声優・アーティストとして活躍する牧野由依の単独ライブ「Reset&Happiness」が7月15日~16日、東京・AiiA 2.5 Theater Tokyoで開催された。今回は15日の公演をレポートする。

牧野由依

コンサートではなく「ライブ」と銘打った今回のステージ。オープニングではEDM調のサウンドに乗せて、バックダンサーと共にダイナミックなダンスパフォーマンスで新しい牧野由依像を見せた。6月7日にリリースしたばかりの最新シングルのタイトルナンバー「Reset」でライブをスタートすると、ライブアレンジの「夏休みの宿題」「ふわふわ♪」「囁きは"Crescendo"」「What a Beautiful World」と立て続けのパフォーマンスで楽曲をどんどん聴かせていく。目を引くのはギター、ベース、ドラム、キーボードの一般的な構成に、ヴァイオリン、チェロ、そして曲によっては牧野自身が奏でるグランドピアノを加えた生楽器のバンド。暖かくも分厚いサウンドに囲まれてなお、もっとも特別な音を奏でる牧野由依という特異なボーカルがあればこその編成だ。

最初のMCでは「Reset」リリース後の評判や、声優としてアイドル作品のツアーに参加していることにも言及。歌手、ピアニストとしての彼女と別に声優・牧野由依がいるのではなく、声優として役をまとって磨いたダンスや表現を、自身のライブでも生かしていく懐の深さを感じた。様々な活動で頑張っていることを通して牧野由依個人に興味を持った観客もたくさんいるようで、牧野も初日のチケットの好調から急遽2daysが決定した喜びを明かしていた。

MC明けの「シンフォニー」からはガラリと色を変えて、牧野のピアノを軸にした表現の時間に。「たったひとつ」は歌い出しから圧巻のパフォーマンスで幕を開けると、サビのどこまでも伸びる透明な表現力にはただただ聴き惚れるしかない。牧野のコンサートではおなじみのクラシックコーナーで牧野は、ヴァイオリン、チェロと共に「ニューシネマパラダイスメドレー」でピアニストとしての顔を見せた。クラシックコーナーの題材にあえて映画音楽を選ぶのも、ひとつのジャンル、表現にとらわれない牧野らしさを感じた。続く「その先へ」にもヴァイオリン、チェロが参加したのだが、チェロ担当の渡邉雅弦はなんと牧野の高校の同級生だとのこと。ふたりは収録現場で偶然再会したそうだが、高校時代のフォークダンスで渡邉が牧野をからかったエピソードが明かされ、恐縮しきりの渡邉だった。

コンサート色が強いブロックのラストは「未来の瞳を開くとき」。やや面を伏せながら、何かを確かめるように表現を積み重ねていくと、サビでは決然と前を向いて強い意志を眼差しに込める。役者としての表現力を見せながら、後半は「みんなの声を聴かせて!」とララララの大合唱を呼びこんでいった。

ここで「Dance Show Case」と銘打った、ダンサーたちによるきらびやかなダンスタイムに。ここで牧野はダンサブルな衣裳にチェンジするのだが、クラップと電子音、ダンサーたちの動の表現が支配する世界は、牧野由依のステージの色を切り替えるスイッチになっている。リミックスされた「secret melody」で力強く幻想的な英詞を歌い上げ、「Synchronicity」では左手で力強くリズムを取りながらダンサーたちと共に歌い踊る。ダイナミックに舞うような姿、間奏で見せるつややかなニュアンスは、ダンスもまた牧野の表現のひとつとしてしっかりと確立されたことを教えてくれた。「Brand-new Sky」では攻め攻めのギターが鳴く音色も印象的だ。

ささやくようにキュートな歌声にエフェクトをかけて、ハンドアクションに客席を巻きこむ「Zipper」。七色の「Say Hello!」で客席とのコールアンドレスポンスを楽しむと、ビッグバンドっぽい雰囲気あるサウンドに乗せて「ワールドツアー」。ラストは天を指差しながらミドルテンポで力強い「Cluster」と、本当にいくつの引き出しを持っているのかと思ってしまうほど多彩な表現で酔わせるライブだった。

手拍子のアンコールが続く中、ステージサイドのカーテンから牧野がぴょこっと顔を出すと、アンコールステージへ。「今のこの想いはリセットしたくないから、セーブしようかな?」と告げたのは、もちろん自身がテーマソングを担当するTVアニメ『サクラダリセット』の物語になぞらえた言葉だ。歌うのはオープニングナンバーでもある「Reset」。今度は牧野のグランドピアノとチェロだけで組み立てたアコースティックバージョンで、2種の「Reset」を楽しめる趣向だ。より歌声を主役に置いた表現はまさに鳥肌モノ。ラストは『サクラダリセット』第2クールEDテーマ「Colors of Happiness」で壮大に力強く締めくくったのだった。

今回のライブのコンセプトは、「新しいことにチャレンジしながら、今までやってきたことを大事にしながら」という牧野自身の言葉が一番明確に示していたように思う。ピアニスト、アーティストとしての牧野の音の世界。役者としてステージでアイドルを全力で演じてきた経験の先にある躍動するパフォーマンスの世界。めまぐるしく色を変えながらも本質でつながる牧野由依の表現を、座席に座って全身で感じて楽しむコンサート×ライブ。牧野由依の、それも“今の”牧野由依のライブでしか楽しめない極上の体験がそこにあった。

セットリスト

Yui Makino Live「Reset&Happiness」
2017.07.15 AiiA 2.5 Theater Tokyo

-Introduction-
M-01:Reset
M-02:夏休みの宿題
M-03:ふわふわ♪
M-04:囁きは“Crescendo”
M-05:What A Beautiful World
M-06:シンフォニー
M-07:たったひとつ
-クラシックコーナー-ニューシネマパラダイスメドレー
M-08:その先へ
M-09:未来の瞳を開くとき
-Dance Show Case-
M-10:secret melody
M-11:Synchronicity
M-12:Brand-new Sky
M-13:Zipper
M-14:ワールドツアー
M-15:Cluster
EN01:Reset ~Acoustic Version~
EN02:Colors of Happiness