親が小さい子どもの耳垢を取ってあげるという家庭も多い。しかし、これも実は危険な行為だと神崎医師は指摘する。

「お母さんがお子さんの耳かきをしているときに耳かき棒が鼓膜に刺さったり、鼓膜を貫通して耳の骨にぶつかったりしてしまい、お子さんが難聴になってしまったという症例もゼロではありません」

どんなに母親が注意していても、子どもが急に動いてしまい事故につながるケースもある。また、子どもが痛がっているのに「耳垢を放置しているのは不潔だから取らなきゃダメ」と、無理に耳垢を取ろうとしたくなるかもしれない。

ただ、子どもが痛がっているということは、何かしら方法が間違っている可能性がある。そんなときは、決して無理強いをしてはいけない。子どもの耳垢も、大人同様に耳鼻科で取り除いてもらうのがベストなようだ。

小さな子どもの耳かきには危険が潜む

オイルはNG? 子どもの耳掃除に注意

水やオイルを使用して耳垢をやわらかくすると、耳垢が取りやすくなるという話を聞いたことはないだろうか。実際のところは、オイルや水を使用すると耳垢がスポンジのように膨張し、耳の穴をふさいでしまう危険性があるそうだ。

「耳の穴が耳垢でふさがってしまうと、耳が聞こえにくくなる可能性がありますし、耳垢も取りにくくなります。乾燥している耳垢であれば自然にポロリと剥がれ落ちるのに、水分を含むことで穴表面の皮膚に耳垢が付着してしまうのです。世の中には、乾いた耳垢ではなく、ねっとりした耳垢が出る体質の人もいらっしゃいますよね。ねっとりした耳垢の方が皮膚に付着しやすいので、溜まりやすいという特徴があります」

医療機関では、耳垢をやわらかくする耳垢水(じこうすい)という薬品を使用して耳垢を取るケースもあるそうだが、耳垢水は一般的には市販されていない。市販のオイルや水を耳かきに使用するのは、オイルの種類を問わず推奨できないとのこと。オイルを直接耳に入れるのはもちろん、指や綿棒にオイルをつけて耳に入れるという方法も好ましくない。そのほか、殺菌加工が施されていない市販の綿棒は先端に菌が付着している可能性があるため、綿棒で耳の穴をかきむしるのも望ましくないとのこと。

では、耳の穴がムズムズして我慢できないかゆみを感じた際は、どのように対処すればいいのだろうか。

「耳の穴の奥まで綿棒や耳かき棒でかきむしらずに、表面をやさしくこするくらいなら大丈夫でしょう。しかし、そもそも耳の穴がかゆいときは、外耳炎など耳垢以外が原因になっている可能性があります。体質によっては、花粉やほこりが付着してかゆみを感じることもあります」

強いかゆみや違和感がある場合は耳かきだけで解消しようとせず、耳鼻科で相談してかゆみ止めの軟膏などを処方してもらうのがいいそうだ。