方が、データ通信を気にしてスマホを使っている。データ容量を気にせずスマホを利用してほしいという思いから、新しい料金プランを作った」(大尾嘉氏)

1Mbpsという速度は、Webブラウジングや動画再生も実用的なレベルだという

スーパーホーダイは、高速通信容量2GBのプランS、同6GBのプランM、同14GBのプランLの3タイプ。いずれも国内通話が5分間かけ放題だ。なお、楽天会員なら1年目の料金が1,000円引き、楽天ダイヤモンド会員ならさらに500円が割引となる。

高速通信容量が異なる3タイプを提供。いずれも国内通話5分間を何度でも無料で利用できる

また、最低利用期間(2年または3年)に応じた端末割引または楽天スーパーポイントがプレゼントされる「長期優待ボーナス」も併せて提供。これはSIMのみ購入の場合でもポイント付与の形で適用される。なお、契約の自動更新は行われず、ユーザーが契約期間を選べる仕組みになっている。

端末価格から、2年契約で1万円、3年契約で2万円を割引。2万円以下の端末の場合は差額がポイントで付与される

大尾嘉氏はこのプランをカフェの看板に例えて他社と比較。一見同じ料金に見えても実際には様々な適用条件や制限がある他社に対し、スーパーホーダイのわかりやすさと低速時の優位性を強調した。

割引に難しい条件がある場合や、低速時の速度制限をケーキブッフェに例えて説明。スーパーホーダイは「ケーキは小さめだが誰でも食べ放題」と説明

楽天モバイルは格安スマホを目指さない

モバイル業界全体で低価格化の流れがある中、今回の新プランは突出した安さを前面に出すものではなかった。これについて平井氏は、「(低価格化は)業界全体としてはいい方向。ただ、その中で独自路線を貫いていきたい」と、戦略にこだわる姿勢を見せた。

「楽天モバイルはいわゆる格安スマホを目指しているのではなく、MVNOとして新しい立ち位置の訴求をしていく。通信&メディアカンパニーのサービス全体をご利用いただくために、(価格よりも)むしろ付加価値に注力していくことが最大のメリットではないかと判断をした」(平井氏)

一方で収益化については「現在も投資モード」(平井氏)としながら、収益拡大のために重視する点を2つ挙げた。ひとつは、母集団の拡大によるネットワークプロバイダおよび端末パートナーに対する調達力のメリット。もう一つは、冒頭のサンドイッチ戦略に連なる顧客のライフタイムバリューだ。

「ライフタイムバリューで考えた時、どれだけのARPを獲得できるか、親和性のあるシームレスなサービスをどれだけ追加で提供できるかが鍵になる。繰り返しになるが、コンテンツをできるだけアグリゲーションしてパッケージソリューションのような形で提供していきたい」(平井氏)

店舗数も拡大中。店舗での申し込みは全体の約半分を占めるという

事業のスタートから間もなく3年を迎える楽天モバイル。調査によると大手キャリア利用者の月額平均支払額は7,150円。これに対して楽天モバイルは2,870円と月々4,290円安く、年間では51,480円の節約になる計算だ。

年間51,480円、4人家族なら年間約20万円を節約する計算に

同社代表取締役会長兼社長の三木谷浩史氏がサービス開始時に「通信料金を節約することで、それを買い物や旅行に回していただく。その結果日本の経済を活性化していきたい」と語ったことに対し、「少なからず貢献しているのではないかと自負しています」と平井氏は述べた。