スプリント、強気の事業統合へ

各事業の業績の中で特に強調されたのはスプリントの伸びだ。売上高は前年同期比で2%増だが営業利益は3倍。過去3年間で初めての黒字となった。さらにネットワークの改善も大きく前進しているという。

グループの中でも国内通信事業に次ぐ営業利益を上げたスプリント

「行けるぞという時だからこそ、次のステージとして事業統合を積極的に考えている。業績が反転し、やっていく自信ができた状況であれば、より良い条件で事業統合できる。非常に喜ばしいこと」(孫氏)

しかし、経営統合先については「複数の相手先を想定して交渉を行っている」「近い将来」としただけで、具体的なコメントは避けた。

ARMについては、売上高は「がめつく取りに行ってない」ために2%増に留まるものの、チップの出荷数では前年同期比28%増。こちらも現在は投資を先行させており、エンジニアの人数は25%増加。新CPUコアも発表されるなど、成長を確実視している。

工場を持たないARMにとっての一番の投資は「人」

「血の繋がり」があるSVF、群戦略の実現

SVFについては具体的な業績に触れることなく、先月開催されたイベント「SoftBank World 2017」の基調講演でも述べたように「多くの起業家たちを集め、情報革命を起こして行く」という同ファンドのコンセプトを改めて説明した。

「我々は情報革命を起こしたい。一人の人間では革命はできない。だから多くの起業家たちを集めて起業家集団とし、力を結集して情報革命を起こしていく」(孫氏)

革命を起こすための「群戦略」を繰り返し語る

その集団は上意下達のピラミッド型ではなく、それぞれが自由性を持って意思決定ができる「Webに近い形」だという。

「従来の財閥のように、グループ会社を自分たちの色に染め上げるのとは違う。むしろブランドは自由でいた方がいい。また、シリコンバレーにある1社丸ごと買収し一つの事業部門として吸収するやり方でもない。ベンチャーキャピタルのように株式を持って、上場したら売り抜けるという短期的取引でもない。」(孫氏)

SVFが出資する企業を紹介。血液検査の分析に人工知能を用いる「GUARDANT」、運転中の車内外をモニタリングする「NAUTO」、人工知能を活用してオーガニック野菜を栽培する「Plenty」、施設内清掃車の自動運転を実用化している「brain」など

子会社としてマネージするわけではないが、多くのケースでは20~40%近い株式を持つことで、筆頭株主またはそれに近い立場として、経営に影響を与えるレベルでグループを構築するのがSVFのやり方だ。

「資本を持っている、いわば血の繋がりがあるというのは大きい。もっと重要なのは、情報革命というビジョンを共有している起業家集団であること。"同志的結合"というソフトバンク独自の組織論、独自の体系で起業家集団を結集しようとしている。これが私の思い描いた"群戦略"そのものの形だ」(孫氏)

50カ年計画、自己評価は「28点」

孫氏は説明会冒頭で、自身が今週60歳の誕生日を迎えることに触れ、19歳で志したという「人生50カ年計画」について語った。

「20代で名乗りを上げる、30代で軍資金を貯める、40代でひと勝負する、50代でビジネスモデルを作り上げる。60代で継承する。ソフトバンク創業から一貫して、この思いは変わっていない」(孫氏)

50代を終えるにあたり、SVF構築によって「少なくとも(あるべき組織体系の)"構え"ができてきたのではないか」と評価した。一方で、質疑応答で記者から60歳を目前に控えての自己採点を問われると、その回答は「28点」と3割に欠く数字だった。

自己評価は28点と辛口のようだが

「後悔することだらけだし、自分の不甲斐なさに地団駄踏む思い。ただ、まだ人生が終わったわけではない。特に、ソフトバンクの組織体としての生命は、少なくとも300年伸び続けてほしいという思いで作っている。300年の中の30年、まだ1合目だ。やり残したことは多いが、先は明るい。楽しみだ」

これからまだまだ攻めていく、と締めくくった言葉には、28点に対する後悔よりも伸び代を見る視点があった。