乾癬とはどのような病気?

乾癬になると大小さまざまな皮疹(ひしん)が体にできる

モデルの道端アンジェリカさんが今年5月、自身が皮膚疾患の一種である乾癬(かんせん)を患っていることをSNSを通じて公表した。国内の患者は増えつつあるものの、まだそこまで広く知られた病名ではないため、道端さんの公表や関連報道で乾癬という病気を初めて知った人も少なくないはずだ。

今回は、美容皮膚科が専門の鈴木稚子医師に美白・美肌を目指す女性にとって天敵とも言える疾患・乾癬についてうかがった。

――そもそも、乾癬とはどのような病気なのでしょうか。

乾癬は慢性的な皮膚の病気です。皮疹(ひしん: 皮膚にできる発疹のこと)が体に確認でき、その大きさや形はさまざまです。症状が進むとその数が増え、いくつかの皮疹が一緒になったり、全身におよんだりすることがあります。およそ半数の方にかゆみがみられ、時に強いかゆみを生じる場合もあります。また、爪の変形や関節炎(関節の痛み、腫れ)を伴うこともあります。

――国内外の患者数はどれぐらいなのでしょうか。

欧米では人口の2~3%ほどの患者さんがいるため、珍しい病気ではありません。一方、日本ではかつてはまれな病気でした。ただ、近年は生活習慣の変化やストレスの増加などといったさまざまな要因から、患者さんの数は徐々に増加。今では国内に約40万~50万人の乾癬の患者さんがいます。

――乾癬が発病する原因を教えてください。また、体質的に乾癬になりやすい人はいるのでしょうか。

乾癬は免疫の異常(自己免疫反応)が起きやすい体質の人に「気候」「ケガ」「感染症」「薬剤」「ストレス」「不規則な生活」などからなる外的要因と「糖尿病」「高脂血症」「肥満」などの内的要因が加わって、発症するのではないかと考えられています。

遺伝的な要素による体質は変えられませんが、実際の体質は遺伝プラス生活習慣で決まってきます。乾癬になりやすい体質として、「炎症を起こしやすい」「アレルギー反応が出やすい」「腸内環境が悪玉菌優勢になりやすい」といった条件に該当する方はなりやすいようです。

特に腸内環境に関しては食生活が大きく関係します。昔の日本人にほとんど乾癬患者がおらず、戦後に急増したのは欧米食の影響と言われています。

治療方法は患者によって異なってくる

――皮疹によるかゆみは命には直結しないですが、患部が広がるのはストレスですし見た目の問題もあるため、QOLの低下が懸念されます。治療はどのように行われるのでしょうか。

乾癬の治療方法には「外用療法(塗り薬)」「光線(紫外線)療法」「内服療法(飲み薬)」「注射療法(生物学的製剤による治療)の4種類がありますが、どの治療方法が適しているかは患者さんによって違います。

患者さんの皮疹の範囲や状態、検査データなどから重症度を判定して、各治療方法の長所と短所、副作用、患者さんの悩み・苦痛の程度、患者さんが置かれた状況(仕事の内容、周囲の人との人間関係など)を考慮したうえで、治療方法を選択します。治療方法は単独で用いる場合や、いくつかの方法を組み合わせる場合があります。

一般的に乾癬治療の中心は外用療法で、多くの方は塗り薬から治療を開始します。症状の進行に伴い、光線療法や内服療法を用い、それでも十分な効果が得られない場合は、生物学的製剤による治療を行います。ただ、特にかゆみがひどいときには、かゆみ止めの飲み薬が用いられます。関節炎で痛みがひどいときには、痛み止めの塗り薬や湿布、飲み薬が使われることもあります。

――もしも乾癬になってしまった場合、日常生活を送るうえで気をつけた方がよいことはあるのでしょうか。

皮膚をこすったりかいたり、無理にかさぶたをはがしたりしないように注意して、皮膚への刺激を避けるようにしましょう。食事面では、脂っこいものや糖質の摂りすぎに注意しつつ、野菜を多く食べるように。バランスのよい食事と適度な運動を心がけ、肥満などのメタボリックシンドロームにならないよう注意した方がいいですね。

体調面ではかぜなどの感染症にかからないように手洗いやうがいを心がけ、日ごろから体調管理に気を配る一方で、お酒やタバコも症状の悪化要因ですので、できる限り控えましょう。そして、自分なりのストレス発散法を見つけてできるだけ心をリラックスさせ、 睡眠も十分にとるとよいでしょう。

※写真と本文は関係ありません


取材協力: 鈴木稚子(スズキ・ワカコ)

美容皮膚科。

東京慈恵会医科大学医学部卒業後、同大学皮膚科学教室および国立大蔵病院皮膚科臨床研究部を経て、2017年に六本木スキンクリニックを開院。

医学博士。日本皮膚科学会正会員。日本抗加齢医学会。日本赤十字医療センター登録医日本医師会スポーツ認定医。日本温泉気候物理医学会 温泉療法医。 日本旅行医学会認定医。トータルアンチエイジング研究会副会長。日本アンチエイジング外科。美容再生研究会登録医。

En女医会所属。

En女医会とは
150人以上の女性医師(医科・歯科)が参加している会。さまざまな形でボランティア活動を行うことによって、女性の意識の向上と社会貢献の実現を目指している。会員が持つ医療知識や経験を活かして商品開発を行い、利益の一部を社会貢献に使用。また、健康や美容についてより良い情報を発信し、医療分野での啓発活動を積極的に行う。En女医会HPはこちら。