夫婦やカップルで食べると円満になれると言われる「夫婦善哉(めおとぜんざい)」は、大阪で130年以上愛されている縁起物である。事の始まりは明治16(1883)年。法善寺境内に開店した善哉屋「お福」で、一人前なのに二杯のお椀に分けてつがれた善哉が提供されていたというのだ。
人気を受けて小説のキーアイテムにも
なぜ、2つのお椀に分けて提供しているのかと客が質問したところ、店主である木文字(きもんじ)重兵衛の妻「こと」と娘「かめ」が「おおきに。めおとでんね」と即答。本当は2つに分けた方がたくさん入っているように見えるという目の錯覚を狙ったのだが、これが大ヒットとなり、夫婦善哉の誕生に至ったというわけだ。お得感を売りにした、商人の町・大阪らしい発想ではないか!
さらに、時を経て昭和15(1940)年には、この善哉をキーアイテムに据えた小説『夫婦善哉』が発表されることとなる。作者は大阪府南区出身の文豪・織田作之助だ。織田の出世作ともなった本作の登場により、本家の夫婦善哉も一躍脚光を浴びることに。
また、この頃には「お福」の店名も「夫婦善哉」に変わっていたが、そのわずか4年後、「夫婦善哉」を営業していた「かめ」が戦争により疎開を余儀なくされる。しかしその後、とある料亭の主人が戎橋南詰で同店を復活させたことを皮切りに「夫婦善哉」は幾人かの手に渡り、昭和39(1964)年になってようやく、現在の運営会社が暖簾を引き継ぐこととなったのだ。
夫婦には円満を、おひとりさまには良縁を
もちろん、時代が移り変わろうとも、夫婦円満、恋愛成就を願う多くの人に愛されていることは変わりない。店によるとその他、織田作之助ファンなども多く来店しているという。
また、素材にこだわったやさしい味わいゆえ、夫婦善哉そのもののファンになる人も間違いなく多いはず。「テイクアウト用の『夫婦善哉』の小豆は国内産大納言を100%使用し、店内食用は丹波大納言を100%使用しています。店内食の『夫婦善哉』にトッピングしている白玉団子は、毎日店で手作りしています」と明かしてくれたが、小豆は約8時間かけて釜で炊いた後、さらに約1日寝かせてしっかりした甘みを出しているのもポイントだ。
豊潤な甘みを堪能すれば、口直しについてくる塩昆布もぐっと味わい深く感じられるはず。1杯目と2杯目の間に昆布休憩を挟むもよし、最後の一口として楽しみにとっておくのもまたよしだ。
ちなみに、テイクアウト用を持ち帰った場合、「温めて焼いた餅や白玉を入れてもおいしいですし、夏場なら、冷たくして『冷やし善哉』にしても、氷をかけて『氷善哉』にするのもオススメですよ」とのこと。
もちろん、大阪を訪れる予定があるなら、一度は店内で食べてみるのが粋というもの。「カップルでご来店されるなら円満を祈願し、おひとりでいらっしゃるなら成就を願ってお召し上がりください」というアドバイスに気軽に乗ってみれば、望む未来がいち早く手に入ることもあるかも!
●information
夫婦善哉
住所: 大阪府大阪市中央区難波1-2-10
アクセス: 大阪難波駅から徒歩5分
営業時間: 10:00~22:00
定休日: 無休