セルラー対応のApple Watchに関する情報を集めてみると、本体のデザインそのものはこれまでのものを踏襲するという。GPS内蔵を果たしたApple Watch Series 2では、その分のバッテリーを担うため、わずかに厚みを増している。

セルラー対応モデルはGPS内蔵モデルと同じか、それより厚みを増す可能性があるだろう。Apple Watchは普段、iPhoneとのペアリングをしている際、Bluetoothでの通信を行っており、これはWi-FiやLTEよりも消費電力が少なく済む。セルラー対応モデルが登場しても、iPhoneが近くにあったりWi-Fi環境下であれば、そちらを優先することでバッテリー消費を抑えることができるため、常時LTE接続を行ってこれまでと同じバッテリー持続時間を実現しようとは考えていないだろう。

また、どのような通信方式を採用するのか、そのコストはどうか、という問題もある。まず、防水機構を維持することを考えれば、SIMカードスロットは搭載せず、内蔵Apple SIM(eSIM)を採用すると考えるのが自然な流れと言える。また、前述のように常時通信をするわけではないので、通信量無制限(Unlimited)プランのようなスマホ向けの料金プランを用意する必要はないだろう。

例えば月額3~5ドル程度のコストで、スマートフォンの契約と紐付いたApple Watch LTEデータ/VoLTEプランのようなものが用意されれば十分だ。iPhoneの契約と紐付いている必要があると感じる理由は、音声通話やSMSの受信環境のためだ。

Apple Watchだけを持ち出しているときには、iPhoneの電話番号にかかってきた電話は、Apple Watchに着信して欲しいし、SMSもApple Watchでも確認したい。

例えばT-Mobileの場合、Wi-Fi Callingという機能があり、認証されたデバイスがインターネットに接続されていれば、iPhoneが近くになくても、その番号着信した音声通話を、紐付けているMacやiPadでも応答できる仕組みがある。これをApple WatchがLTE環境で実現してくれれば十分だ。

9月に実際、セルラーに対応したApple Watchが発表されるかどうかは、現時点で噂レベルでしかないが、これらの問題を解消した上での登場を期待することにしよう。

松村太郎(まつむらたろう)
1980年生まれ・米国カリフォルニア州バークレー在住のジャーナリスト・著者。慶應義塾大学政策・メディア研究科修士課程修了。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)、キャスタリア株式会社取締役研究責任者、ビジネス・ブレークスルー大学講師。近著に「LinkedInスタートブック」(日経BP刊)、「スマートフォン新時代」(NTT出版刊)、「ソーシャルラーニング入門」(日経BP刊)など。ウェブサイトはこちら / Twitter @taromatsumura