【レポート】

なぜ『ウルトラセブン』は多くの人の心をつかんだのか - 特撮ライターが50年記念展を作品の魅力とともに解説

2017年に放送開始50年を迎える、円谷プロ製作の特撮テレビシリーズ『ウルトラセブン』の魅力に迫る展示イベント『ウルトラセブン放送開始50年記念 ~モロボシ・ダンの名をかりて~』が、8月16日より横浜高島屋ギャラリー(8階)にて開催されている。

モロボシ・ダンを演じた俳優・森次晃嗣

『ウルトラセブン』とは、『ウルトラQ』『ウルトラマン』(ともに1966年)に続く円谷プロの「空想特撮シリーズ」第3弾。第1話「姿なき挑戦者」冒頭ナレーションで「地球は狙われている……」と語られているように、美しい緑の惑星・地球を狙う幾多の侵略者が宇宙の彼方から次々に飛来してくるという世界観のもと、地球防衛軍極東支部の精鋭チーム「ウルトラ警備隊」と、彼らに力を貸す謎のヒーロー・ウルトラセブンの活躍を描く49本もの物語が作られた。

ウルトラセブンの力強いヒーロー性や、襲い来る悪魔のような宇宙人・怪獣たちのユニークなキャラクター、ウルトラホーク1号に代表される緻密なメカニックの醍醐味、さらには地球を攻撃する侵略者サイドにもやむにやまれぬ事情があったり、侵略目的でない宇宙人が現れたりと、単なる正義VS悪という構図に収まらない深いテーマ性のあるエピソードが続出したこと。これらのさまざまな魅力によって、『ウルトラセブン』は50年を経た現在でも、ウルトラマンシリーズ最高傑作の呼び声が高い名作として語り継がれている。

京都、大阪を経て、ついに関東にやってきた本展示イベントは「モロボシ・ダンの名をかりて」というサブタイトルが示すとおり、ウルトラセブンの地球上での姿、モロボシ・ダン隊員にスポットをあてたものになっている。遠い宇宙の彼方、M78星雲からやってきたウルトラセブンが、美しい地球を恐ろしい侵略者の魔の手から救うため、ウルトラ警備隊の仲間たちと力を合わせて戦った数々のエピソードを想起させる展示物は、子どもから大人まで、ウルトラセブンを愛する幅広いファン層の心に響くに違いない。それではここから、開催初日に行われた内覧会の様子をご覧いただくことにしよう

会場に足を踏み入れると、まず迎えてくれるのがわれらのウルトラセブン。設定では、恒点観測員340号という識別番号を持つウルトラセブンは、軌道図作成のため太陽系第三惑星・地球を訪れたことになっている。そこで彼は、地球が幾多の宇宙人から侵略の脅威にさらされていることを知り、地球防衛のため働くことを決意した。

第17話「地底GO!GO!GO!」では、ウルトラセブンがどうしてモロボシ・ダンという青年の姿になったのか、その秘密が語られた。セブンは、仲間の命を助けるため自分の身を犠牲にしようとしていた青年・薩摩次郎の勇気ある行いに感動し、彼の姿と心をモデルにして地球人の姿へと変身したのだ。やがてモロボシ・ダンは地球防衛軍のピンチを救った功績を認められ、ウルトラ警備隊6人目の隊員として入隊を果たす。ちなみにウルトラセブンとはキリヤマ隊長によって「ウルトラ警備隊に味方する7番目の隊員」という意味を込めて与えられた名前である。

ウルトラセブンが薩摩次郎青年の姿と心をモデルにして変身したモロボシ・ダンは、次郎と同じく20歳前半のはつらつとした青年として描かれている。その上、正義感が強く純粋な性格をしているため、時には子どものようにストレートな感情を表したり、優しさが仇になって大事な変身道具であるウルトラアイを宇宙人の美女に盗まれたりと、人間くさい一面を持ち合わせているのが大きな魅力である。

会場を往くと、ダンの活動拠点であるウルトラ警備隊の各施設――作戦室に入る際の自動ドア、専用車輛ポインターの駐車場、ウルトラホーク1号、2号、3号のミニチュアモデル、そして地球防衛軍極東基地の精密ジオラマなどがお目見え。このゾーンを抜けると、いよいよ地球を脅かした幾多の侵略者たちがうごめくコーナーへと移る。ここでは『ウルトラセブン』テレビシリーズ全49話の中から、侵略目的別にブロックを作り、地球を狙う宇宙人たちがどんな作戦を立てて襲ってきたかを明らかにしている。特に目をひくのは第6話「ダーク・ゾーン」での、ペガッサ星人が潜入したアンヌ隊員のプライベートルーム(ドレッサーの上に置かれた人形がポイント)や、第37話「盗まれたウルトラ・アイ」に登場したマゼラン星人の隠れ家スナック・ノアの一室(母星との通信に使われたジュークボックスも立体化)、第43話「第四惑星の悪夢」に登場したロボット長官の部屋(何もない空間がずっと奥まで続いている、遠近感の錯覚を利用したセット)、そして感動の最終回、第49話「史上最大の侵略(後編)」での最終決戦時の舞台(怪獣パンドンと最後の戦いを繰り広げるセブンの姿を、映像と連動して紹介)といった、傑作エピソードの再現ジオラマだろう。思い出に残る宇宙人、怪獣の勇姿、そして懐かしのストーリーとここで再会できるかもしれない。

『ウルトラセブン』の中でも特に人気の高いエピソードである第8話「狙われた街」の再現ジオラマは、一般入場者の写真撮影がOKな人気スポット。独特の映像感覚で知られる鬼才・実相寺昭雄監督の演出によって生み出された「古ぼけたアパートの一室で、ちゃぶ台をはさみながら対峙するダンとメトロン星人」といった、シュールな場面が大いに話題を集めた。

そもそも『ウルトラセブン』は海外へのセールスを意識して、できるだけ日本的な場所や小道具を目立たせないように、という暗黙のルールが敷かれていたというが、実相寺監督はこれを華麗にスルーし、その結果『セブン』屈指の名シーンを生み出すことになった。クライマックスにおけるウルトラセブンVSメトロン星人の対決シーンを模したジオラマセットは、東宝の『ゴジラ』シリーズや東映の『宇宙刑事ギャバン』(魔空空間)をはじめとする数々の特撮作品で活躍し、最新作『ウルトラマンジード』にも参加している映像美術界のレジェンド・島倉二十六氏が新たに背景画を描き起こし、同じく『ジード』でも活躍しているマーブリング・ファインアーツが『セブン』第8話の映像素材を徹底的に研究した上で、工場地帯付近のアパート群のミニチュアセットを精密再現し、夕焼けをイメージした暗めのライティングも含めて絶妙なるムードをかもしだしている。

さらに開催初日、横浜高島屋でのオープニングを飾るスペシャルゲストとして、モロボシ・ダンを演じた俳優・森次晃嗣が登場。森次は現在、横浜からほど近い鵠沼でカフェテリア「ジョリー・シャポー」を経営しているが、そこにはモロボシ・ダンにひと目会いたいと願う『ウルトラセブン』ファンも多く来店するという。森次は自ら厨房に立ち、人気メニュー「ダンのハヤシライス」を提供するほか、時間が許す限り来店したファンとの交流を大切にしていると話す。

森次はそんなセブンファンからもらった言葉の中で、もっとも心に残ったものは?という問いに対して「本放送から50年、ずーっと僕(ダン)に会いたいと思っていました、っていうファンの言葉が心にずっしり"刺さり"ましたね。それって、本当にすごいことだよね。『ようやく会えました』って、とっくに50歳を越えた大人が、僕を見て涙を流して喜んでくれる。それだけ、多くの人の胸の中にウルトラセブン、モロボシ・ダンの存在が浸透しているんだなって、嬉しく思いました」と答え、本放送だけでなく、再放送やDVD、CS放送、ネット配信などで今なお見られ続けている『ウルトラセブン』という作品の人気の高さ、そして自身が演じたモロボシ・ダンというキャラクターの魅力の大きさについて、改めて感じ入っている様子だった。

撮影当時は20代、50年後の現在では70代となった森次だが、好評開催中『ウルトラマンフェスティバル2017』のライブステージではウルトラセブンとして声の出演を果たすほか、各種イベントなどに精力的に出演しており、ファンを喜ばせている。これについて森次は「今でもファンの前でね、『デュワッ!』なんて叫ぶと喜んでくれる。これからも声が出る限り、叫んでいきたいと思います」と、モロボシ・ダンがウルトラアイを着眼するときのかけ声を披露して、まだまだダンとして元気だというところをアピールしていた。

50年前のミニチュア特撮を思わせるセブンVSメトロンのジオラマを見つめた森次は、当時を思い出して「昔の特撮は、毎回このような精密なセットを作り、壊していくという生撮りの迫力がありました。でも僕が最近の作品(劇場版ウルトラマンオーブ 絆の力、おかりします!)に出たときは、グリーンバックの前で何もないところに向かって想像で芝居をするカットが増えた。そういう時代になってきたのかな」と、フィルムにおける合成に多大な時間と熟練のテクニックが必要だった50年前と、デジタル機器の発達のおかげで合成主体の撮影が比較的多くなった昨今の特撮作品との違いをしみじみと感じていた様子だった。

少年時代に『ウルトラセブン』を観て以来、ウルトラセブンとモロボシ・ダンの熱烈なファンだという横浜高島屋店長・青木和宏氏もウルトラ警備隊のコスチュームを着て、念願のツーショット撮影を行っている。

展示イベント『ウルトラセブン放送開始50年 ~モロボシ・ダンの名をかりて~』は8月16日から28日まで、横浜高島屋ギャラリー(8階)で好評開催中。また、1階の特設会場においては、ウルトラマンシリーズをモチーフにした新感覚のファッションブランド「A MAN of ULTRA」のポップアップショップを29日までの期間限定(期間中無休)でオープンしている。

また1階では記念撮影スポットとして、巨大なアイスラッガー(ウルトラセブンの頭部に備わった必殺武器)と等身大ウルトラセブン像も展示されている。

秋田英夫
主に特撮ヒーロー作品や怪獣映画を扱う雑誌などで執筆。これまで『宇宙刑事大全』『宇宙刑事年代記』『メタルヒーロー最強戦士列伝』『ウルトラマン画報』『大人のウルトラマンシリーズ大図鑑』『ゴジラの常識』『仮面ライダー昭和最強伝説』『日本特撮技術大全』『東映スーパー戦隊大全』『ゴーグルV・ダイナマン・バイオマン大全』『鈴村健一・神谷浩史の仮面ラジレンジャー大百科』をはじめとする書籍・ムック・雑誌などに、関係者インタビューおよび作品研究記事を多数掲載

(C)円谷プロ
(C)A MAN of ULTRA

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