【レポート】

ソフトバンクが新卒採用にWatsonを活用する狙いとは?

ソフトバンクは5月29日、新卒採用選考のエントリーシート評価にIBM Watsonを活用すると発表した。この内容や狙いなどについて、7月20日に都内で開催された「SoftBank World 2017」中で同社 人事本部 本部長 長崎 健一氏が「ソフトバンクの人事領域におけるHR Techの取り組み ~採用活動におけるIBM Watsonの活用~」と題した講演を行ったので、レポートする。

講演を行うソフトバンク 人事本部 本部長 長崎 健一氏

同社がWatsonを活用するのは、新卒採用選考のエントリーシート評価。同社では、エントリシートの設問の中に、自己PR文を設けているが、この評価にWatsonを活用しようというものだ。

エントリシートの自己PR文をWatsonで評価

具体的には、IBM WatsonのAPIの1つであるNLC(Natural Language Classifier、自然言語分類)により、項目ごとに評価が行われる。そして、Watsonから合格基準を満たす評価が提示された項目については選考通過とし、不合格者については人事担当者が内容を確認し、合否の最終判断を行う。つまり、不合格にする場合は、かならず人のチェックがはいるということだ。

AIの活用方法。Watsonだけで不合格になるわけではなく、必ず人の判断が入る

同社が新卒採用にWatsonを活用するのには、3つ理由があるという。

1つ目は、IT・AIを活用することにより、効率化と価値創造を行うことを、同社の人事部のテーマとして掲げている点だ。

人事部では、採用面接においてこれまでもデータをデジタル化し、タブレットで閲覧することで、紙の紛失リスクと管理工数を8割削減したほか、研修資料をデジタル化することで、最大90%の紙資料を削減する取り組みを行っている。また、2014年からは社員のストレスチェックもデータ化し、システムを外販している。Watsonの利用は、こういったIT・AIの活用を推進している中で生まれたものだ。

タブレット面接

研修資料のデジタル化

2つ目の理由は採用担当者の業務負荷が高かった点。ESの提出は2~3月に集中するが、この時期は、採用担当が大学を訪問して大学教授等に会ったり、会社説明会を開催する時期と重なり多忙で、採用担当の負荷を軽減する必要に迫られていた。

ESの提出時期と採用活動が重複

自己PR文は、200文字以上執筆することが条件になっているが、平均すると600文字程度になり、これを慣れた採用担当が読み込む場合でも、一人あたり3分程度かかる。これを1日50-60件読むとなると、集中力を持続することも大変だったという。

3つ目は評価ブレの解消だ。エントリーシートの判定は、6~10人の担当者が分担して行っていたが、目線のブレが発生する可能性があったという。

同社は、Watsonを利用するあたり、Watsonに判断基準を学習させるため、過去のESを読み込ませた。

当初はすべての過去ESを読み込ませたが、思ったような結果が出てこなかったという。そこで、同社は3カ月かけてトライ&エラーを繰り返し、典型的なものを読み込ませることで判定精度を高めた。最初は優秀、普通、不合格の3段階の判定を試したがうまくいかず、合格、不合格の2段階判定にしたところ、理想的な仕組みに到達したという、

NLCの検証

Watson活用の実際の効果は、これまでは680時間ほどかかっていたESの判定が、AIの判定を取り入れた結果、170時間になり、75%の時間の削減に成功したという。また、統一された評価軸でよる公平な選考が可能になった。

Watson活用の効果

同社ではこれまで、未来の人事業務をテーマに掲げた未来探索室を2016年に組織。さらに今年、アイデアを実現するために役員直下に若い社員を中心に16名からなる未来実現推進室を作った。全員兼務となるが、リアルな将来像の作成、情報収集&配信、各種のトライアルの推進を行っている。

今年度は採用スクーリング、人材マッチ(適材適所)、メンタルヘルス、客観的な評価、問い合わせ対応の自動化(社員からの人事・総務に関する問い合わせ)、法務対応自動化(契約書のチェック)の6つに注力しているという。

IT・AI活用の注力テーマ

これらを行うにあたっては、「まずやってみる」を合言葉にしているという。

最後に長崎氏はこれからの時代に求められる人事について、「これまでは人事は労務管理のプロフェッショナルであったが、今後は未来を見据え、経営改革の基点となる戦略人事が求められている」と語った。

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