映画監督に、出演役者の印象を伺っていく「監督は語る」シリーズ。今回とりあげるのは、『関ヶ原』(8月26日公開)主演の岡田准一(36)だ。アイドルグループ・V6のメンバーとして、1995年にシングル「MUSIC FOR THE PEOPLE」でCDデビュー。その後『木更津キャッツアイ』(02)、『SP 警視庁警備部警護課第四係』(07)など、ヒットドラマで活躍、2014年には、NHK大河ドラマ『軍師官兵衛』にて主演・黒田官兵衛を演じた。

映画界での活躍も目覚ましく、2015年には第38回日本アカデミー賞で男優として史上初の快挙となる、最優秀主演男優賞(『永遠の0』)、最優秀助演男優賞(『蜩ノ記』)のW受賞を果たす。最新作となる映画『関ヶ原』では、天下分け目の戦いに挑む武将・石田三成を演じる。

■原田眞人
1949年、静岡県沼津市出身。黒澤明、ハワード・ホークスといった巨匠を師と仰ぐ。1979年、『さらば映画の友よ』で監督デビュー。『KAMIKAZE TAXI』(95)は、フランス・ヴァレンシエンヌ冒険映画祭で准グランプリ及び監督賞を受賞。社会派エンタテイメントの『金融腐蝕列島〔呪縛〕』(99)、『クライマーズ・ハイ』(08)から、モントリオール世界映画祭で審査員特別グランプリ受賞の『わが母の記』(12)や、モンテカルロTV映画祭で最優秀監督賞を受賞した『初秋』(11)などの家族ドラマ、第39回日本アカデミー賞優秀監督賞、優秀脚本賞などを獲得した『日本のいちばん長い日』(15)など幅広く活躍。最新作は『検察側の罪人』(18)。

岡田准一の印象

プロの中のプロですね。現場にいるとものすごく明るくて、愚痴も言わないし、熱心だし。映画の現場というのは闇を船で航海していくみたいなところがあって、光を照らしてくれる灯台が必要なんだけど、その灯台にあたる存在です。明るさが才能と結びついてる、完璧なスターですよね。

またアスリートとしても素晴らしいし、司馬遼太郎作品も読み込んでいるし、岡田さん以上に、”行動するインテリ”石田三成に合っている役者はいないですから、監督としては楽ですよ、彼がいると(笑)。岡田さんが100人いたら監督がいらないというくらい、稀有な存在です。

僕が最初に彼に感心したのは、ドラマ『木更津キャッツアイ』の時の軽い抜けた芝居でした。昔、本木雅弘さんの軽い芝居や、木村拓哉さんがバラエティ番組の中で寸劇をやった時の軽い芝居で「うまいな」と感心したのですが、岡田さんにも同じ印象を受けました。重厚なところだけ見ると、それしかできない人かもしれないけど、軽い芝居がこれだけチャーミングだったら、カチッとした芝居も絶対いいと思ったんです。僕は野球が好きなんですが、野球選手の1番の褒め言葉は5つの要素に優れた”5ツールプレイヤー“。岡田准一という役者は、5ツールの役者だし、どの世界に行っても成功する人なんですよ。

撮影現場での様子

撮影中にロビーで会った時は「あれ?」という感じで、そこらへんのお兄さんみたいな格好をしているから、最初は驚きました(笑)。一緒にご飯を食べに行く時も、全く自然体なんです。現場にいてもガラッと変わるんじゃなくて、自然体でそのまま三成の衣装をつけていて、そこからじわっとにじみ出てくる感じですね。そういったプロフェッショナリズムや現場での落ち着き、メンタルな部分は役所広司さんとけっこう似ているところがあります。彼は自分が原田作品の中に入って、うまくバランスが取れる芝居なのか、かなり心配していたみたいですが、僕には最初から心配はなかったです。

岡田さんは衣装を着せてもサマになるんですよ。「最初に鎧をつけた時は、ぐっと首がすくむような感じになっちゃうんですよ。鎧だと誰でもそうなるんです。そうならないためにはこういう着方があります」と説明してくれて、もう経験値がすごい。自分から「こうもできます、こうもできます」と、岡田准一株式会社の一流の営業だというように、いろいろな形で見せることができると、紹介してくれるんです。

映画『関ヶ原』でのおすすめシーン

見どころはいっぱいあるけど、現場で見ていてやっぱりすごいなと思ったのは、佐和山城の訓練シーンですよね。撮影2日目で、岡田さんが馬を走らせて手斧を投げていく姿を、車でカメラが後ろから追いかけていくんですけど、その馬上の三成ぶりは印象に残っていますし、驚きました。

これだったら2カ月半の撮影で、合戦シーンの三成も、もっともっと見せなければいけない。もっとアクションを入れなきゃ、と思いました。三成のことを台詞回しや言葉で表現してるシーンは十分入れてあるので、身体能力を出した三成像をもうちょっと足したいなと思ったシーンでした。

(C)2017「関ヶ原」製作委員会